第10話:幸運虎とぐうたら羊 ♯羊虎/雑談するよー ♯ココユキカグラ
『《♯羊虎》うみゅー、王冠を取るの!《羊沢ユイ/貴虎タイガ/シロルーム》』
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ユキくんがライブ配信をしていた頃、ユイもコラボ配信を行っていた。
コラボ相手は貴虎タイガ。
内容はゲーム配信ということもあり、パーティー系のアクションゲームを準備していた。
基本的な操作は移動やジャンプ、掴む……くらい。
ラウンド毎に参加者が減っていって、最後の一人になるまで競い合うといったパーティゲームだった。
タイガは基本壁があれば壊して進むタイプ……、ということを聞いていたので、こういったシンプルなゲームの方がいいのでは、と思ったのだ。
【コメント】
:珍しい組み合わせ
:動物ペアだな
:のんびりユイっちと暴走タイガか
:しかも今日するゲームってオンライン対戦のやつか
:ユイっち勝てるのか?
――どういうこと?
ユイはかなりのゲーマーとして知られているはず。
そうなると普通はタイガが勝てるのか、と思うはずなのに……。
疑問を抱きながらユイは配信を始めていた。
ユイ :『うみゅー、こんみゅー。ゆいはお布団の守り神、羊沢ユイなのー。よろしくなのー』
【コメント】
:うみゅー
:うみゅー
:こんみゅー
《:¥500 うみゅー》
:こんみゅー
:お布団の守り神w
ユイ :『うみゅー。それじゃあ、そろそろ配信を終わりにするの。お疲れ様なの』
タイガ:『おっ!? もう終わりなのか? お疲れー!』
ユイのボケに対して、ツッコミが来ずにタイガも乗っかって来る。
ただ、そこまでは想定通り。むしろ先を読みやすいタイガだからこそ準備できた流れだった。
ユイはそのままエンドロールを流す。
【コメント】
:w
:ユイちゃんw
:本当に終わりそうw
:ついにぐうたらするユイちゃんの悲願が果たせるか?w
:タイガがこの流れを破壊してくれるはず
エンドロールも終わり、配信を終了させようとした、そのタイミングでキャスコードの通知音がなる。
ピコっ!
いつもなら絶対にしない通知音鳴らしというミスを敢えてする。
その送り主はもちろん担当。
マネ :[ちゃんと配信はしてください]
よく見てるな、と思わず感心してしまう。
ユイがぐうたらしすぎた時にいつもこの注意が飛んでくる。
ユイ :『うみゅー、担当さんに怒られたから仕方なく配信を続けるのー。めんどいのー』
タイガ:『続けるのか!? よし、任せろ!』
何事もなかったかのようにエンドロールを消して、アバターを表示する。
羊型アバターのユイに対して虎型のアバターのタイガ。
黄色と黒のコントラストな髪の中に耳があり、スレンダーな体つきと細く長い尻尾。
そして、服装も黄色と黒の袖なしワンピースを着ていた。
それはもう、どこからどう見ても虎にしか見えない。
そして、食物連鎖から考えると、ユイは食べられる立場にいた。
ユイ :『うみゅ!? よく見るとゆいは羊だから食べられちゃう!? 大ピンチなの』
タイガ:『ジンギスカンって美味いもんな』
斜め上の回答をしてくるタイガ。
確かにこれは他の人とは違う対応が必要になりそうだった。
ユイ :『うみゅみゅ!? 食べる気!? ゆいを本当に食べる気なの!?!? ゆい、ピンチなの!?』
タイガ:『ユイってジンギスカンだったのか!?』
口元に手を当てるタイガ。
それをみると本当によだれを垂らしている様に思えてしまう。
ユイ :『うみゅ、ち、違うの!? ゆいはゆいなの! ラム肉じゃないの!』
タイガ:『あははっ、なら問題ない!』
ユイ :『うみゅー……、調子狂うの……』
【コメント】
:さすが暴走枠w
:ユイちゃんが手玉に取られてるねw
:下手に考えるとドツボ嵌まるからなw
《:¥2,000 ラム肉代》
:二期生は三期生みたいに素直な子が少ないからなw
ユイ :『と、とりあえず気を取り直して……。今日はタイガと一緒にゲームをするのー』
タイガ:『ゲームと言えば俺だからな。任せておけ!』
ユイ :『うみゅ、どこからこの自信が来るのかわからないけど、一緒に王冠を目指すの』
タイガ:『おう! んっ、なんだこのマトリョーシカみたいなやつは。敵か?』
ユイ :『うにゅ、それは自分の操作キャラなの。自分で自分を倒したらダメなの。ふぅ……、今日はツッコミが大変で疲れそうなの……』
【コメント】
:ユイちゃん頑張れ
:なんだろう、結末が既に見える
:石橋を叩いて粉砕するタイプだからな、タイガ
:自分が……だよな?w
:もちろん周りにいる全員を……だよw
タイガ:『早速始めるか……って、いきなりどこかに落ちてるぞ?』
ユイ :『参加者を探してるだけなの。しばらく待つと良いの』
タイガ:『よし、始まった。で、なんだこれは? たくさん扉があるぞ?』
ユイ :『うみゅ。それはいくつかある扉のうち、通れるのが数個だけあるの。それを何回か繰り返して、規定人数以内にゴールするといいの』
タイガ:『なるほど。要するに突っ込めばいいわけだな!』
ユイ :『うみゅみゅ!? ち、違うの。た、正しい扉を見つけないとダメなの!』
【コメント】
:ユイちゃん草
:まぁ、説明を聞くタイプじゃないもんなw
:でも、これってタイガ最強のやつじゃないか?
:あぁ、運が絡むものでタイガに勝てる人間はいないだろう?
:でも、羊だw
そして、ゲームが開始される。
六十人ほどのキャラが一斉に動き出してゴールを目指していく。
まっすぐにゴールを目指すのもあり、妨害もあり。とりあえずなんでもできるゲームだった。
タイガ:『数がいたらとりあえずぶっ飛ばしたくなるよな? パンチはどのボタンでできるんだ?』
ユイ :『うみゅ!? そんなボタンはないの!?』
タイガ:『ちっ、残念だ。とりあえず俺はとことんまっすぐ進むぜ!!』
そういうとタイガはまだ開いていない扉に向かってまっすぐ進んでいく。
すると、その扉は正解だった様であっさり先に進んでいく。
ユイ :『うみゅ、運がいいの……』
タイガのあとを追いかけていくユイ。
これは椅子取りゲームの様なもので最初は一位になる必要はない。
脱落さえしなければ良かった。
――最終的に勝てば良い。
そう思っていたのだが、運が良かっただけに思えたタイガから嫌な雰囲気を感じ取った。
理由はわからない。
でも、全力を出さないと負ける様な気がした。
自分の全力……。つまり手の内を隠しつつ、最後の最後で勝利をつかみ取る。
ゲームにおいてユイに負けはない。
この嫌な感覚を感じたからこそ平静を保たないといけない。
ユイは大きく深呼吸をして、いつもどおりの態度を取る。
ユイ :『タイガは初っぱなから飛ばしすぎなの。最初は流すだけで良いの』
タイガ:『はははっ、負け惜しみか? 悔しかったら勝ってみろ!』
ユイ :『うみゅ、言ってると良いの。最後に勝つのはゆいなの。本気を出すまでもないの』
【コメント】
:ユイちゃんはいつも通り挑発してるw
:ゲーム勝負だから本気なんだなw
:ゲーム操作は下手だけど、幸運だけで全てを破壊するタイガw
:選ばれるゲームは全て運系か。
:勝てるのか?
:幸運虎にぐうたら羊が挑む!
瞬時に判断して、最短ルートを辿っていくユイ。
しかし、突っ込んだ先、全てが正解の扉であるタイガに勝てるはずもなく、初戦は二位という結果になった。
ユイ :『うみゅ、無事に通過したの』
タイガ:『はははっ、まだまだ俺には勝てないな。もっと全力を見せてみろ!』
何もせず、運だけで勝った様に思ってしまうのは初心者のすることだろう。
ユイほどのゲーマーになるとはっきりわかる。
そして、タイガは
だからこそ、ユイも全力を出して立ち向かわないといけない。
ユイ :『うみゅ、最後の最後はゆいが勝つの』
◇◇◇
それからユイとタイガは一進一退の勝負を繰り広げていた。
完全に運だけのものはタイガが圧勝。
少しでも技巧が必要な物だと競い合う。
そして、ついに最終戦。
最後に勝ち残った者が優勝となるところまで来た。
残った人数は八人。
ゲーム内容は妨害してくる障害物を避けて、頂上にある王冠をとる。
タイガ:『なかなかやるな』
ユイ :『うみゅ、ついに最後の勝負なの。覚悟するの』
ユイとタイガは二人、バチバチと火花を飛ばし合っていた。
【コメント】
:ど、どっちが勝つんだ?
:ユイちゃん、頑張れ
:タイガも負けるな
:目が離せなくなってきた
最後の勝負が始まる。
ユイもタイガもまっすぐに頂上を目指していった。
ただ、タイガだけはほぼ障害に引っかからずにまっすぐ進める一方、ユイはどうしてもそれを躱すのに時間がかかる。
でも、それをユイ自身が最短ルートを見極め、ミスのないプレイで差を縮めていく。
そして、山頂にほぼ同時にたどり着く。
――あとは王冠を取るだけ。
そして、ほぼ同時に王冠をつかみ取る。
タイガ:『…………』
ユイ :『…………』
最後の最後に運の勝負。
でも、ユイとしては全力で挑んだ結果の勝敗。
どちらに転んでも納得するつもりだった。
タイガ:『……負けたよ』
タイガのその言葉でユイはようやく自分が勝利していることに気づいた。
いつもならわかりやすいように喜ぶのだが、今回ばかりは違った。
ユイ :『うみゅ……、良い勝負だったの』
タイガ:『そうだな。またやりたいな』
お互い友情の様なものが芽生えた気がしていた。
だからこそユイはにっこり微笑んで言う。
ユイ :『うみゅ、疲れるからもう嫌なの』
タイガ『えっ!? ち、違うだろ!? そこはがっちりと拳をつけ合って再戦を約束するところだろう?』
【コメント】
:草
:ユイちゃんらしいw
:予測できない羊w
:ぐうたら羊が買った
《:¥10,000 おめでとう》
:良い勝負だった
:ユイちゃん、おめでとう
ユイ :『嘘なの。楽しかったの。またやるの。次は
タイガ:『あぁ、正面から粉砕してやる!』
結果的にお互い笑い合って終わることができた。
ユイ :『うみゅ、次は一切運が絡まないゲームを用意するの』
この放送は終了しました。
『《♯羊虎》うみゅー、王冠を取るの!《羊沢ユイ/貴虎タイガ/シロルーム》』』
3.9万人が視聴 0分前に公開済み
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チャンネル名:Yui_Room.羊沢ユイ
チャンネル登録者
数10.1万人
◇◇◇
【コメント】
:ユイっち酷いw
:確実に勝つつもりだw
:まぁ、タイガのあの幸運はチート級だからな
:乙うみゅー
:草
◇■◇
『《♯ユキ犬姫拾いました ♯ココユキカグラ》ユキくん、新衣装発表!?《雪城ユキ/真心ココネ/神宮寺カグラ/シロルーム三期生》』
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新衣装発表が終わり、顔を真っ赤にしていたもののカグラのおかげで僕の気持ちは落ち着いていた。
『えとえと……、衣装の話が終わったし、僕の家で過ごした話でもしようかな?』
ココネ:『私とユキくんが一緒にお風呂に入った話ですね』
【コメント】
:ユキくんとココママがお風呂か……
:ユキくんが体を洗ってもらってたのかな?
:泡を嫌がるユキくん……
:ダメだ、俺はもう逝く……
『ちょ、ちょっと、堂々と嘘をつかないで!? い、今のはココママの妄想話だからね。そんなこと、一切なかったからね!?』
ココネ:『もう、ユキくんは照れちゃって……。私が優しく体を洗って上げたじゃないですか』
『わ、わふっ、そ、そんなことないよ!?』
カグラ:『はいはい、ココネもその辺にしておきなさい。またユキが目を回して倒れるわよ』
『ぼ、僕は大丈夫だよ!? もうそんなことはないよ……。もう子供じゃないんだし……。子供?? あっ、そうだ。一つ、ココママを問い詰めないといけない話があったんだった……』
ココネ:『――そろそろ配信終了にしましょうか?』
『しないよ!? それよりココママは僕のこと、小学生だと思ってない? さっきははぐらかしてきたけど』
【コメント】
:ユキくん小学生疑惑w
:確かに見た目的には十分ありえる……w
美空アカネ🔧:ランドセルユキくんも良いね
:暴走特急だwww
:あれっ、これって次の新衣装……w
:ユキくんは小学生
:なんだ、ロリかw
『な、なんで小学生派の方が多いの!? こう見えてもちゃんと十九歳だよ!? 今月末に二十歳になるよ!? お酒も飲めるよ!?』
ココネ:『えっ?? ユキくん、今月末が誕生日だったのですか!?』
『えっ? あっ、うん。そ、そうだけど、どうして??』
ココネ:『……。誕生日記念配信をしないといけませんね』
一瞬間を開けたココネ。ただ、にっこり微笑んでとんでもないことを言ってくる。
『こ、ここでも記念配信が来るの!?!?』
カグラ:『こればっかりはしかたないわね。まぁ、頑張りなさい』
『うぅぅ……、わかったよ。担当さんから連絡があったら考えるよ……』
【コメント】
:誕生日と言うことは記念品も発売するのか!?
:楽しみ
:そういえば三期生の誕生日を忘れていたな
:今月末か。バイト代貯めておく
『わわっ、ま、まだ決まったわけじゃないから!? そ、それにお金は無理に使ったらダメだからね!? 自分の生活を優先してね!?』
カグラ:『誕生日だと記念ボイスとかを販売するわよね? ユキ、本当に何も聞いてないの?』
『うーん、まだ全然……』
カグラ:『なら覚悟しておくと良いわ。どんなボイスにするか考えないといけないから』
『う、うん……。ちょっと覚悟しておくよ』
ココネ:『前もって担当さんに確認しておいて、ちゃんと予約しておかないと――』
『――ココママ?』
ココネ:『べ、別に私はユキくんのボイスを買えばいつでも聞ける、とかそんなことは考えていませんよ!?』
それはほとんど答えを言っている様なものだった。
僕はため息交じりに言う。
『ココママならいつでも僕の声を聞けるでしょ? ほ、ほらっ、キャスコードの通話でも話せるわけだし……』
ココネ:『えっ? 通話しても良いのですか? ユキくん、嫌がるかなって極力チャットにしてたんですよ?』
『も、もちろんだよ。き、緊張はするけど、その……、さ、三期生のみんななら断る理由はないよ』
ココネ:『あ、ありがとうございます』
『わわっ、だ、だから抱きつかないでー』
再びココネに捕まった僕はそのままバタバタと手足を動かしていた。
【コメント】
:今まで通話してなかったのかw
:ココママ草
:また捕まったw
美空アカネ🔧:妄想が捗るね。一体ナニをしてるのかな?
:カタカナw
カグラ:『まったくもう……』
『わふわふ……、ココママ、離してよ……』
ココネ:『ユキくん、暖かいですぅ……』
『ぼ、僕で暖を取らないで……。というか、もう蒸し暑くなってくる時期だよね!?』
カグラ:『ほらっ、じゃれ合うのは後からにしなさい。そろそろ放送時間が終わるわよ? 最後に衣装をもう一回見せた方が良いわよね?』
『わ、わふっ、わかったよ。ほらっ、ココママ、離れて……』
ココネ:『……仕方ないですね。ユキくんの晴れ姿のためですから――』
ココネが離してくれた瞬間に僕はカグラの後ろへと移動する。
カグラ:『ユキ、私の後ろに隠れてないでほらっ、最後の挨拶をして』
【コメント】
:ココママ警戒されてて草
:カグラ様がお姉さんにw
:ユキくんw
『わ、わふっ、きょ、今日は僕の新衣装公開ライブに来ていただいてありがとうございます。途中、その一部お見苦しいものをお見せしましたが、無事放送することができて良かったです……』
ココネ:『大丈夫ですよ、ユキくん。みんなわかってますから』
カグラ:『そうね、ユキがミスをするのは今更だからね』
ココネ:『えぇ、しっかり切り抜いて後世にユキくんのかわいいところを広めてもらいますね』
『そ、そんなことをしたら僕、その……、泣いちゃいますからね。だ、だから、あのシーンは切り抜かないで……。お願いします……』
【コメント】
:はーい
:はーい
:はーい
《:¥50,000 ユキくん、泣かないで》
美空アカネ🔧:誰も切り抜かなかったら私がするね
:草
:みんな返事だけ良すぎw
『そ、それじゃあ、本日もありがとうございました。乙わふ――』
この放送は終了しました。
『《♯ユキ犬姫拾いました ♯ココユキカグラ》ユキくん、新衣装発表!?《雪城ユキ/真心ココネ/神宮寺カグラ/シロルーム三期生》』
6.7万人が視聴 0分前に配信済み
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チャンネル名:Yuki Room.雪城ユキ
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