第64話「真意」
「
村人を追い回す手下達を全て、殺すか行動不能にして慶一郎の元へ駆け付けた
そして、喜助は放心状態で
(私は何故こんなに強い怒りを抱いている…似た様な
慶一郎は大男を甚振る
自分自身が行っているその行為の
自問自答することで自らの
「あの…」
慶一郎が大男を痛め付けている最中、不意に少女が喜助に声をかけた。
「…それ、貸してくれませんか?」
「あ?それって…これか?」
少女はまるで
「はい。
「扱うって、お前………
喜助は少女が行おうとしている事をすぐに理解した。それを理解した上で喜助は少女に訊き返していた。
「…はい。どうか、お貸しください」
「……そうか。だってよ、
「……ええ、構いません。では
慶一郎がそう云うと、少女は返事をしながら大男と慶一郎から剃らしていた
「…ひっ!!」
向き直った瞬間、少女は慶一郎の前に転がる大男の変わり果てた姿に、悲鳴にも似た小さな声を漏らして喜助に手渡された鉈を足元に落とした。
少女が暮らしていた村を襲い、村人達を殺し、少女を犯した大男は、既に両腕の肘から先と両脚の膝から下を切断され、その切断面と身体中に負った
「……どうしました?ああ、この男にしていたことを見ていなかったのですか?見ての通り、既にかなりの重傷ですがまだ息はあります。さあ、どうぞ。この状態ならあなたでも殺せますよ。それともまだ続けますか?この様に…」
「ぎゅひいいいいいいい!!!」
「ひいいいいっ!!!」
慶一郎は大男の右耳を刀の先端で突き、突いた刀の先端を回転させて
新たに加えられたその痛みに悶える大男は口から
苦痛に歪む大男の姿に恐怖したのか少女はその場から逃げ出した。
「あっ、おい!待て…」
「
少女を追おうとする喜助を慶一郎が制止した。
慶一郎は少女がその場から逃げた理由がわかっていた。わかっていたからこそ慶一郎は喜助を制止した。
少女がその場から逃げた理由、それは自らの手で殺そうとした大男の変わり果てた姿に恐怖を感じたからではなかった。
少女は大男に対してそれ程の行為を行いながらも表情一つ変えず、まるで何事も起きていないかの様に一滴の返り血も身に浴びていない慶一郎に恐怖したのだった。
「
「…恐らくその心配はありません。あの子が走っていったのは私達が来た方向です。向こうには辛うじて助けることが出来た村人達がいます。それにあの子はこの男の姿を見ています。苦痛に
「お前そこまで……けど、本当にそれで良いのかよ。お前はそれで満足なのか?本当はこんな事したかねえんだろ?お前はあの嬢ちゃんのためにこんな事をやったんだろ?あの嬢ちゃんにとって復讐相手であるこの男のこんな姿を見せる事で、お前はあの嬢ちゃんの復讐心を少しでも減らして気持ちを他へ向けようとしたんだろ?だからお前はやりたくもねえのにこんな事をし…」
「それは違いますよ、
慶一郎は自身の背中に語りかけている喜助の言葉を遮り、喜助の方へ向き直った。
そして、悲しいとも苦しいともつかぬ表情で喜助を見て言った。
「いえ、違っていなければならない。…確かに半分はあの子のためです。いえ、あの子だけでなく、あの男に傷つけられた全ての人々が受けた痛みとその想いのために私はこれをしました。けど、それは半分であり一部です。…結局、これは私自身がこの男を許せなかったために私の意思で行った
慶一郎が大男を
『誰かのためにそれをしたとしても、実行したのは自分自身であり、それは他の誰かではない』
慶一郎は自分自身でそれを行うという選択をしたことを受け入れ、自身の決断でそれを行った事実を認めた。
さらに、慶一郎は自身が何故それ程までにやり場のない怒りを抱いたのか、それを自覚した。
『
それは、慶一郎がどんなに
慶一郎は
今までその行為をした相手と会い、それを殺したことはあっても、自分自身でそれを目の当たりにしたのは初めてだった。
聞くのではなく、目の前で行われたその行為を見た瞬間、慶一郎は怒りを抑えられなくなり、その怒りが慶一郎に大男を
それは
「ちっ!お前って野郎は…なんでもかんでも一人で背負おうしやがって……仲間なんだからよ。俺にも少しは背負わせろ。退け、こいつの止めは俺が刺す」
そう云いながら喜助は弓を取り出し、
その時、辺りに大きな声が轟いた。
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