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透くんと一緒にいたまさかの人物に、思わずわたしは目を瞬かせた。
――紫司馬だ。
「て、てん――万結、さん……」
わたしを店長、と呼ぶ程驚いてしまっている透くんに、余裕そうに笑みを浮かべる紫司馬。……この二人って、知り合いだったんだ?
――……全然気が付かなかったけど、この二人、ちょっと似てるかも。カラーリングが全然違うけど、顔の雰囲気は近いものを感じる。紫司馬はラベンダーグレーの髪、透くんは白に近い銀髪。イメージカラーがあるのなら、紫と白という離れた場所にいるような彼らだけど、並んでみると、なんとなく似ている、という印象を受ける。
……もしかして、兄弟とか?
透くんが兄で紫司馬が弟、というのは納得できるけど……紫司馬って、なんかヤバい一族の人間なんじゃなかったっけ? 暗殺がどうこう言っていた気がする、姫鶴が。
じゃあ、兄弟説はあり得ないか。だって透くんが人を殺すような世界に生きていたとは思わないし、殺せるとも思わない。心優しい青年だよ、彼は。
そうなると関係が気になるところだけど……。
わたしが不思議に思っていると、紫司馬が「見つかってよかったですね」とにっこり笑った。
「貴女とはぐれてしまったというから、探しにきていたんです。反対側に行くのなら、ここを突っ切った方が早いから」
「ああ、成程」
確かに、人混みの中をかき分けて行くより、人のいないこちら側を歩いた方が、実際の距離はあっても早く行動できそうだ。急がば回れ、というやつか。
「一緒に探してくれてありがとうございました。……透くん、行こ」
一応紫司馬に礼を言って、わたしは透くんの服の裾を引っ張る。こんな白昼堂々、紫司馬が何かしてくるとは思わないし、何かするような理由もないと思うけど、姫鶴から、暗殺者の一族の人間だと聞いているからか、なんとなくひと気がない場所で対峙するのは居心地が悪い。
「そう……ですね」
透くんはなんだか歯切れの悪い返事をしたかと思うと、わたしの手を握り込んできた。急に手を握られて驚きと照れがやってきたのは本の数秒。すぐに力強く握られていることに気が付いて、痛みでその二つはどこかへと飛んで行ってしまった。
「と、透くん……?」
「――それでは、失礼します」
戸惑うわたしの呼びかけが聞こえていないのか、透くんはわたしを強く引っ張って、校舎裏から出ていこうとする。半ば引きずられるようにして、わたしは後をついていく。手を握られているから、そうするしかないんだけど。
……これはもしかしてめちゃくちゃ怒ってる?
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