第13話:料理?対決、開始

カグラ:『それよりも今日は色々と告知があるんでしょ? 頑張りなさいよ』


『うん、ありがとう……カグラさん。えとえと、今日はこの3Dの僕とミニアニメの初お披露目でした。そのその、三万人と十万人の記念にもらいましたので……。あとはコラボの予定を発表したいと思います。カグラさん以外は担当さんが勝手に決めちゃってたんだよ……。僕はその……一人で隠れて、誰も見ていないところで配信したかったのに……』


カグラ:『……ユキらしいわね。まぁ、私は一緒にやりたいなんて人はいないでしょうけど……』




【コメント】

:また自虐的カグラ様に戻ってしまった

:大丈夫だよ、カグラ様。ユキくんがいるよ。

姫野オンプ🔧:同じ姫ですし、私とコラボしますかー?

野草ユージ🔧:た、担当からってまさかここで発表するのか? 燃えるぞ?

:ユージ草




カグラ:『えっ、ひ、姫野さん!?』


『カグラさん、おめでとう。コラボ決まったね』


カグラ:『わ、私は別にしたかったわけじゃないんだからね。で、でも、ありがとうございます。そ、その……また後から連絡します』




【コメント】

:カグラ様おめ

:おめでとう

:おめでとー

姫野オンプ🔧:ではお待ちしますねー

:姫姫コラボ楽しみ




 コメントが祝福の言葉で覆い尽くされる。

 今なら言えるかもしれない。


 僕は覚悟を決めて言う。




『えとえと。その……、僕がコラボ決まってるのは来週のココママとのオフと、その次はアカネさん達とのコラボ。あとは真緒ユキヤさんや野草ユージさんとのコラボが決まってるよ』




【コメント】

:へっ?

:はっ?

真緒ユキヤ🔧:うむ、ユキの担当から根性をたたき直してくれと頼まれてな。筋トレ枠をするつもりだ

:はぁ?

:ユージ燃やす

:草燃やす

野草ユージ🔧:ちょ、ちょい待てよ! 何で俺だけなんだよ!? ユキヤも同罪だろう?

:炎炎炎

:炎草炎

:炎炎炎

:真緒さんはユキくんを鍛えてくれるから

:チャラ男許さない




『あ、あれっ?』


カグラ:『はぁ……、まぁこうなるわね。一応言っておくとユキに限らずシロルームの全員とコラボしていくわけだから、この順番はたまたまなのよ』


『ま、まだ詳細は決まってないんだけどね。き、筋トレ枠か……。ははっ……、お手柔らかに……』




【コメント】

:草炎

:草炎

:炎炎

猫ノ瀬タマキ🔧:炎草炎

美空アカネ🔧:炎草炎

真緒ユキヤ🔧:せっかくの3Dだ。試しにここで腕立てでもしてみるか?

野草ユージ🔧:ちょっとお前たちまで燃やすな!! ユキヤは関係ないふりをするな!こっちこい!

:草炎

:草炎




 コメント欄が一気に燃えている。

 さすがの経験に僕は困惑していた。




『あ、あわわわっ、そ、その、僕、ど、どうしたら……?』


カグラ:『こういうのはね、放置するしかないのよ』


『で、でも、みんな怒って……。そ、その、僕が悪くて……』


カグラ:『はぁ……、わかったわよ。それならこういうと良いわ』




 それからカグラが一度音声をミュートにして、耳元である台詞を言ってくれる。



カグラ:『ほらっ、言ってみるといいわ』


『う、うん』




 僕は少し深呼吸をして気持ちを整える。


 そして、上目遣いをしながら言う。




『ぼ、僕のために争わないで……。こ、これ以上燃やされると僕、泣いちゃいましゅ……』




 肝心なところで噛んでしまう。

 そのせいもあり、一気に顔が真っ赤になり、その場でうずくまる。




『うぅぅぅ……、箱があったら入りたいよぉ……』


カグラ:『いつも段ボールに入ってるわよね?』


『いつも入ってるけど、今日はないもん。その、家に忘れてきたから……』


カグラ:『なら次からは忘れないことね。わかった?』


『うん……。そうするよ……』




【コメント】

:ユキかわ

:ユキくんのためなら仕方ないな

:ユキくん、泣かせたくないからな

:俺はむしろ泣かせたい!

:通報しました

:カグラ様、今日はしっかりしてるな

真心ココネ🔧:ほ、本当は私がそこにいたはずなのに……

:ココママ草

:あれ? 草燃やすターンは終わり?




『あっ、収まった……。よかった……』


カグラ:『これに懲りたら安直な発言はしないことね』


『た、担当さんが積極的に言ってくれって言ってたから……』


カグラ:『なるほど……、確信犯ね。あとで締めておきましょうか』


『だ、ダメだよ。いつもお世話になってるんだから』


カグラ:『それよりも告知はそれくらいかしら?』


『えっ? うーん、そうだね。あとは来週のココママコラボでお気に入り登録者五人記念配信をするよ?』


カグラ:『もう十万人超えてるでしょ。しかも今日が十万人記念配信だし……』


『えっ? あっ、そ、それもそうか……。五万人記念ができなかったよ……』


カグラ:『ついに五万人を認めたわね』


『あっ……』




【コメント】

:カグラ様策士w

:時間遡行ユキくん

:草

:草

:ユージ草

:草

野草ユージ🔧:俺、関係ないだろ!?

:草




『あぅあぅ……、そ、そろそろ僕も自覚しないとって思ってね。たくさんの人たちが僕の動画を見に来てくれてるんだって……。こんななにもできない僕を楽しみにしてくれてるんだって……』


カグラ:『はぁ……、全く。そんな当たり前のことを今更考えてたの?』


『あ、あた……。ぼ、僕が必死に悩んでたのに……』


カグラ:『だってそうでしょ? ここにいるみんな、ユキのことが好きだから来てるのよ。もちろん私も含めてね。だからユキはユキらしくそのまま突っ走ると良いのよ! その姿をみんなが見たいのだからね』




【コメント】

:あぁ、俺たちはユキくんが好きだぞ

:ユキくん、好きだー!

:結婚してくれー

:カグラ様がかっこいい!?

:このカグラ様は偽物だ!

羊沢ユイ🔧:うみゅ、ゆいもユキくん好きなの

真心ココネ🔧:当然私もですよ




 コメント欄が暖かくて、思わず僕は涙が流れてしまう。




『うぅ……、みんなありがとう……。ぼ、僕、頑張っていくからね……』


カグラ:『はぁ……、全く……』




 隣でカグラは苦笑いを浮かべていたが、その表情はどこか穏やかなものだった。




◇◇◇




『あっ、そうだ。これは最後の告知になるけど、このあと、今晩十八時から僕とカグラさんのコラボオフがあるよ。料理対決だよ』


カグラ:『ふふふっ、返り討ちにしてあげるわよ』


『うぅぅ……、やっぱり無茶だと思うけど、精一杯頑張るから応援してね。僕が作る料理は僕の枠で、カグラさんが作る料理はカグラさんの枠で放送するよ。そのあと、総評はカグラさんの枠でするから、みんな忘れずに来てね』


カグラ:『実際に食べるのは私たちだけど、見た目とかの評価はみんなにしてもらうからね。必ず来るのよ!』




【コメント】

:ユキくん、大丈夫か?

:食えるものができるのか?

:死なないで……

:ユキくん、悪いことは言わないからやめた方がいいぞ




『えとえと、た、たしかに僕はそんなに料理を作ったことがないし、どこまで食べられるような料理になるかはわからないけど、その……が、頑張るよ!』


カグラ:『まぁ、私には敵わないでしょうけど、ほどほどに頑張るといいわよ』


『うん、カグラさんの料理、食べるの楽しみにしてるね』




 料理、得意って言ってたもんね。

 どんなものが食べられるのか、今からでも楽しみだった。


 ただ、コメント欄には僕を心配するコメントが溢れかえっていた。

 



『だ、大丈夫だよ。と、とにかくこのあとの放送もよろしくね。そ、それじゃあ、わふっ……』



この放送は終了しました。


『《♯犬拾いました ♯カグユキ》登録者数十人超えるまでコラボ配信。他にも色々と報告があるよ《雪城ユキ/神宮寺カグラ/シロルーム三期生》』

5.2万人が視聴 0分前に公開済み

⤴1.9万 ⤵87 ➦共有 ≡₊保存 …


チャンネル名:Yuki Room.雪城ユキ

チャンネル登録者数10.1万人




◇◇◇

【コメント】

:ユキくん、本当に大丈夫かな?

:毒を食って平気なやつはいないだろ

:前、カレーを作るのに野菜を一切切らずに入れた上で焦がしてたぞ?

:まだ食えるならマシだ。肉焼いたときは炭にしてたぞ?

:ユキくん、死ぬな




◇◇◇




 無事に放送を終えることができた。そのことで僕はホッとしていた。


 燃えるかもしれない、という恐怖を感じたこと。

 その際にもカグラに助けてもらったこと。


 そのことは感謝してもしたりないくらいだった。

 ただ、とりあえず燃やすこと前提だった担当さんには文句を言っておこう。


 そう思い、スマホを開いた瞬間に通知が来る。



マネ :[そのうち必要になると思いまして、カグラさんがフォローできるうちに試してもらいました]


ユキ :[僕、まだ何も言ってませんよ!?]


マネ :[ユキくんが考えてることはわかりやすいですから]


ユキ :[それなら事前に言っておいてくださいよ! 僕、怖かったんですから……]


マネ :[言ったら放送自体しなかったですよね?]




 ……うん、おそらくしなかった。

 なにか理由を付けて断っていたことが容易にイメージできる。




マネ :[まぁ、本当なら女性ライバーと男性ライバーはコラボさせないのがシロルームの決まりなんですけどね]


ユキ :[そ、それじゃあ、やっぱり僕、コラボしなくても……]


マネ :[それはユキくんが女性と認める……ということですか?]


ユキ :[うぐっ……]


マネ :[まぁ、ユキくんは事情が事情ですから、色々と模索しながらやっていくと思います。今回もその実験だと思ってください]


ユキ :[わ、わかりました。ぼ、僕はやれることをやらせていただきます]


マネ :[うんうん。ただ、ユージくん達とのコラボは燃える可能性があるから二人同時のコラボにするね。何度も燃えたらユキくんの体が持たないもんね。あと、二期生達も順番にコラボしていくことが決まってるから]


ユキ :[……きょ]


マネ :[拒否権はないからよろしくね]




 うぅ……、やっぱりコラボは全員か……。


 ただ、何度もコラボを繰り返してきただけあって、そこまで抵抗はなくなってきている。

 そんな自分が怖い。


 今回みたいなオフコラボじゃないもんね。


 さすがにオフコラボはどうしても緊張する。

 既に僕の正体がバレている結坂と瑠璃香さん以外は……。




「あっ、そういえばユキは今日、泊まっていくのよね? どうする、お風呂は先に入る? 後からにする?」




 瑠璃香に言われて、僕は顔を赤くする。




「ぼ、僕はその、か、帰……」


「まさか帰るなんて言わないよね? オフコラボなんだから、とことんするわよ! そうね、料理対決のあと、お風呂入ってから寝るまでのコラボをする感じでいいわよね?」


「あうあう、そ、その……」


「えぇ、わかってるわよ。私の枠の後はユキの枠で。リレー形式にすれば良いんでしょ?」


「えと、そ、そこはずっと瑠璃香さんの枠で良いけど――」


「本当に!? 助かるわ! 私、少しお気に入り登録者数が伸び悩んでいて、迷ってたの」


「えっと、でももう三万人くらいいなかった? 十分すぎないかな?」


「まだ三万人に届いてないのよ。ユキは十万人超えてるでしょ!? それにココネやユイはもう四万人……。やっぱり負けられないわ」


「うーん、僕もなんで伸びてるかわからないからなぁ。ただ、僕にできることがあったら手伝うからね」


「ありがとう。なら今日はお泊まりオフ決定ね」


「えっ!?」




 こうして気がつかないうちに外堀を埋められてしまうのだった。




◇◇◇

 雪城ユキ@シロルーム三期生 @yuki_yukishiro 今

本日二回目の配信。カグラさんとのコラボオフ会になります。なんと料理上手のカグラさんに料理対決を挑みます。お、応援してくださいね。枠はメインがカグラさんの枠、料理中だけそれぞれの枠で行います。わ、わふー ♯カグユキ料理対決




 カタッターで呟いた後、僕は料理の準備を始めていた。

 とはいっても、それほど難しいものは作ることができない。


 そもそも実家暮らしの僕はまともに料理をしたことすらない。

 でも、そんな僕にもできる魔法の料理がある。


 味は完璧。

 塩分やカロリーは少々気になるものの、食べ盛りの男子だった僕が気にするほどのことではなかった。



――ほとんど食べさせてもらえなかったけど。



 お湯を沸かせばたったの三分で完成。

 最近は五分とかのものも増えてきてるけど、それだけで食べられる、料理下手の僕でも作れる魔法の料理がある。



 カップ麺。



 料理対決自体を冒涜してるようにも思えるが、今の僕にできる精一杯がこれだった。せめて食べられる料理にする必要があるからね。

 もちろん担当さんからも許可をもらっている。むしろ担当さんから勧められたものだ。


 そして、罰ゲームはお泊まりオフ会。


 ただ、すでに僕はユイとお泊まりはしてる。

 今日はカグラさんとも強制でするわけだし、唯一してないのはココネだけ……。


 でも、一度してしまったら耐性がつくのか、そこまで罰ゲームという感じがしない。


 おそらく担当さんとしてはここで負けさせて、嫌がる僕に強制お泊まり会をさせようとでもしたのだろう。

 慌てる僕の姿を見て『てぇてぇ』とでも言おうとしたのだろう。



――ふふふっ、すでに目論見は潰れてるよ。いつも僕の考えを読んでくる担当さんだけど、今日は裏をかかせてもらうからね。



 僕は担当さんが悔しがる姿を想像して不敵に笑みを浮かべていた。




◇◇◇



 一応お互いが作る料理は作る前まで内緒……ということで、放送開始5分前になる。



『《♯姫のご乱心 ♯カグユキ料理対決》ルール説明&マシュマロ読み《神宮寺カグラ/雪城ユキ/シロルーム三期生》』

2.0万人が待機中 20XX/05/14 18:00に公開予定

⤴1,365 ⤵2 ➦共有 ≡₊保存 …




 既にかなりの数の待機者がいる。

 ただ、最近の僕の配信だといつもこんな感じだ。


 これもチャンネル登録者数が増えた影響だろうか?


 僕もずいぶんと自分に自信を持てるようになったみたいだ。

 正確には自分の枠じゃないから……ということがかなりの枠をしめているのだが――。


 でも、カグラは違ったようだった。




「えっ、な、なにこの待機者数……」


「うん、多いよね」


「って、なんでユキは平然としているのよ」


「僕、いつもこんな感じだからね……」


「はぁ……、そういえば昼もそうだったわね。でも、私のチャンネルだとあり得ない数字よ……。これもユキとのコラボのおかげかしら?」


「力になれたのなら嬉しいよ」


「……なるほどね。ユキはいつもこのプレッシャーと戦ってたのね」


「えっと……、僕の場合は余裕がなくて、そこまで意識が回らなかったのもあるけどね……」


「ふふふっ、それでこそユキよ。うん、大丈夫。行きましょうか!」




 カグラは自分の中で自己解決したようだった。



――この辺りやっぱりカグラさんは強いな……。僕はみんなに助けてもらってようやく立ち上がれたのに……。




【コメント】

:ついに来てしまったか

:地獄の料理……

:ユキくん逃げてー

:カグラ様放送でここまで人がいるのは初か?

:昼の放送の影響もあるだろうな




 コメントが賑わいだしたところでカグラが話し始める。




カグラ:『シロルーム三期生、神宮寺カグラ。今日も仕方ないから来てあげたわよ!』




 堂々と通る声を出すカグラ。

 その姿は純粋にかっこいいなと思える。

 おそらく、瑠璃香としての彼女を見たからだろう。


 おそらく僕たちの中で一番真剣に動画配信のことを考え、自分で研究して、一人悩み抜いている彼女のことを――。




【コメント】

:待ってたよー

:いや、待ってなかったぞー

:段ボールが転がってるwww

:今日は『拾われました』かwww




カグラ:『もう気づかれてるけど、今日はなんとシロルーム三期生トップ登録者を誇る雪城ユキに来てもらったわ。もちろんオフでね』


『わ、わふぅ……。どうも、雪城ユキです……。今日はカグラさんに拾われてお邪魔させてもらっています。そ、その……、よろしくお願いします』




 段ボールから覗くように顔を出す。そして、軽く頭を下げた後にすぐに段ボールの中へと隠れる。



――やっぱり段ボールの中って落ち着くよね。




カグラ:『くっ、相変わらず可愛いわね。まぁ、私には及ばないけどね』




【コメント】

:カグラ様の負けw

:可愛さは断トツユキくん

:一体どんなポンコツ具合を見せてくれるのか

:そもそもポンコツコンビで配信が成立するのか?

:ユキくん、すぐに隠れてて草

:昼間は段ボールがなかったもんね

:ユキくんの全身が見られる貴重な配信だった




『えとえと、酷い言われような気がするけど……?』


カグラ:『そうかしら? いつもこんな感じよ?』


『あ、愛されてるんだね……』




 思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 しかし、カグラはそれを誇らしげに言い返してくる。




カグラ:『まぁ、私にかかればこの程度、造作もないことよ』


『ほ、褒めてないんだけど……』




【コメント】

:ユキくんがフォローに回ってるw

:自分の枠じゃないときは自然体だよね、ユキくん

:普通逆だよねw

:カグラ様が早速ポンコツにw




カグラ:『と、とにかく、これからマシュマロを読んでいくわよ。答えるのはユキで良いのかしら?』


『えっ、ち、違うよ。この枠はカグラさんの枠だから、答えるのはカグラさんだよ?』


カグラ:『そういうものなのね。わかったわ。では、まず最初のマシュマロね。[カグヤ様、こんばんは]』


『えっと……、そ、それだけ?』


カグラ:『えぇ、これだけね。あと言わせてもらうと、私の名前は神宮司カグラじんぐうじかぐらよ。カグヤじゃないから……』


『あっ、本当だ!? 良く気づいたね』


カグラ:『自分の名前なら当然でしょ』


『うーん、僕だったらスルーしてしまうかも……』


カグラ:『ユキは間違いようがないからね』




【コメント】

:あれっ、名前間違えるフラグ?

羊沢ユイ🔧:カグちゃーん

:グラ様ー

:カンペ様ー

:わざと間違えるやつ多過ぎw




カグラ:『だから、私は神宮寺カグラよ! かんぺなんてユキじゃないから使ってないわよ!』


『ぼ、ぼ、ぼ、僕だって使ってないよ……。今日は――』




【コメント】

:ユキくん、動揺しすぎ

:前も見てたもんね

:カグラ様の持ちネタがついにできたか

:まだまだ持ちネタあるぞw

:これから積極的に名前弄りを入れていこうw

:早速マシュマロに投げてきたw




『うぅぅ……、本当に今日は見てないよー』


カグラ:『このままじゃ先に進まないから次のマシュマロに行くわよ! 全く、たかが挨拶でどれだけ時間かかるのよ……』


『ご、ごめんね。僕のせいで――』


カグラ:『ユキのせいじゃないわよ。それよりも次はこれ。[得意な料理はなんですか? ちゃんとした料理で逝ってください]。【言って】の漢字が違うわよ……』


『えっと、料理で……逝く? おいしすぎてかな?』


カグラ『……。私の得意料理はパスタよ。最近はクリームパスタにハマってるわ』


『おいしいよね。僕も好きだなぁ。でも、自分で作ろうとすると中々難しいんだよね。僕はレトルトのを食べるばっかりだよ』


カグラ:『確かにユキは苦手そうよね。まぁ今日は私の料理を見て勉強していくといいわ』


『うん、楽しみにしてるよ』




【コメント】

:ユキくん死亡フラグw

:ユキくん、純情すぎw

:ユキくん逃げてwww

:カグラ様から何を勉強するんだ?

:ユキくんの勝ちに一万賭けるぞ!

:なら俺はユキくんに五万ペリカだ!

:俺は金欠だからユキくんに諭吉一枚だ!

:誰かカグラ様に賭けないと賭けが成立しないだろ

:自分から負けに行く奴はいないだろw




 なぜか僕が勝つと思われてるようだった。

 そんなに僕、料理できるように見えるのだろうか?

 ユキくんのアバターでもあまり料理ができそうには見えない。


 ううん、僕がそう見えないだけで意外と料理ができるように思われてるのかも。




【コメント】

:三期生で一番料理が出来そうなのはココママだけどな

:ユイちゃんもなかなか作ってくれなさそうだけど、うまそうだよな

羊沢ユイ🔧:うみゅー、めんどう

:相変わらずで草




カグラ:『も、もう次行くわよ! えっと[カグラ様のリアルの友達は何人いますか?]』


『……』




 ぼっちの僕たちには中々つらい質問が来てしまった。

 思わず言葉に詰まってしまう。




カグラ:『ゼロよ! 文句あるの?」


『えと……、そ、その……、僕もゼロだったから……』




【コメント】

:これは質問主が悪いw

:トラウマを刺すw

真心ココネ🔧:私は友達だからね

:カグラ様には親衛隊もついてるからな




『と、とりあえず次の質問に行こう。あと、今は僕たち、友達だからね。ゼロじゃない安心してね』


カグラ:『そ、そうよね。ありがとう、ユキ。それじゃあ次で最後にしましょうか。[カルマ様、こんばんは]って、私は神宮寺カグラよ! 何で業を背負ってる様な名前になってるのよ!』


『えっと……、その……あははっ……』


カグラ:『ユキも何か言いなさいよ!? まるで私がその通り見たいでしょ!?』


『大丈夫だよ。僕はカルマさんがどんな業を背負ってても友達でいるからね』


カグラ:『だから、私はカグラよ! カ・グ・ラ!』


『わ、わざとだよ、わざと。だから叩かないで……』




【コメント】

:俺たちは何を見せられてるんだ……

:ユキくん草

:ぺちぺち

:ユキくん楽しそうw





カグラ:『さて、気を取り直して――。それじゃあ、そろそろ今日の料理対決のルールを説明をさせてもらうわよ。まずはこの後、お互いの枠で料理を作るわよ。時間は三十分。交互に作らせてもらうわ』


『概要欄にお互いの放送枠を書いておくので、見にきてね』


カグラ:『書いたのは私よ。まぁ、やる順番はクジで決めるわ。それはこれからするけど、料理を作ってる間は別の部屋で待機。食べる時までお互いの料理は見ないでいくわ』


『見たかったけど仕方ないね。あとでアーカイブで見るよ』


カグラ:『それで最後は私の枠で食事会と結果発表ね。大まかに流れはこんなところよ。それで負けた方には罰ゲームね』


『う、うん……、手加減してね……』


カグラ:『ふふふっ、楽しみにしてるといいわよ。何をしたらユキが悦んでくれるか真剣に考えてきたから』


『か、漢字が違う気がするけど、ぼ、僕もカグラさんが喜んでくれるものを考えてきてあるよ』


カグラ:『それは楽しみね。まぁ、それが披露されることはないけどね。それで結果発表は私たちの食事レポートと完成した料理を見てもらって、リスナーの人に決めてもらうわ。それが一番公平だからね』


『あっ、そうなんだ……』



――まぁ、僕に勝ち目はないんだけどね。



 見た目はカップ麺。

 味はカップ麺。

 その名はカップ麺。



――うん、それでどうやっても勝てるはずないよね。




【コメント】

:俺たちも食べたいぞ! ユキくんの料理

:カグラ様が羨ましい

:ユキくんに一票だ

:俺もユキくんだ




『ちょ、ちょっと待って!? まだ料理を作ってないからね!? それに僕、本当に苦手だからその……、ちゃんと見て決めて欲しいな……』


カグラ:『くっ……、これが人気の秘訣なのね……。私にはできないわね……』




 カグラが隣で悔しそうに口を噛みしめていた。

 なぜ悔しがってるのかはわからない。そもそも僕は普通の態度をしているだけなのに……。




『と、とりあえずクジをするよ』




 カグラと二人クジを引く。

 その結果、僕が先に料理をすることになった。


 カップ麺だと伸びちゃうけどいいのかな……?


 そんなことを思いながら料理の準備を始めていた。

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