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 自力で透くんを見つけることを諦めたわたしは、青慈に案内を頼んで迷子案内所に連れて行ってもらうことにした。した、のだが……。


 ――は、早い! 歩くの早いよ!


 姫鶴に勘違いされたくない、という言葉は決して嘘ではないようで、一緒に行動しているとは思えないほどの距離を取られてしまった。しかも、そんなだからわたしがついてきているかどうかの確認もなかなかしてくれない。歩くペースだって早い。


 ああ、もう!

 わたしは小走りで彼に追い付こうとしていると――。


「――んぶ!」


 急に止まった青慈の背中に激突してしまった。青慈の歩くスピードが早いので、わたしもかなりの速度を出して追い付かないと、と思っていたし、急に止まることなんて考えてもいなかったから、突然のことにわたしは対応できなかった。

 迷子案内所についたのかな? と思ったのも一瞬。


「――あれ、君の連れじゃないか?」


 青慈が一方向を指さす。 その先を見ると、遠くに透くんが見える。校舎裏に用事があるのか、ひと気がなさそうな場所に向かっている。顔を覚えていなくても、流石に見れば分かるらしい。


「あ、そうだ! ありがとうございます。わたし、向こうに行きますね」


 全く、あんなところにいたなんて。……もしかして、透くん、わたしがひと気のない場所から校舎内の、生徒を始めとした関係者以外立ち入り禁止の場所に入って万道具の制作現場を見学しよう、とか考えてると思ってる?

 流石のわたしだって、そこまで非常識じゃない。……確実にバレない、とか、許可があれば、とか、ちょっと考えてしまうから、全くの無実、というわけでもない、けど……。


「――見つかって良かったな」


 うっすらと笑う青慈。本当に良かったよ、この歳で迷子放送されるようなことにならなくて。

 わたしは青慈と別れを告げ、透くんがいた場所に向かう。


「もー、透くんってば、どこー?」


 校舎裏の方はひと気がない。こんなところに展示があるわけがないから、客は用もないだろうし、わざわざ『関係者以外立ち入り禁止』という札がないだけで、なんとなく関係のない一般人は入りにくい雰囲気がある。

 行っては駄目だ、と誰かに注意されたわけでもないのに、なんとなく、バレたら怒られる、という気分になってしまったわたしは、声を出して透くんを探す。


 じゃりじゃりと、歩いたときに地面が擦れる足音が、妙に響いているような気がした。


「あ、いた」


 ようやく見つけた、と思ったが――透くんは一人ではなかった。

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