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教室に入ると、考えていたことは全部ふっとんだ。数多くの展示品が目に入ると、もう、そのことしか考えられない。
どこから見るか迷ってそわそわしているわたしに、透くんが、「教室ごとに分類が分かれているみたいですね」と教えてくれる。教室ごとにものを分けられるほどたくさんの万道具があるってこと!?
黎明学園はかなり大きい学校だから、教室の数もそれなりのはず。それが全て展示室になっている、とは流石のわたしでも思わないが、いくつか休憩室や案内所、別の催し物がやっていると考えても、十分な数になるはず。
全部見たい。
いや、全部見るのはそうなんだけど、一つひとつじっくり見たい気持ちと、早く次を見たい気持ちがせめぎ合う。
「笑える、落ち着きなさ過ぎでしょ」
小馬鹿にするような声が聞こえてきてそちらを見ると、制服に身を包んだ詩黄がそこにいた。彼も黎明学園の生徒なのだからいて当たり前だけれど、まさか会うとは思わなかった。
勝手に姫鶴と一緒にいそうだな、と思っていて、さっき姫鶴と会ったときに見かけなかったから、今日はこのまま見かけることはないとばかり。黎明学園の広さと文化祭の規模、人の込み具合を考えると、待ち合わせ等もなしに偶然会うのは結構な確率だと思う。
これがヒロイン補正……?
まさかね。今更そんなものがあるとは思えない。
「こんにちは。てっきり姫鶴と一緒にいるものだとばかり思ってました」
わたしが思わずそう言うと、彼は露骨に嫌そうな顔をした。
「ボクだって一緒に文化祭回りたかった! でも研究グループが分かれたんだからしかたないでしょ」
「研究グループ?」
聞くところによると、文化祭のグループ分けは学年やクラスで決められるのではなく、完全にくじ引きらしい。一つのグループに最低でも一人は各学年から選ばれるように調整されるらしいが、あとは完全ランダム。
好き勝手にグループの面子を選べるわけではないらしいが、運よく仲良しメンバーでグループを組めたり、同じ進路を目指すもの同士で組めたりするらしい。後者の方は、文化祭が終わってもそのまま研究グループが残るのだとか。
めちゃくちゃ楽しそう。
……でも、説明を聞く感じ、もしかしたら、好感度で一緒になる攻略キャラが変わったりするのかな。『黎明のアルケミスト』は本編をやっていないけれど、二次元コンテンツに触れ続けてきたオタクなので、なんとなく流れを察することはできる。
「ボクら全員研究グループが分かれちゃって……運なさすぎ」
あれ? 姫鶴と青慈は一緒じゃないのかな。詩黄の言う『ボクら』が誰か、正確には分からないけど、おそらくは攻略キャラたちと姫鶴のことをさしているはず。
てっきり、この感じだと姫鶴と青慈は一緒になっているのだと思ってたけどそんなことないのかな。……確かに、さっき屋台で見かけたときは青慈がいなかったな。
こういうところは、悪役ヒロイン、ということで一緒になれないのかもしれない。なんかちょっと、可哀想。
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