section 02 パーティ結成
第1話 エルリアの街
シルヴィと共に草原地帯を駆ける。大森林と合わせて二日経過した頃、物語の世界でしか見た事の無い様な石煉瓦の塀で囲まれた門が見えてきた。そこでは村と同じ様に門番が立っており、検問をしながら街を守っている様子だった。
とりあえずマーレーも検問待ちの列の近くまでシルヴィと共に近づき、地上に降りて手綱を引きながら最後尾に並んだ。
心地よい草原の風と門の先から聞こえる喧騒。森の中ではそうそう味わえなかった空気に胸を弾ませながら順番を待つ事30分。自分の前の人が中に入ったのを見てマーレーも一歩前に出た。
「??????…??????????」
「っ…交易語…か。」
困惑した表情で首を傾げてみる。すると門番達も困った様子で話し合い、ジェスチャーで少し待ってくれと伝えながら片方が街中へ走っていった。とりあえず横にそれて待機しながら後方の人々を先に通しつつ対応を待っていると、中から汗だくになりながら荒い息を吐いている先程の門番と、同じく息は軽く切らしているものの汗一つかいていないエルフらしき女性が現れた。
「…もしや貴方は秘境から来られた純血のエルフでは?」
「秘境と呼ぶのかは知りませんが…大森林から来た純血のエルフですね。」
マーレーの言葉に目を輝かせたエルフの女性は、隣で門番に咳払いをされて表情を改めた。
「え、ええと。それで。森のエルフがこの街になんの様でしょうか。」
「冒険者になる事を許されたので冒険をしに来ました。こちらが里長からの許可証です。」
「げげげ、現役では最高齢のエルフ族の一人からの許可証… 一応鑑定させていただきますが…紛う事なき本物ですね!」
こちらからすると偽物を出し様が無いので少し癪に触る確認だが、とりあえず認められた様子だったのでホッとする。だがそれ以上にエルフ女性からの好奇の目が気になり過ぎてマーレーは困惑していた。
「森のエルフ…我々の様な混血からすると生涯で一度会えれば御の字なんですよ。ほぁぁ…。」
「しょ、生涯と言っても自分達人間よりも長生きされるので普通に会えるのでは…?」
その門番の一人の問いかけにエルフ女性の目がギラリと光る。そして息を大きく吸い込み…
「何をおっしゃってるんですか!!私達ハーフエルフの寿命は250年しかありません。しかし彼ら純血である森のエルフの方々は1000年超える時を生きる種族です。そして最後に森のエルフの方々が秘境からいらっしゃられたのは文献では500年程前の事。私の曾祖母が生まれるより前の話です!!更に森のエルフの方々には我々には無い特殊な力と加護が付いてます。それだけではありません。彼らの中でも更に優れた血統を持つ…ああいや、この方が劣ってるって事ではありませんよ?…とりあえず更に上位の種族はハイエルフと言われ、寿命は勿論加護やその身に宿すステータスも大幅に上昇します。そして彼らの長となる一族の血縁ともなれば歴史の生き証人とも言われる古代種…エンシェントエルフとなります。エンシェントエルフの方々がどれだけ凄いかと申しますと彼らは最早我々の先祖をその目で見てきた、もしくは先祖に教えを説いた方々と同じ時代を生きてるんですよ?!世界を見守る護界竜や厄災をばら撒く破界龍、下界し人々を導いた後に天界に戻られた神々などとも同じ空気を吸っていた存在ですよ?!その様な偉人と悠久に近い時を過ごされる森のエルフの方が目の前に、しかも今説明した歴史の生き証人たる長の直筆で許可証を持って来られるなんて興奮しない訳にはいかないでしょう???」
と、一息で言い切る。あまりの力説に門番共々圧倒されたマーレーだった。そしてそんな三人の反応を見たエルフ女性…もとい、ハーフエルフの女性は少し尖った耳まで赤くして頭を何度も下げる。
「す、すみません…私なんかがお時間を取らせてしまい…興奮し過ぎました…。」
「い、いえ。それに
「180歳って人間だと人生2回以上過ごしてるんですがね…ははは…。っと。長く話し込み過ぎました。改めてようこそ。エルリアの街へ。」
ハーフエルフの女性が熱弁したお陰で緊張が解けたのだろう。気さくに笑顔で門の中へと手を差し出した門番に従い街中へと進む。シルヴィの手綱を門番に手渡した後、木製の扉でできた門を潜り中へと入ると、まず最初に目に入ったのは里では見た事ない位の大人数。里より少し大きい程度しか無い街なのに、里の何倍もの人種が賑やかに街を散策している。その種族も一つに留まらず混じり気のない人間から獣人、エルフ、ドワーフ、更には竜人の様な希少な種族まで分け隔てなく入り混じっていた。
その人々の多さに圧倒されていたマーレーにハーフエルフの女性が声をかける。
「どうでしょう、エルリアの街は。人々が作り上げた技術と種族を問わない交流がこの街のアピールポイントです♪」
「正直驚きました…外界と言うのは凄いですね…。」
キョロキョロと見回すマーレーに大満足した様子のハーフエルフの女性は笑顔を見せる。
「そうでしょうそうでしょう!外にはこれだけの世界が沢山あります!…そう言えば森のエルフ様は何故秘境から?」
「あ、そう言えば。私は冒険をする為に外へ出ました。この後どこに向かえばよろしいでしょうか?」
「なんと!!冒険者に…それはそれは。とても喜ばしい事です!でしたら組合の方へ向かって冒険者登録と適性検査を行うと宜しいかと。もし宜しければご案内しますが…。」
「それは心強い。未熟な私は未だ交易語を聞き取れませんので…。翻訳も兼ねて頂ければ幸いです。」
「勿論構いませんよ!では着いてきて下さい!」
二つ返事で頷いたハーフエルフの女性は軽い足取りで先導する。道中様々な建物に目を惹かれ、時には彼女に説明を受けながら歩く事10分程。石煉瓦で出来た二階建ての酒場にたどり着いた。
「こちらが冒険者組合と酒場を兼ねたお店。"秘境の隣人"です!ささ、中へどうぞ!」
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