第2話:伝説の初配信
『《雪城ユキ初配信》初めまして、拾ってくださいね《シロルーム三期生/新人さん》』
8,421人が待機中 20XX/05/05 21:30に公開予定
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【コメント】
:いよいよ次で最後か……
:俺、この子が一番好みだな
:おまおれ
:わくわく
:段ボールだけの画面、斬新だな
:そういえばヘッダーも段ボールだけだもんな
:恥ずかしがりなのかな?
:飼い主王に俺はなる!!
:待て、拾うのは俺だ!
:すでに8000人超えか。下手をすると1万人超えるんじゃないか?
:オラ、わくわくがとまんねーぞ!
:あれっ? 開始時間過ぎてないか?
時間は超え、すでに放送中になっているにも拘わらず画面は何も変わらなかった。
中央に段ボールがポツンと置かれているだけ。そこから動く気配がない。
それもそのはずで、僕は必死にアバターを動かそうとしているのだが、なぜか動かなかった。
『あ、あれっ? アバターが動かないよ? ど、どうするんだっけ??』
【コメント】
:中性的だな
:声好み
:事故?
:慌ててるのかわいい
:誰か拾いに行ってやれ
:よし、俺が
:待て、俺が行く
:おまわりさん、こちらです
「はぁ……、はぁ……、こ、これでいいのかな?」
コメ欄が勝手に盛り上がっている間に、ようやくアバターを動かすことができた。
しかし、既に息は荒くなっていた。
そして、アバターが動き出したことでゆっくり段ボールからフードについた犬の耳が見えてくる。
【コメント】
:あっ、出てきた
:かわいい
:持ち帰りたい
:おまわりさん、はやく!
――つ、次は何をするんだったかな。
最初からミスをしてしまって、頭が真っ白になってしまう。
何かを喋ろうとしてもすぐに言葉に詰まってしまう。
『あっ、えっ、そ、その……』
段ボールからようやくチラッと顔を覗かせる。
しかし、すぐに段ボールの中へと戻ってしまった。
『あ、あれっ? か、顔が出てこない……?』
僕としては普通に顔を出したはずなのに、何故か顔が動かずに定位置のままだった。
【コメント】
:一瞬顔が見えた
:警戒してるな
:怖くないよ、出ておいで
:通報しました
:落ち着いて
真心ココネ🔧:大丈夫。落ち着いて
羊沢ユイ🔧:カメラの位置大丈夫?
テンパってしまい、訳が分からなくなっているとココネがコメントでフォローを入れてくれる。
『あっ……、ココネ……ユイ……ありがとう。か、カメラだね……』
カメラを少し調整するとようやく顔が動くようになる。
【コメント】
:ココネちゃん、ママみたい
:やっぱりママだったんだ
:ココママ、わんちゃんが困ってるよ
:ロリママw
真心ココネ🔧:ま、ママじゃないよ!? とりあえず先に自己紹介しよっか?
ココネのコメントが流れてくる。
それを見てやることを思い出していた。
『あっ、そうだった。自己紹介……。ぼ、僕は
喋りながらゆっくりと顔を出す。すると、コメントが更に爆発をしていた。
【コメント】
:あっ、ちょっと顔出てきた
:好み
:僕っこキタァァァァァ
ピコッ!
そんな配信途中に何かの通知音が鳴る。
それと同時にキャスコードの画面が少し映る。
マネ :[ユキくん、プロフィール貼って]
『あっ、そっか……。プロフィールを張らないと……』
ようやく次の行動を思い出す。
自分のミスに気づかずに……。
【コメント】
:チャット画面見えてて草
:担当から指示はいりましたw
:ユキくん、かわいい
『えっ、み、見えてる!?!?』
コメ欄でキャスコードの画面が見えていることを知り、大慌てで消そうとする。
ピコッ、ピコッ。
『ぴぃぁぁぁ……』
なんとか消そうとしているときに更に追い打ちをかけるようにチャットの通知が来る。
マネ :[チャット画面消して]
ココネ:[大丈夫? 消し方分かる?]
消そうとしているのにその間に通知が来るので、余計画面に表示されてしまう。
そんな悪循環の中、四苦八苦してようやくキャスコードの画面を消すことができた。
『はぁ……はぁ……、や、やったよ……。消せたよ……』
【コメント】
:息エロい
:おめでとう
:自己紹介をせずに十分経過
:ユキくん……可愛すぎる
:まさかカグラ様を超えるポンコツくんが出てくるとは
:さすがシロルーム。トリは隠し球か
『自己……紹介? そ、そうだった。えとえと……』
大慌てで今度は自己紹介を貼ろうとする。
すると、そのタイミングでココネからチャットが来る。
ココネ🔧:[困ってる? 私、コラボしようか?]
『う、うん。お、お願い……』
テンパるあまり自己紹介をする前からコラボをする、という今までにない伝説を作ることになってしまった。
それでもせっかく配信に来てくれた人たちをがっかりさせるよりは良いよね?
思えば、初めての打ち合わせからココネも含めて三期生のみんなにはずっと助けられっぱなしで感謝してもしたりない程だった。
また彼女たちが困った時には力にならないと。それが男らしさ……だよね。
ただ、そんな状況になることが想像できないけど。
◇◆◇
それは三期生で初めて通話をしたとき。
僕が男だということがバレないか不安に思い、そわそわとしていた。
――もうすぐメンバー全員での通話……。
それを考えると胃がズキズキと痛む。
――熱が出たとかで通話に出られないとか、できないかな。
そんなことを考えた瞬間にピコッと通知音がなる。
マネ :[熱でも出てくださいね]
ユキ :[マネさんはエスパーなの!?]
マネ :[ユキくんの性格を考えると簡単に分かりますよ]
まるで盗聴でもされているのかと疑いたくなるほどタイミングの良い連絡。
思わず周りを見渡してしまう。
マネ :[別に盗撮とか盗聴はしてませんよ]
ユキ :[ぼ、ぼ、僕はそんなこと考えてませんよ]
震える手つきでチャットを返す。
マネ :[それなら大丈夫ですね。では、通話を開始しますので、とってくださいね]
舞からその連絡が届いた次のタイミングで、通知音が鳴り響いていた。
――出たくない……。でも、釘を刺されたから出ないとだめだよね。
しばらく迷ったあと、十秒ほど経って覚悟を決める。
通話ボタンを押すと、知らない声の女性が大声を上げる。
カグラ:『やっときたの!? 遅いわよ』
『っ!?』
いきなりの大声に思わず怯んでしまう。
通話アプリの使用上、誰が話しているのかアイコンでわかるのはいい。
それぞれがアバターで表示されてる。マネージャーの舞だけはなぜか眼鏡だけだったが。
とにかく、同期四人。
僕を除いて周りは全員女子。
これで緊張するな、というほうが無理な要望だった。
ココネ:『ダメだよ、カグラちゃん。ユキくんは臆病な子だから優しく……、優しくでしょ?』
カグラ:『べ、別に怒ってるわけじゃないわよ。ただ、何かあったら心配でしょ』
更に別の女性の声が聞こえてくる。
そして、カグラはどうやら心配してくれたようだ。
――僕が男であることについては何も触れてこないんだな。
案外声だけでは判断できないのかもしれない。
――確かにずっと可愛い声とか言われ続けてた。声変わりもしたはずなのに……。
『あっ……、えっとその……、ごめんなさい。その……遅れてしまって……』
ココネ:『大丈夫ですよ、これから始めるところですから』
ココネの優しい声が聞こえてくる。
それにどこかほっとしてしていた。
マネ :『はい、それじゃあ早速開始しましょうか。今回は三期生の交流も兼ねてます。コラボもしてもらいますので、仲良くしてくださいね。では、まずは自己紹介からしましょう。私が三期生の担当である湯切舞です。それで次は……』
ココネ:『私から行きますね。三期生、
カグラ:『まぁ、気が向いたらね』
ユイ :『一緒に睡眠枠をしよぉ……』
『ぼ、僕はちょっと……』
ココネ:『もう、三人ともそんなことを言って……。本当はコラボしたいんでしょ。このっ、このっ』
カグラ:『や、やめなさい。そ、それよりも次は私。
マネ :『下手な物好きってこのことを言うんだって、最終面接では笑いが上がったのよね』
カグラ:『よ、余計なことを言わないで。と、とにかく料理で困ったことがあったら私に聞くといいわ』
『えっ、め、面接……?』
マネ :『えぇ、役員全員の前で面接よ』
『あれっ? ぼ、僕は……?』
マネ :『まぁ、ユキくんの場合は特殊でしたからね。そうしないとユキくん、逃げてましたし?』
――うぅ、本当に手玉に取るようにわかられてるなぁ……。
確かに完全に断っていたもんな。
母さんと担当さんががっつり推してこなかったら頷くことはなかった。
実際に数日後、契約をしたことを後悔していた。
ただ、もう逃げられないから、と諦めにも似た境地になっていたのだ。
言葉を発せずに同期の自己紹介を聞いていると、いつのまにか残り二人になっていた。
――緊張してきたよ。このまま電池がなくなったとかで、通話を消したらダメかな……。
マネ :『ユキくん、PCは電源繋いでいますので電池はなくなりませんよ?』
『べ、別にそんな考えていないですよ……。僕の考えを読まないで……』
マネ :『本当に分かりやすいですね。次はユイさん、お願いします』
僕と同じようにさっきからあまり声を発していないユイにバトンが回される。
ユイ :『うにゅー……、眠いよ……』
とろけそうな声の女の子が、あくび混じりの声を出してくる。
ココネ:『ほらっ、ユイ、起きて。みんなで通話するって言ってたでしょ。自己紹介は?』
ユイ :『
――最後間延びした言い方になってたのは寝てしまったから……じゃないよね?
ただ、僕の前に変わったユイが自己紹介してくれたおかげで、少しだけ緊張がほどけていた。
マネ :『じゃあ最後はユキくん、お願いね』
『…………』
緊張が解けてきたなんて嘘だった。名前を言われた瞬間に忘れようとしていた緊張感が戻ってきて、足が震え、目の前が真っ白になり、口がパクパクと動いていた。
しかし、言葉が出てくることはない。
ココネ:『大丈夫ですよ、ゆっくりで』
カグラ:『えぇ、別に何か減るわけじゃないもんね』
ユイ :『うにゅ……、寝て待ってるよ……』
みんなそれぞれ優しい言葉を掛けてくれる。
同期三人の声に思わず目からは涙がこぼれそうになる。
――ここで頑張らないと男が廃るよね?
覚悟を決めると大きく深呼吸をして声を発する。
『ぼ、僕はゆ、
お辞儀をするタイミングでモニターに頭をぶつけてしまう。
すると、その声を聞いた同期のメンバーから笑い声が上がってくる。
ココネ:『あははっ、よろしくね。大丈夫、痛くない?』
カグラ:『まぁ、家事が教えて欲しかったらいつでもコラボしてあげるわよ』
ユイ :『一緒にゲームしよぉ』
同期が優しい。それだけで彼女らとなら一緒にやっていけるという気持ちにさせられる。
――迷惑をかけないように頑張って行こう。
心の中でそう固く決意していた。
◇◆◇
そんな彼女たちが今回も助けてくれようとしている。
いつかは彼女たちにも恩返しをしたいな。と考えながらココネとのコラボを承認していた。
そして、隣にココネの姿を表示させる。それだけでずいぶんと頼もしく感じてしまう。
ココネ:『どうもー。さっきぶりのみんなも、初めてのみんなもココばんわー。シロルーム三期生。まとめ役。真心ココネでーす!』
配信画面には、ろくに姿を現していない
一体何の配信なのかわからなくなってくる。
【コメント】
:おっ、もうコラボか?
:こんなこと、前代未聞じゃないか?
:伝説を作った犬……いや、段ボールか
:もうユキくんの本体が段ボールに見えてきた
『ぼ、僕は段ボールじゃないですよ……』
ココネ:『それなら早く出てきてくださいねっ』
ココネに促されるまま(動きは引っ張り出すような感じで)、顔をようやくリスナーたちに見せる。
ココネ:『はい、ということでようやく姿が出てきましたー。こちらが雪城ユキくん、本体です。僕っこ、僕っこです!? 呼び方はユキくん、ユキちゃん、ユキユキ、段ボールのどれでもオッケーです!』
『ちょ、ちょっと……、段ボールはその……』
ココネ:『それなら次はちゃんと早く段ボールから出てきてくださいねっ』
『わ、わかったよ。頑張るよ、ココママ……』
ココネ:『ま、ママじゃない……。ううん、ユキくんのママならいいかな』
『えっ!?』
【コメント】
:ココママがママと認めたw
:驚きのユキくんw
:なんだろう、この空間……
:自己紹介も終わってないのに……
:ココユキw
ココネ:『と、とりあえず次に行きますよ。ほらっ、まずは自己紹介! 貼るんですよね? できますか?』
『う、うん、大丈夫……』
舞からもらったプロフィールを貼り付ける。
すると、それをココネが読んでくれる。
ココネ:『えっと、まず名前は雪城ユキくんですね。とってもかわいい子ですよね。すごく好きです』
『あ、ありがとうございま……す……』
さすがに面と向かって『好き』と言われると照れてしまう。
【コメント】
:尊すぎて死ぬ
:てぇてぇ
:死ぬな、俺
:てぇてぇわーるど……
コメントの勢いが加速している。
もうほとんど目で追い切れない。
ココネ:『次いきますね。
『うん、こんな軟弱な体じゃなくてちょっとは鍛えないとって――。自分に自信を持てたら友達もできるかなって思ってるんだ……』
見た目が男の娘、ということもあって女子からは妹扱いされる上に男子からは露骨に避けられる。
そのどちらも躱していたらいつの間にかぼっちになっていた。
もっと男らしくなれば……と考えたことは一度や二度では済まなかった。
ココネ:『そんなことないですよぉ。ほらっ、私たちもう友達ですよね?』
『えっ、ほ、本当に? 本当にいいの?』
ココネ:『もちろんですよー』
『あ、ありがとう……。僕、友達ができたのは初めてだよ……。ぐすっ……』
嬉しさのあまり、目から涙が流れてくる。
【コメント】
:全俺が泣いた
:ユキくん、俺たちも友達だぞー!
:通報しました
:てぇてぇが加速した
:ユキくんガチ泣き。よかったね……
神宮寺カグラ🔧:私も友達になってもいいわよ?
羊沢ユイ🔧:ゆいは友達?
『あっ、二人とも来てくれたんだ……。ありがとう……』
ココネ:『それより応えてあげたら?』
『そ、そうだね。も、もちろん、二人がよかったら……』
【コメント】
神宮寺カグラ🔧:!? 聞いたわよ。もう忘れないからね
羊沢ユイ🔧:うにゅ……時間、大丈夫?
:カグラ様、ガチで喜んでいて草
:一気に三人も友達が
:ユキくんが俺たちのはるか先へ行ってしまった
:自己紹介の途中で二十分経過
『二十分!? だ、大丈夫かな?』
ココネ:『もちろん大丈夫です。だって、すでに担当さんには連絡を付けてありますから』
『ふぇ?』
首を傾げるとキャスコードを見てみる。
するとそこに担当さんからのメッセージが残されていた。
マネ :『延長OKです。代わりに伝説を作って下さいね』
『え、延長ぉぉぉ……!?』
【コメント】
:おっ?
:マジか!?
:シロルーム初じゃないか? 初配信延長
:俺たちは伝説に立ち会うのか
:って、気づいたら視聴者1万を超えてるじゃないか!?
:視聴者だけじゃないな。お気に入りも余裕で1万を超えてやがる
『ちょ、ちょっと待って。延長しても、何もできないし、そ、それにみんな、本当にいいの?』
【コメント】
:もちろんだ
:そのためにここにいるんだからな
:初配信延長てぇてぇ伝説と聞いて
:よし、俺たちも盛り上がるぞ!
『みんな……、うん、ありがとう』
ココネ:『うんうん、よかったね。それじゃあ次にいってみようかー。自己紹介はまだ終わってないよ』
『あ、あれっ? でも僕が教えてもらった設定はそれだけ……』
ココネ:『えっと、挨拶は『わふー』で、語尾は『わふぅ』? 出来れば可愛い感じで言ってくれると担当としては嬉しいな……、と書いてありますね』
『そ、それは担当さんの願望でしょ!?』
ココネ:『でも私も聞きたいなぁ。それに挨拶は必要でしょ?』
『うぐっ……』
ココネ:『ここは試しに言ってみてリスナーの人に決めてもらうのはどうかな?』
『わ、わかったよ。えっと……、わ、わふわふ、わふぅ……』
【コメント】
:あれっ、ここは天国? 尊死した
:可愛すぎる
:ココママてぇてぇ
:挨拶は決まりだね
『え、ほ、本当にこれでやるの? ……わふぅ』
ココネ:『うーん、語尾はなかなか厳しそうね。とりあえず挨拶だけで良さそうかな』
『ご、ごめん……』
ココネ:『気にしなくていいよ。それじゃあそろそろ決めるものを決めて行こうか。挨拶は決まったし、後はタグだね』
『そ、そうか……。タグも決めないとダメだったんだね……』
【コメント】
:忘れてたな
:ココママがいて良かった
:ユキくん……草
:ここでユキくんを補充できると聞いて
『えっと、決めるのは生放送のタグとイラスト、リスナーさんたちの呼び方、だったよね』
ココネ:『そうね。マシュマロとかで募集してないのよね?』
マシュマロとは匿名でコメントや感想、質問等を送れるカタッターと連動したサービスの一つだった。
『う、うん、まだカタッターだけでいっぱいいっぱいで……』
ココネ:『確かに今のユキくんを見ててもよくわかるね』
『そ、そんなにわかるかな……』
【コメント】
:わかる
:かわいかったよ
:ココユキ助かる
――評価は概ね良い? ようなので、これで良かったのだろう。
ココネ:『それならここで募集しましょうか。まずは皆さんの呼び方から……』
『よ、よろしく……』
【コメント】
:ユキ友
:飼い主
:オーナー
:犬好き
ぽんぽんといくつかの案が出てくる。
ただそれと同時に流れていく速度もかなり早い。
『えっと、あっと……、ど、どれにしたら……』
ココネ:『私は犬好きさんが好きですね。でも飼い主はダメ。だってユキくんの飼い主は私ですから』
『ちょ、な、何を言ってるの!?』
【コメント】
:公式飼い主宣言きましたー
:ユキくん飼いたかった俺、涙目
神宮寺カグラ🔧:待て! 親は私だ!
羊沢ユイ🔧:ゆいもゆいも。ユキくん、飼いたいな……
『ふ、二人とも。何を言ってるの!?』
【コメント】
:【悲報】三期生、ユキくんを巡って血で血を洗う飼い主戦争へ
:カグラ様と組み合わせるのはまずいだろう。ポンコツが加速する
:ユキユイはほんわかしそう
:ココママは飼い主というよりママだな
:ママ欲しい
:ココママは俺のものだ
違う話へと流れていくので取りあえずココネのおすすめで選んでしまう。
『じゃ、じゃあ[犬好きさん]で。あと、ココママは僕のママなのであげません』
ココネ:『ユキくんから告白されちゃった……』
ココネが照れた演技をする。
それで自分で何を言ってしまったかわかり、顔を真っ赤にして慌ててしまう。
『そ、その、い、今のは告白というわけじゃなくて、その……あの……、ふきゅぅ……』
ココネ:『あっ、ゆ、ユキくん、しっかりして……』
恥ずかしさのあまり目を回す。
その結果、段ボールの下に顔を隠してしまい、垂れ下がった耳フードだけが見えている状態になる。
その姿にコメントはさらに加速していく。
【コメント】
:これって初配信だよな?
:初々しいな
:可愛すぎる
:ユキくん、しっかり
:ココユキが尊すぎる
神宮寺カグラ🔧:ま、負けた……
羊沢ユイ🔧:一緒に睡眠枠したかったのに……
ココネ:『しばらくユキくんが戻ってきそうにないので、先に他のタグを決めちゃいたいと思いますー。次は生放送配信タグです』
場を繋ごうとココネが進行してくれる。
その間も心臓がバクバクとなり、口をただパクパクさせていた。
【コメント】
:生雪
:ユキくん観察
:犬拾いました
ココネ:『[犬拾いました]、いいですね。じゃあ、それで次はイラストタグを……』
『待って待って! か、勝手に決めて……』
ゆっくり顔を出して慌てて言う。
ココネ:『でも、犬好きさんたちももうそのつもりよ』
【コメント】
:【悲報】ユキくん寝てるうちに配信タグが決められる
:犬拾いました、か。チェックしておかないと
:俺、道端に犬が捨てられてたらユキくんだと思って育てるんだ……
『うっ……、わ、わかったよ。それじゃあ配信タグは[犬拾いました]で。次はイラストのタグだよ』
【コメント】
:ユキくん観察日記
:今日のわんこ
:犬写真
:ココユキ日記
ココネ:『ちょっと、私が入ってますよ。ユキくんはどれがいいですか?』
どれもろくなものがない。
しかし、犬好きさんたちが出してくれた案なので、一蹴しないで真剣に考える。
『そ、その……、犬写真……かな』
ココネ:『はい、三人目の人、当選です! おめでとうございます!』
【コメント】
:おめでとー
:おめ
:えっ、マジw
:おめー
:おめおめー
『こ、これで全部決めたよね?』
ココネ:『そうね。推しのマークは犬と足跡だもんね。あっ、そういえばユキくん、カタッターで今日の配信開始を呟いてました? 私見ませんでしたけど……』
『あっ!? し、してない。いってくる……』
ココネ:『うん、いってらっしゃーい』
大慌てでカタッターに放送開始の呟きをする。
雪城ユキ@シロルーム三期生 @yuki_yukishiro 今
21時半から三十分、初配信を行います。是非見にきてくださいね。
時刻は既に22時。
延長がなかったら既に終わっている時間でもある。
つまりはただでさえお祭りムードになりつつある伝説の放送に更なる燃料を投下することに他ならなかった。
【コメント】
:放送終了のタイミングで開始告知をするの草
:w
:www
:草生えすぎと思ったけど、草以外なかった
:今来たけど、もう終わる?
:草草
『あっ、えっと、ち、違います。延長。延長することになりましたから』
ココネ:『今来た人も安心してユキくんを愛でていってくださいね』
『ぼ、僕の体力が持たないよ……』
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