第101話「秀頼と千代」
稀代の慧眼を持つ
そして、昌幸は又兵衛に本心を打ち明けた。
「…この戦、勝っても負けても我ら真田の人間には肩身の狭いものとなろう」
「そりゃあどういうことだ?おっさんの事だから
「総大将が
「普通、そこまで深読みするかねえ…ま、そう読んだあんたはそうなった時のために孫を俺様の庇護下に置いてくれってことだな?」
「そうだ。たった一人だけでいい」
「ま、別にガキの一人二人構わねえが…俺様の立場はわかってんだろうな?」
「無論、お主が身を置く黒田家は親徳川派というのは知っておる。お主と黒田の跡継ぎとの確執もな」
「…そこまで知ってんなら俺様がいつ牢人になってもおかしくねえってわかってんだろ?あんたはそんな男に大事な孫を預けて安心出来んのか?牢人になりゃあまともな生活なんざ期待出来ねえぞ?」
「ふっ、その言葉をわしに云うお主だからこそ信用出来る。この通り頼む」
昌幸は胡座の
その場には又兵衛と
それからすぐに
「
「自決だと?侍の頂点に立った家に生まれた奴が責任を投げ出して死のうってのか?とんだ甘ちゃんだな。その出会った女ってのもふざけたことを吹き込みやがる嫌な女だ」
「ふっ、早合点するでない。時が来たらと云ったであろう?」
「はっ!その時ってのはいつだ?そもそも来ねえんじゃねえのか?
「………
「……大層なこった。だが、その器を持った奴が現れる前に
「それをさせぬために我らがおるのではないか?それともお主は徳川の天下を受け入れられるのか?いや、黒田の跡継ぎに
「そりゃあ無理だな。
又兵衛は納得した様に頷きながら呟いた。
その女…秀頼が出会った女とは、
秀頼は父である
それは以下の通りである
『人は
この千代の言葉は、実の母である
秀頼はこの時、生まれて初めて人として会話をしてくれる人に出会った気がした。
この時、秀頼はまだ数えで六歳であった。
多感な子供は大人の
千代の言葉が秀頼に宿命を受け入れる覚悟をさせたのだった。秀頼の
「父上、
不意に襖の外から信繁の声が聞こえ、昌幸がその声に返事をして入室を促すと、早雪を連れた信繁が入ってきた。
信繁と対面した又兵衛は一目で信繁を気に入り、信繁もまた同じ様に一目で又兵衛を気に入った。
戦人同士が邂逅した瞬間だった。
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