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「でも、マレーゼがどうしてもっていうなら、考えなくも……ううん、でもウィルフ辺りはめちゃくちゃ嫌がりそうだな……。特級冒険者だからめちゃくちゃ稼ぎはあるし、それにあの見た目だし……余計に変なこと言う奴が増えるかも……。イナリもイナリで、変にプライド高いしな……」


 ぶつぶつと困ったように、言うフィジャ。四人とは恋愛結婚じゃないし、自分のお小遣いは自分で稼ぐ、くらいのつもりで言ったのだが、相当に悩ませてしまっているらしい。


「な、なんかごめんね? 自分のお小遣い稼ぎくらいのつもりで言ったんだけど……」


「イエリオにキミの国について話したら、いっぱいお金くれると思うよ」


「それは俗に言う……援助交際では?」

 なんだかとても嫌な響きである。強制的に結婚してお小遣いをせびるのも嫌だが、それはそれで嫌だ。

 なにかいい案はないかな、と思っていたら、フィジャが、あっ、と声をあげた。


「何か案、思いついた?」


 やはり言うのを悩んでいるようである。とはいえ、先ほどのような困った表情ではなく、照れくさいとか、そういった感じの雰囲気だ。どんな仕事をさせる気なんだろうか。

 少しして、フィジャはようやく口を開く。


「その……よかったらさ、ボクのお店の手伝いしない?」


「フィジャの……」


「そう、ボクのお店。自営業なら奥さんに手伝ってもらってもそうおかしくはないし。本当は家にいてくれるのが一番だけど、よそで働かれるよりはよっぽどいいかな」


 フィジャのお店。それはわたしにとってもかなり好都合なんじゃないだろうか。フィジャはわたしの正体が人間で、この国どころかこの時代に生きるものですらないことも知っている。困ったことがあればすぐに聞けるだろう。

 うん、かなりの好条件だ。


「フィジャのお店、手伝いたい。お願いしてもいいかな?」


「う、うん! こちらこそ、よろしくね!」


 ぱあ、と明るい表情を見せるフィジャ。

 ……と。


 ぐううぅ。


「――!」


 お腹のなる音。そして、その音が響いたかと思うと、フィジャはにわかに慌てだした。

 そういえば、起きてすぐっぽかったよね。じゃあ朝ごはんも食べてないだろうし、なっちゃっても仕方ない。


「フィジャ、ちょっと早いけどお昼ご飯にしよ?」


「……うん。作ってくる」


 そう言ってキッチンに向かうフィジャの後を追う。


「わたしも手伝うよ。一緒に作ってもいい?」


「……うん!」


 ぱあ、とフィジャは満点の笑顔を見せる。ううん、やっぱり顔がいいな。

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