第17話 暇な日・・・もう打ち上げ?

 一夜明け座学も終わった頃




「トーナメントもあと2戦を残すだけとなったぁ」


 デン君は今日も元気だ。




 本日は《リリスVSイリュウ》の日だ。


 急なトーナメントやアーサーが本気で戦えないこともあり3位決定戦は行わない。


 イリュウの希望で決勝戦は明日行うこととなっている。




「ここまで難なく勝っているリリス選手と昨日思った以上にダメージを食らったと思われるイリュウ選手の戦いです。メロさんこの試合どう見ますか?」




 解説者メロが話だす。


「リリス選手はまだ本気を出していないのと戦いなれていないのが少し心配ですね。足元を救われないようにしていただきたい。それに比べ今までおとなしく実力者には見えなかったイリュウ選手は昨日のクシィ選手との激闘だったと思われる傷が残っていないかが心配ですね」




 イリュウはほとんど回復しているようだった。昨日の約束通り俺は離れると声をかけに言った時にそう聞いた。


 会場をあとにし調べたいことがあるから図書室に向かう途中。




「ルーシュなんでこんなところにいるの?」


 そう声をかけてきたのはリリスだった。




「少し調べたいことがあってな」


 おれはそう返したが


「なんでよ、見てくれないの私の戦い。見ても意味ないっていうの?ねぇ」


(ミスった。返事を間違えたか、どうするかな)


「いやそういう意味じゃなくてどうしてもしなくちゃいけないことが」


 少し無理矢理感だったがどうだろう


「なんでこんな時にするのよっ、ルーシュ見てないと嫌だ、ちゃんと観戦してて」


(困った。面倒になったぞ)




 それを見ていたのか声を掛けてくるものがいた。


「こんなところにいましたか。私がお願いした事もできないのですかルーシュ君」


 そう言ってきたのは《最高顧問アリゾナ》髭だ。


「え? あ、すいません少し話していたもので」


(ナイスだ髭、お前はたまにファインプレーだな)




「もぉそれなら仕方ない。けど決勝は本気でしてよね。私負けないから」


 そう言って怒ったまま戻っていった。




「すまない、助かった」


「なにか事情があるのでしょう。あなたに恩を売っておくことはこの先役に立ちそうですからね」


「そういうところは嫌いだわ」


「声に出てますよ」


「おっと急がないと」


 またどやされそうだったが、俺は逃げ足のようにその場を離れていった。




「それにしても歴史に魔法学の発展、魔物の状況、地図……本当に俺のいた世界かここ? 読めば読むほど違う世界に来たような気がする」




 そう考えていると気配がした。




「誰だ? 何をしている?」


 俺はそいつがいる方に圧を掛けた。


「お前こそ何をしている。 ここは禁書棚だぞ」


 そうやってでてきたのは学園成績1位スザクだった。


(俺が見ていたのは閲覧禁止の禁書棚)


「俺はアリゾナ最高顧問に言われてここに来ただけだ」


(嘘だがさっきのを利用させてもらおう)


「お前こそこんな時間に何してるんだサボりか?」


 次は俺が詰め寄っていく




「お前には関係ない。俺が学ぶことは少ない、それに学園が始まってすぐだ余計にな。それよりお前がここに入るのが見えたから着けてきた」


(着けてきた? いつからださっきまで気づかなかったが流石といったところか今の独言聞かれてたら面倒だな)


「書物もってこいって言われただけだよ」


 そう言って1冊だけ持ってでてきた。


(めんどくさいな、このままここで時間を潰したかったが)


「怪しいな、まぁいいそれよりおれも読みたいものがある。このままサボろうではないか」


(何?! 超展開、こいつこんなキャラなのか)


「おいおい成績1位の天才がこんなところにいるのがバレたら大変じゃないのか?」


「ここは入るのが難しかった、だが見つからないようにするのは簡単だ。お前が黙っていればの話だがな」


「ならバラそうかなぁ?」


「だまれお前は共犯者だ。おとなしく読みたいものでも目を通しておけ」


(ムカつくやつだな。だがこの時間がもったいない、こいつの案に乗るのも悪くない)


「わかったが絶対に持ち出すなよ」


 おれは釘を打ってこいつと禁書棚を漁ることになった。




「……」


 なんか居心地が悪い


「こっちを見るな」


(バレてるし、まぁ良いか害もなさそうだしこのまま調べ物しよう)




 1時間がたった頃


「スザクそろそろ行くぞ」


「ふん仕方ない今日はこれでいい。またここに来る用事があればおれを誘え絶対にだぞ」


 そう言ってでていった。


「なんて自分勝手なやつだ……」


 俺は呆れたがそろそろ試合が終わる頃だ。




 会場に戻っていくと誰もいなかった。


(おかしいな、イリュウのやつまたなにかしたのか?)




 俺は急いで控室や医療室にも言ってみたが誰もいなかった。


 何かがおかしい俺は魔法を使って学園を探してみた。


 なら食堂に集まっているみたいだった。おれは何かあったのかと急いで食堂に向かってみる。


 何やら言い合いや悲鳴みたいなのが聞こえる。




(何だ? 急がないとやばいか?)




 勢いよく扉を開けた。


「おいっお前ら大丈夫か!」




 すると




「おっルーシュやっと来たか。お前は肉パーティーとイタリアンパーティーどっちが良い?」


 ジャックが急に話してきた。




「え? 何の話しだ?」


 おれは呆気にとられた。




「何って明日のパーティー食材と場所確保に来てるんだよ」


「そんなことよりリリスの戦いは?」


 状況がつかめないおれ




「ルーシュ~~~~」


 なんか泣いているような声で名前を呼ぶのはリリスか?




「な、なんだ? 状況がまったくつかめん」


「私が話そう」


 そう切り出してきたのは実況者兼トーナメント執行部長デン君だ。




「試合はイリュウ選手の10分で勝利に終わりました。それで時間が余ってるってことでみんなで明日のパーティーの予定を立ててたところです。でもイタリアンパーティーか肉パーティーかの意見に分かれてしまって、今からもう一度戦おうかといった緊迫した状況になっています」


 なんてどうでもいいことで言い争ってんだか……




「ルーシュ~」


 リリスが泣きついてくる


「ルーシュどっちだ決めろ」


 ジャックが急かす




「わかったわかったちょっと待て。まず料理は多数決だ。それも1回戦を勝った8人で、でも偶数だと具合悪いからおれが抜けて7人でどっちか決めてもらってくれ。それでリリスはちょっと来い」




 おれはそれっぽい理由をつけてその場を離れてきた。




 なんか食堂が賑わっているがまぁ良いだろう。


「でどうした?」


「う~負けたぁ~~」


(イリュウが負けないとは言っていたがあの傷受けてたのに10分はやはり実力が段違いだ)


「頑張ったんだろ? イリュウは強かったそれは仕方ないよ」


「でもぉ……いつも寝てて訓練の時いつも控えでいいって言ってたし、戦闘になってもあんなに強くなかったのにぃ」


「あいつはサボり過ぎだった。それにリリスも油断しすぎだ、おれは忠告したぞ」


「うえ~~~~~」


 何故か泣くのが激しくなった。




「やっぱり」


 そう声かけてきたのはレインだった。


「あんたバカね、理由なんてどうでもいいのよ。こんな小さい子が頑張ったんだからなんて声かけるかくらいわかるでしょ」


 そう言ってトイレに行くと離れていった。




(ああそうか、そういうことか)


「ごめんごめん。頑張ったな見てやれなくて悪かった。ちゃんと敵は取るよ!」


 なんか横切ったレインがため息を付いて歩いていた……






「明日のトーナメントお疲れ様パーティーは《イタリアンパーティー》に決定!!」


 デン君が大きな声で多数決の結果発表をしていた。




「イタリアンだってよ。リリス戻ろうぜ」


 泣きつかれたのか眠たそうなリリスを起こして戻る。




 会場は食材買いに行く組や調理組、設営組に分かれてみんながテキパキと動いていた。


 しかし奥に動かない影が3つあった……


 1つ目は全員がいいアイデアだと多数決を推していたのに対し1回戦負けのジャックだけが抗議していたらしい。しかも肉派のジャックだっただけにさらに負けて落ち込んでいた……


 2つ目は昨日の戦いから失恋し元気がなくなったロック。大きな体が嘘のように小さい……


 3つ目は戦闘がああいう結果になってしまって一切誰にも触れられることなく退場していったクシィだった。ただただ大ダメージ受けてさっき目を覚ましたのにみんなに忘れられていたらしい……


「おいお前ら何してんだよかっこ悪い」


 俺は笑いながら話しかけに行った。


『うるせぇ。お前には一生わからんよ!』


 声が3人揃っていた。仲良しかよコイツら


 にやけてしまった。




「ねぇなんかもう終わった感じになっちゃってるけど~おれは明日の戦い楽しみなんだからね」


 そう言って声を掛けてきたのはニコニコしたイリュウだった。


「俺も楽しみさ。さっきも10分だってな面白い早くやりたいくらいだ」


「あはは、そう思ってくれてるならありがたい。君は何故かめちゃくちゃ強いみたいだね。なんでかな? なんか理由でもある? 生きてきた世界が違うみたいだ」


(こいつも勘がいい部類か)


「どういう意味ですか? 俺は明日頑張って優勝したいだけですよ」


「ほらほら、また変な敬語。では明日よろしくね~」


 笑いながらどっかに言った


「ホント苦手だわ」


 おれは口からこぼれていた。


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