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「みつけた」
「あ」
「みつけた。みつけたあ」
よれよれと、倒れ込む彼女。とっさに支えた。
「メールもお問い合わせ欄も変わってるし。どこ行ったかわかんないし。ねえ。なんで。わたし。探したのに」
「いや、殺せそうにないなと思ったから、契約破棄を」
「なにそれ」
「お金は置いといたでしょ。それで勘弁してくれ。俺にあなたは殺せない。殺せなかった」
「なんのはなし」
「最初から、しんでいたあなたを。一度生き返らせて、その上で、殺そうと思った。でも、生き返らせたら、なんか。殺すのが惜しくなっちゃって」
「わたし。そんな昔のこと覚えてない」
「都合がいいな」
「いかないでよ。わたし。あなたがいないと」
「俺がいなくても、あなたは前の生活に戻るだけだよ。携行保存食と、シャワーと、アイドル。それがあなたの生きるカタチだ」
「しらない」
「駄々をこねない。終わったんだから。終わり。俺のことは忘れて、アイドルでもやってなさい」
「むり」
「なぜ」
「みんなが。わたしの声に、何を重ねていたか。わかっちゃった。わたし。もう。人のための歌を、歌えない。アイドルとしての商品価値が。ない」
「そんなことないでしょ」
「わたし。あなたしか。見えない」
「あっそ」
「ねえ」
「俺は、別にあなたでなくともいい。もともと、人を好きになりやすいタイプなんだ」
「じゃあ、何で殺し屋なんてやってるの」
「それは」
「殺してほしいんじゃ、ないの。自分を」
「ちがう。いや、違わないか。俺の心は鋼で出来てて、しねないんだ。だから、他の人間を殺して生きてる。それだけ」
「うそ」
「うそじゃない」
「わたし。たくさんいやなことがあって。もう、思い出せないけど。気付いたらアイドルやってた。そんな人生だった。昔のことが思い出せないの。記憶がないの。なくなっちゃうの。すべて。あなたのこと。忘れたくない」
「俺には好都合だ。忘れてくれれば嬉しいよ。そろそろ離れてくれ」
腕を。振り払った。
「わたしの、こと。好きじゃ、なかっ、た?」
泣きはじめる。
「嫌いだよ。殺せなかったし。顔も見たくない」
「そっ、か」
「じゃあな」
「うん。ごめんなさい」
彼女は。
いずれ、死ぬのだろう。
人には、それぞれ、カタチがある。生きるカタチ。死ぬカタチ。そのどれもが、いびつで、不揃いだった。自分もその一つ。
だからこそ、寄り集まって、足りないカタチを埋めようとする。彼女と自分のカタチは。交わらない。
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