第16話あいつ、とんでもない使い方しやがった
翌日、俺は再び『ラーンベルト学園』に来て、その正門近くに張り出されていたクラス分けを見ていた。
周りにも沢山の学生がいて、かなり騒ついている。俺も正門に着いてから五分も使ってやっと自分のクラスを見れた所だ。
そして特徴的なのが、友達とクラスが一緒なのかどうかに関わらず、ほぼ全員が一喜一憂していた事だ。まあ、それもそのはずだな、だってクラスによってこれからの学園生活が薔薇色にも泥色にもなるんだから。
『ラーンベルト学園』に限らず、この国のすべての魔法師養成学校はある特殊なクラス分け方法を行なっている。
それは、実力による徹底的な区別化だ。クラスは上からS、A、B、C、D、E、Fとあり、今言った順番で強い者が入るクラスから弱い者が入るクラスまで分けられる。
どうやら区別する事によって上のクラスにいる者は下に落ちないように励み、下の方にいる者は上を目指すようにしているようだけど、ハッキリ言って逆効果だろこれ。
これ絶対あれだろ、上の方のクラスは優越感に浸って下の方のクラスは劣等感に浸るやつだろ。誰だよこの制度考えた奴、完全にアホだな。
まあいいや、とりあえず俺はレグリアの言った通りFクラスになったわけだし、Fクラスの集合場所に行くか。
入学式のために用意された講堂に向かった俺は、講堂を見た瞬間度肝を抜かれた。
「でっっっっっっっっか!!!!」
そう、ただただ大きいのだ。実技試験をやった所も充分広かったのにその十倍は広いぞ。しかも二階は無いからただただ広いだけっていうね。いつも何に使ってんだよここ。
そんな講堂の広さに驚きながらも、俺はFクラスに指定された席に座る。そして座った途端小さな笑い声が耳に入った。
「くくっ、おいあいつもFクラスらしいぞ」
「ははっ、才能が無くて可愛そうだな〜」
「可愛そうなんて思っても無いくせにそんなデタラメ言うなよ、くくっ」
「それにしてもあいつ剣なんか持ってねえか?」
「そりゃあれだろ、出来損ないだからだろ」
「くくっ、それもそうだな」
とまあ完全に悪口だ。しかも新入生だけじゃ無くて在校生の方からも聞こえてくる。
ええ、Fクラスってそんな不名誉なの。正直入れただけでも嬉しかったんだけど。
……ていうか俺以外のFクラスの奴等ほとんどが意気消沈してるし。こりゃ想像以上に差別意識が酷いな。
『静寂にお願いいたします』
しばらくすると、女性のアナウンスが講堂に響き渡った。声を大きくする魔導具を使ってのアナウンスだ。前の方を見てみると、そこには俺と模擬戦をしたステファニー先生が立っていた。
そして先生の声に反応するように、辺りは静かになった。
『ありがとうございます、それではこれより第六十二回『ラーンベルト学園』入学式を始めます』
入学式が始まり、在校生からの挨拶、来賓紹介などがあり、あと項目は新入生代表挨拶と学園長による挨拶だけとなった。
『続きまして、新入生代表挨拶、代表、イリーネ・ユグドラシル』
「はい!」
返事が聞こえてきた方向を見ると、イリーネが席から立った。恐らく新入生代表だけ事前に呼び出されて練習させられたんだろうな〜。ご苦労様です。
立ち上がったイリーネはそのまま舞台の上に行き、真ん中に立った。そして新入生代表挨拶を始める。
「暖かな春の訪れと共に私たちは『ラーンベルト学園』の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行なっていただき大変感謝しています。リークレッド王国でも有数の名門校であるこの学園に入学出来、私は大変嬉しいです。この世の中は魔素量が実力の全てを語ると言われています。それは事実だと私も思います」
魔素量が実力の全てを語る、その言葉を聞いて、当然だという顔をしている上のクラスに比べ、魔素量の少ない下のクラスの面々は嫌な顔をした、それもそうだ。簡単に言えば魔素量の無い彼らはこれから伸びる事も無いと言われたも同然なのだから。
「ただ、私は魔素量がすべてとは思いません。魔法とは威力だけではなくいかに練習し、工夫し、相手を騙すかという所が大きく左右すると思います。なので今回下のクラスになってしまった方々も、私と一緒に切磋琢磨してくださると光栄です。これで新入生代表挨拶を終えます」
《パチパチパチパチ》
イリーネの挨拶にクラス問わずほぼすべての生徒から拍手が起こった。上のクラスを羨んでいるはずの下のクラスからも拍手が起こったのは、それほど彼女の挨拶が心に響いたのだろう。
挨拶を終えたイリーネはそのまま舞台を降りて、自分の席に戻る。
『ありがとうございます。では、続きまして、学園長による挨拶です。レグリア先生、よろしくお願いいたします』
「初めまして皆さん。私がここの学園長、レグリア・スイメです。よろしくお願いします」
「「「「!?」」」」
ステファニー先生がそう言うと、舞台の方からいきなり声が聞こえ、新入生のほぼ全員がビックリした。それもそうだ。なにせつい先ほどまでは誰もおらず、舞台の上に急にレグリアが現れたのだから。
ていうか、うわ〜、固有魔術を超無駄な事に使ったよレグリアの奴。
「ああ、まあ、普通に驚きますよね。今僕がどうやって舞台の上に現れたのかは後でちゃんと説明するから安心してください。まずは、新入生の皆さんご入学おめでとうございます。この学園に入学した貴方達にはこれから華やかな学園生活が待っていると思いますので、是非楽しんでください。さて、その華やかな学園生活なんですけど、君達には一つ気に留めておいてもらいたい事があります。
それは『魔技会』についてです。『魔技会』とは簡単に言えば自分の実力を試す大会で、色んな学園が参加するこの国の、いや、この世界の一大行事です。主に個人戦となっているんですけど、そこでいい成績を残す事が将来王の近衛隊になる最も近い道でもあります。
栄えある君達には将来いい職業についてもらいたいですからね。ぜひ『魔技会』に向けて頑張ってください。
それでは、次は皆が気になっているであろう僕が舞台の上に現れた方法について説明しましょうか。種は簡単ですよ、僕は『固有魔術』を使ったんですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます