第3話 魔王復活・・・今の王と王子
王国内に案内された広い作りにはなったものの、玉座の間は多分同じ位置のままだ。その方向に向かっている気がする。
「あまり詮索しないでくださいね」
ニコッと胡散臭い男が言う
(こいつは一癖あるな)
少し歩いたが、案の定玉座の間に案内された。王はいないようだ、いるのは先程の派手な鎧、できそうなのが玉座の左に5人、他はおばあさんにその側近か?そしてこいつにこいつの従者3人…最悪逃げれないこともないか。
「それで話とは?」
俺が第一声を挙げる
5人の内一人、髭が喋りだす。
「本当にこいつで? ガキじゃないですか?」
「これこれ賢者様に向かってガキとはあなたは死にたいのですね」クスクス
更にもうひとりがニヤリと話す。ニヤリ野郎とでもしておく。
「何だ? この時代は出来損ないが多いようで? このような話しかできないようなら失礼する」
俺は振り返る。
「おまちなされ。この者たちの失礼をお許しを」
おばあさんが口を開いた。
見た限りだとそのばあさんと側近の2人が話が通じそうだ。
「失礼とは! いくら預言者様でもこんな得体のしれないものをまだ賢者というおつもりか?」
先程の髭が怒鳴る
(あのおばあさんが魔王の件の預言者か)
「わたくしめが本性を出させてみせます」
先程の派手な鎧が話を遮る。
「こんなガキ先程の続きで痛い目に見せましょう」
また剣を抜いて寄ってくる。
「よくぞ言った本気でいけ」
髭が煽る。
預言者の方を見るが反応がない、実力を見せろということか?
仕方ない
「さっきも言ったが覚悟はるんだろうな?」
俺の能力は、
・詠唱短縮能力
・効果倍増
・リキャスト短縮
転生のたびに強力になるか数が増えている。
詠唱短縮の下級の風魔法程度で先程の鎧10人を投げ飛ばすは容易だ。
「わたしとて王国軍騎士長、貴様みたいなガキにやられるとは微塵も思ってないのだよ」
と急加速で何かをまとった剣を振りかざしてきた。
「何ださっきからブツブツ言ってこれが限界か?」
俺が玉座の間に入ったときから詠唱していたくせにこの程度で王国騎士長?ひどすぎる
指を構え魔法陣を騎士の下に描きパチン
指を鳴らす音が響くと同時に派手な鎧が消える。
「次は?」
周りを見渡す
「何をした!?」
髭が叫ぶ
「この時代はわからんが城にきれいな池があっただろ?西に150mほどだ、まだあるなら泳いでるよ」
と指をさす。
「多分ですが今は女性風呂になっております」
大臣が答えるとその方角から悲鳴が響く
「悪いことしたな、後で誤っといてくれ、被害者女性に」
「騎士長のくせに、格好のつかないことを」
髭がまだ突っかかってきそうだ。
「もういいでしょう?」
別の声?どこにいた?俺が気づかなかっただと?
その声は玉座から聞こえる…
「いつからいたのかと? そう言いたそうですね? 最初からですよ?」
玉座を見ると俺と変わらない年頃の少年がいた…そして
「お前……」
俺は目を疑った。そこにはあの日俺を守って死んだ勇者…レオがいた。
当時より若かいがあれはレオだ。
「レオじゃないかなんでこんなところに」
俺は今の状況を忘れて近づいた。
「やっぱむりぃ!!」
先程まで堂々としていた玉座の青年が泣きそうな顔で叫んだ。
「は?」
俺は呆気にとられる
「おばば様無理だって言ったでしょ~ 何なんこの人さっきからレオって誰? めっちゃ怖いし、あの口うるさいバロン消しちゃったよ? まさか死んだんじゃ?」
玉座の男はあたふたして預言者にすがりつく。
バロンってやつは派手な鎧だろう
「すいません賢者様……色々と訳がありまして」
預言者が言う
「魔王の件だな? 今日がその日でこのバタバタ騒ぎ何があった?」
俺が聞く
「私が一月前に今回の件を予言してしまいました。王は魔王や賢者、勇者のお話が好きでいつも気にかけておられる人でした。感づいていると思いますがもう1496年間魔王は復活しておりません、その間、賢者もいなくなり勇者も現れることがありませんでした。年とともに事実は史実となり、史実はおとぎ話に変わっていったのです。今ここにいるものも誰一人まだ魔王復活など信じていません。王だけが気になさっておられたのですがおとぎ話を信じるものも少なく何もできず今日を迎えてしまいました。それと先日怪しい男が謁見に来た際、このおとぎ話を餌に王に何かを飲ませたのです。それは不死の血と言っておりました。皆が止める中それに手を出した王でしたが先程までは何事も起きなかったのです。」
「先程まで? 王は?」
預言者が続ける
「先程の一瞬の闇……《闇夜》と呼んでいます。その間に消えてしまわれたのです。その薬が関係あったかはわかりませんが……そして私が新たに見た予言が王の見た目をした魔王だったのです。それとあなた……」
「なぜ俺が賢者だと?」
「私が見たのは、今は使われていない召喚室そこからあなたがでてきた。それだけです」
「それであの学校を調べ俺の名前とそこにいた経緯から預言者だと? そんなのじゃ誰も信じないよな」
「ですからあなたをここに呼び試したというわけです」
「ならもう少し披露しようか。そこの髭の横のおっさんあんたカロライナ家だろ?その顔は1500年経っても同じだ。まだマスターを続けられていて嬉しく思うぞ。それに王子のその顔、レオ…勇者の家系の血が入っているな? それに預言者のばあさんの横のあんた、あんたは俺を知っている…子孫だな」
俺が言い当てた内容は誰もが口を噤むんだ。
だが勇者の家系も調べてわかったことであり誰もそのことは知らずに王は結婚していた。さらに俺の子孫は賢者が転生しなかったことに対して一時は国を追われ名前を変えて王国に紛れ込んでいたがそんなことも誰もが忘れ、子孫であるということだけが代々受け継がれていっていた。
別室にて子孫と話した。
「すいませんご先祖様。なにか感じるものがあったのですが本当に何も聞かされてなくて証明することもできませんでした。しかし私どもはすべてを捧げてあなたをサポートさせていただきますのでよろしくおねがいします。」
あらたまって話してくれるこの子孫は《シュルト・マルク》地味に名前が残っていた。
「ご先祖さまはやめよ。死んでるみたいだわ」
笑って話す。
「ちょうどよかった。俺のせいで苦労したみたいだけど話せることは全部話してくれ」
マルクが話し出す。
「もともとルーシュ様が転生する当日は何も起きなかったと記録されています。王国ではものすごく荒れ魔王をどうするのか毎晩議論されたようです。最初の年は色々と行動を起こしたようなのですが魔王が活動する気配もなくただただ時間だけが過ぎていきました。こんなことは今までで一度もなく……」
「そうだ俺が7度経験している……当たり前のように200年周期で転生していた」
話を遮ってしまうが
俺が黙ると続きを話し始める
「何もなければそれはそれでいいのです。ですがもしもに備えその次の200年後に託されました。しかしまたしても転生は行われず魔王も……3,4度と時間だけがすぎるにつれあのような世界はおとぎ話になりました。その間王国も色々ありました。魔物討伐、内戦、今の王は本家ですが、一番荒れ、魔王のことを忘れたきっかけを作ったのは王の分家が政権を握ったときだと聞いています。ギルドも肖像画も銅像も存在も消してしまうような行動に出たそうです。平和が続くのであればとギルド民も賢者様を崇拝していた者たちもいなくなりました。それが決戦の600年後~1200年の長い年月でした。ここ300年人口が増えたこともあり内戦より魔物の行動が激しさを増し、軍や魔物討伐の専門の方々要はギルドですね、そういった物がまた作られました。そして今になり、また魔王の事件ということです。」
「それで玉座の左に立ってた5人がギルドマスターか?」
「そうですさすがルーシュ様話が早い」
「気になるのはなんで王子にあんな事させた?」
「それはですね……」
「それは私から話しましょう」
話を遮ったのは預言者だった。
「話の途中すいません」
予言者が座った。
「いえいえ私がいた時代も預言者様は偉大でしたのでお気になさらずお続けください」
「ありがとうございます。あれは王子が生まれる前に見た予言だったのですが王子は勇者になると……ですがはっきり言って王子は勇者の素質が全くありません。幼い頃に母親をなくし王に大切に育てられてきました。剣技などの勉強はしておるのですが全く……ですがこういう状況になってしまった今少しでもやる気を王を助けるためにと立ち上がってくれると思っておりましたのですが」
「そうかこの状況でも王子は期待はずれと言うことか」
俺が返す
「それゆえ国では討伐隊やギルド、訓練生など大きな動きがでてきます。それを現ギルドマスターたちが各々引受け戦力アップを図るといったつもりでございます。」
「この状況でそこまで動けるのはすごいな誰が指示出している?」
マルスが答える。
「もともとは王様でした。それに対して行動を起こすものは全くいませんでしたが、今のギルドマスターの上グランドマスターという地位にガル様がいます。今の時代の勇者みたいな方で幾度となく魔物から国を、民を守ってきてこられた方です。そのお力添えもあって王様の支持が大きく上がってこの様に現実的に動くこととなりました」
「そして王が消えて実質の権力者はガルというやつか…」
「そうかも知れませんがそこまでに警戒しなくて大丈夫です。本当に国のことや民に優しい方なんです」
少し熱くなっている
「わかったよ。警戒はしないが気にはとどめとくぞ」
「はい、ありがとうございます」
「本題は?」
預言者を見る
「さすが先を見られておりますね。賢者様は王子と一緒にRVR SCHOOLに入学して鍛えてほしいのです」
「はぁ?! 俺が今更学校? 無理無理、見た目こんなんでもおっさんだぞ?」
「今の王子を見られたでしょう? 臆病で泣き虫……なのに意地っ張りで負けず嫌い。王がいない今あの子が成長しないといけないのです」
「言いたいことはわかるが……」
(それにあいつ…いや今はやめておこう)
「どうされました?」
「いや大丈夫だ。もう一度王子に合わせてくれ」
トントン
王子の部屋の扉を叩く
「王子様いますか?」
「ひぃ、い、いないって言ってくれ」
小声だが聞こえている
「す、すいません今は王子がいなくて……」
更にアホな側近がいるみたいだ
「入るぞ」
ガチャ
「ギャー」
「ギャー」
やはりアホだったか
(ん?この側近なにか……)
「落ち着け俺と話そう」
「……」
「で?経緯は分かってるな?」
「わかってるけど俺には無理なんだよ」
王子が答える
「何が無理だ?父親が拐われたんだぞ? 誰が一番最初に助けに行くべきなのかわからんのか?」
「だって僕弱いし、何したらいいかも……それに行くって言っても止められるだろ?」
「本当にそう思うなら何もするな。何もだぞ国が、民が家族が苦しんでも何もするな邪魔なだけだ。後3日考えてこい4日後が入学試験らしい。じゃぁな」
「待って本当に強くなれるのか?」
王子が聞く
「そんなの知るか」
それだけをいって部屋を出てきた。
部屋に戻る途中
(こいつずっと着いてくるな)
「いつまで、着いてくるつもりだ?」
「流石ですね大賢者様」
王子の側近がでてきた。
「何者だ? この時代だと大賢者様はただの賢者だと思っていたが?」
「これは失礼しました私どもが不甲斐ないばかりにいつも助けてもらっていたのに感謝する心を忘れてしまいした。すべてのものに代わり謝らせていただきます」
礼儀正しく話してくる。
「やはり先程のやつと違うなお前? まさか王か?」
「つくづくすごいお方ですね。その通りヴァイオレット王国、国王ダリル・ヴァイオレットと申します」
(本物か?偽物でもこんな風には接触してこないだろう、なら考えられるのは…)
「こちらこそ失礼しました、すぐに王とも気づかず無礼なことを」
「いえいえ……この体は仮でして……」
無理をしているのかぎこちない
「だいたい分かります。拐われる時に精神だけ移した。そんなところですね。だが一時的な体のためか不完全な術だったかして普段は眠っていると言ったところですかね?」
「はい、そのどちらもだと思います。今夜は伝えたいことがありましてつけさせていただきました。話は倅のことです。私は剣技の方が得意ですが、倅は勇者なのに魔法使いなんです。それをお伝えしたくて」
王は少しうつむいて言う
「やはりそうでしたか。気配消すのは一流でした。本人は全く自覚していませんね。けど勇者の特性は持っていそうです。すべてのものを魅了する力が垣間見れている。それも本人は気づいていませんね」
「はい……では倅のことは」
「えぇ、責任を持って育てます。が、ちゃんと試験当日に来ることができればですけどね」
「本当にありがとうございます。私はもう魔力がないのでこれで……」
そう言うと気配が消えていった
「あれわたくしめはなぜここに? わぁ、け、賢者様?」
元に戻った側近が慌てる。
「名は?」
俺が尋ねる
「わたくしですか?ヴィンセントです。みんなさんはヴィニーと」
「試験日、王子を連れてこいよヴィニー」
そう言って部屋に入った。
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