第215話 いつか、覚えていろよ
早く、起こして下さい。
トラブルはテオを
もう一方の足は、虚しく宙を仰ぐ。
「ちょっと、今、起きるから動かないで」
言葉とは裏腹にトラブルの顔に近づく。
いたずらな目をして、ん〜と、口を尖らせてキスをしようとした。が、トラブルはそれを避けようと、上を向き、体を
テオはトラブルの首にチュッと音を立ててキスをした。
「もっと、動いて。気持ちいいから」
トラブルはテオの頭をバシッと叩く。
重いです。早く、
「チューしてくれないと、起き上がれません」
仕事中です。それにテオ、汗臭いです。
「う、ごめん」
テオは体を斜めにして、後ろに下がる。
途中、トラブルのタンクトップをチラリと
トラブルは、またテオの頭をパシッと叩く。
「痛っ」
トラブルは上半身を起こし、テオに踏まれているズボンから足を引き抜く。
片足を上げ、テオが動けるスペースを作るが、その足がテオの肩に乗る姿勢になってしまった。
テオはトラブルのヘソから視線を下げて太ももに、キスをした。
トラブルは頭を叩こうと手を伸ばすが、テオはその手を
「こんな刺激的な格好してる方が悪い」
テオは、もう一度トラブルの太ももに音を立ててキスをする。
トラブルは、やめてと、
テオのキスは、少しづつ太ももを下がって行く。
トラブルは、なんとか手を振りほどき上半身を寝かした。
テオはトラブルが横になったと思い、顔を上げる。
「トラブル……していいの?」
(いいわけがない、でしょっ!)
トラブルは両膝でテオの頭を
テオは悲鳴と共に、カーテンの向こうに転がって行く。
「トラブル! ひどいよー!」
トラブルはズボンを拾い、床に尻もちを付いたまま目を見開くテオを
ズボンを履き、鍋の火を止めに行く。お湯は半分以下になっていた。
トラブルは水を足し、再び鍋を火にかける。
「僕、蹴飛ばされるような事した⁈」
テオは床に座ったまま、怒った顔を向けた。
トラブルはソファーのTシャツを
「ねぇ、黙っていないで何とか言ってよ」
テオはカーテンの向こう側でイライラとした声を出す。
トラブルはロッカーの扉をバタンッと、強く閉めた。
「そりゃあ仕事中だけど、あんな状況で、キスくらいさせてくれても……」
カーテンが勢いよく開き、テオを
「何で泣くの⁈」
トラブルは無言のまま、カップラーメンにお湯を注ぐ。
「トラブル、言ってくれないと僕、分からないよ」
手を……。
「手? 手がどうしたの?」
手を押さえられると、私には口を
「え、あ! そんなつもりじゃ……ごめん、トラブル。そんなつもりは無かったんだよ……ごめん。本当、ごめん」
ごめんを繰り返すテオに肩は下がる。
……少し、過剰反応でした。サンドイッチを持って来てくれたのですか?
「うん、ノエルが持って行けって」
ラーメン食べますか?
「トラブルのでしょう? 良かったー。セスがトラブルは、ダイエットと暑さでバテてるって言うから心配しちゃったよ」
(セスの観察力には、
「ねぇトラブル。僕、汗臭い?」
トラブルは笑いながら、臭いですと、手話を見せる。
「ショックなんですけど!」
おしぼりで体を拭きますか?
「うん、シャツを脱いでいいかな」
トラブルはロッカーからハンガーを出し、テオに渡す。
テオは脱いだシャツをハンガーに掛けてトラブルに渡した。
トラブルはテオの鍛えられた上半身をニヤニヤと眺める。
「いやらしい目で見ないで下さい!」
トラブルは、大口を開けて笑った。
「まったく、何がレイプだよ……いつか、本当に覚えてろよ……」
テオはブツブツと独り言を言う。
テオが体を拭く間、トラブルはシャツに制汗剤のスプレーを振り、エアコンの風に当てる。
テオはブランケットを肩から掛け、2人はラーメンを分け合い、サンドウィッチを平らげた。
さらりとなったシャツを着ながらテオは思い出した。
「そうだ、ジョンにアイスを持って戻るって言ってあったんだ」
トラブルはクーラーボックスに保冷剤とアイスキャンディーを多めに入れる。
ソヨンさん達の分です。
「そうだね、食べてもらうよ。トラブルもスタジオに来る?」
はい。ここを片付けたら行きます。残りの撮影、頑張って下さい。
「うん、もう少しだから頑張る。頑張るけどー……」
テオはトラブルの腰を引き寄せる。
「“朝から頑張った” と、“今から頑張れ” の、キスをちょうだい」
トラブルは医務室の廊下をチラリと見る。
「そうだった。こっちは見えちゃうんだった」
(第2章第183話参照)
テオはトラブルの腰を抱き上げ、ロッカーに移動した。
カーテンを閉める。
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