十四日目・後夜『戦いの幕開け』
ジャッカルは吹き飛ばされるが、タスキエルが受け止める。
「リーフィア先生。敵が……」
「ここは私が」
リーフィアはメタルロードなどと名乗る男へと剣を振るう。だがメタルロードの機械仕掛けの腕に防がれ、いとも容易く弾き飛ばされる。
「これが各国の精鋭たちか」
リーフィアは腕が身震いを起こしているのを見て、動揺する。
「さてと、王宮に入らせてもらうぞ」
メタルロードが一歩足を進めた瞬間、機械仕掛けの足は宙へと舞う。それとともに、メタルロードの腕、そして首が宙へと斬り飛ばされる。
「ロンギヌス!」
メタルロードが最後に瞳に映したのは、槍を持ったロンギヌスの姿であった。
「リーフィア。王宮は私に任せろ。お前たちは前線で敵を撃て。これは命令だ」
「だが……」
「この戦場での指揮権は私にある。逆らうことは許さない」
リーフィアを言葉でねじ伏せ、ロンギヌスは王宮周辺を彷徨く敵を一掃する。
リーフィアは仕方なく、サリエルたち未熟な勇者たちを連れて街の中へと入っていく。
「お前たち。戦いは避けろ。またあの場所へ帰ってくることだけを考えろ。いいか?」
「「「はい」」」
返事はしたものの、サリエルたちは初めての戦場に心臓の鼓動を高鳴らせていた。
周囲を警戒してはいるものの、建物の死角から襲ってきたらと考えるだけで、汗は尋常ではないほどに流れている。
「くそ……。なんでこんなことに」
リーフィアは苛立ちながらも、剣を構えて周囲へ警戒を配る。
「上だ」
リーフィアへとローブで身を包んだ男が剣を振るう。すかさづリーフィアも剣で応えるが、相手の剣捌きにリーフィアは体勢を崩した。その瞬間を見計らい、建物の上に潜んでいたもう一人のローブで身を包んだ者が銃弾を放つ。
「爆発式か!?」
銃弾は地面へ着弾すると爆発し、リーフィアとサリエルたちを引き離した。爆炎で二手に分断されたリーフィアとサリエルたちは、焦りと動揺を隠せない。
リーフィアは爆炎の中を駆けてサリエルたちのもとへと行こうとするも、ローブに身を包んだ男はリーフィアを足止めする。
「邪魔だ」
「ここから先は行かせない」
反対側のサリエルたちは、既に帰路を敵に塞がれ足を止めていた。
「これから私が先陣をきる。私の後ろを離れるなよ」
サリエルは槍を構え、唯一敵がいなかった道を通って、遠回りではあるものの王宮へと戻ろうとしていた。
敵を見つけてはいない道を行き、また敵を見つけてはいない道を進む。そしていつの間にか、王宮裏の湖に前へと出ていた。
「戻った……」
「よくここまで来たな。サリエル」
一人の天使がそこへと舞い降りた。
その天使を、サリエルは知っていた。
「どうしてここに……!ドクエル」
そこにいたのは、紫色の髪に腰から細長い尻尾を生やした男であった。彼は二本の剣を構え、それを優雅に構えていた。
「サリエル。これから俺は
「ある者?誰だ?」
「言うかよ。それにお前らが知っているわけないだろ」
サリエルは仲間の動きを見つつ、ドクエルと話をしている。
「なあ。そちらに行けば私たちの命は保証されるのか?」
「当然だ。だがな、もしおとなしくついてこないというのなら、一人くらい死ぬことになる。どうする?」
サリエルは頭の整理がついていないが、ひとまず仲間たちの方へと振り向いた。
(ルリエル、タスキエルはついてくれるだろう。だが、問題はジャッカルとピエロ。そもそもピエロはこの国の何かと、というよりかは勇者機関などというものと関わりがあるだろう。ならば、ピエロをおいてジャッカルを連れ出す。ドーベルマンには悪いが、しばらく王宮で寝ていてもらうしか……)
あれこれ考えている内に、ロンギヌスがこちらに気づいて槍を構えて駆け寄ってくる。
「サリエル。速く決めろ」
「私は……私たちを連れていけ」
「了解」
ドクエルは何かを唱えると、地面にはサリエルたちを囲むように魔方陣が描かれる。そして純白の光とともに、サリエルたちは姿を消した。
そこにはロンギヌス以外誰もおらず、ロンギヌスは驚嘆する。
「これは……上位の天使にしか使えない魔法……転移。なるほど。やはり天使が絡んできたか。全く、厄介だ」
そしてその数分後、なぜかルナ王国に侵攻していた兵は一斉に退却し始めた。その理由として挙げられるのは、恐らくルナ王国直属組織、月光騎士団が帰還したからであろう。
多くの被害を出したその戦いであったが、決着のつかないまま終わりを告げようとしていた。
ーーとある国の玉座にて
そこに座る一人の少年は、不敵な笑みを浮かべて呟いた。
「次こそはルナ王国の実態を暴いてみせる。これまでに死んでいった
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