第10話
「ま、待て!!」
見事な
「まだ、何か?」
「ま、魔導契約でした婚約は破棄になったかもしれんが、あ、改めて婚約を結びなおすのはどうだ!?王妃としてイーサンを支えるならば、なんでも望みは叶えてやるぞ!?宝石でもドレスでもいくらでも与えてやる!!王家の秘宝でも欲しいならくれてやるぞ!?」
「父上!?」
「そして、わたくしに再び供給装置になれと?……ごめんですわ。この国にわたくしが心を残すものも、心奪われるものも何一つありませんもの。王妃の座?殿下の隣にいらっしゃるじゃありませんか。殿下が選んだ誰よりもふさわしい方が」
「え!?」
にこり、と壇上に笑顔を向けると、イーサンのすぐ隣に居たシスリーがビクッと竦む。
「良かったじゃありませんか。『学園では殿下に次ぐ魔力を誇る聖女のような方』なのでしょう?きっと聖女の様な慈悲深さで、これからは彼女が殿下に魔力を与えてくださるわきっと。ねえ?そうでしょう?」
「え、え。あ、あたしは……!!」
「王妃の座を射止めるために、他人に無実の罪をきせる程お慕いしている殿下の為ですもの。きっと進んで『能無し』の
「し、シスリー……?」
これだけ大勢の前で暴露された以上、イーサンこそが魔力無しである事実を隠し通す方法などあるはずがないのに、縋るような目で見られたシスリーは、怯えるように一歩、二歩とイーサンから離れ、思わず、といった風に伸ばされたイーサンの手を払いのけた。
「シスリー!?」
「いやっ!!いやよ!!『能無し』の男も『能無し』になるのも嫌っ!!」
シスリーもこの国の貴族令嬢であったが故に、典型的な『魔力至上主義』だった。故に身分が上でも魔力の無いセレネに冤罪をきせる事に、良心の呵責などまるでなかった。国一番の魔力、と言われる男に並び立つ王妃の座こそシスリーにとって熱望するものだったが、代わりに自分が『能無し』になるなど耐えられない。ましてイーサンが少し無茶をしただけで自分の命が危うくなるのだ。こんな筈では無かったのにーー
「シスリー……そんな……」
「あんたなんて顔と王太子の地位がなけりゃただの我儘男じゃないの!おまけに魔力を取られるなんて冗談じゃないわ!!」
「シスリー!!」
「いやっ!!離してよっ!!」
このまま居続ければ、自分の意思と関係なく囚われてしまうかもしれない。そう考えたシスリーが逃げ出そうとするも、側近達に腕を捕まれ、その場に押さえつけられてしまう。
「あの女!!セレネが居るじゃない!!捕まえるならあの女にしなさ……い、居ない!?」
シスリーの叫びに、壇上のやり取りに注目していた皆がセレネの方に視線を向ける。しかし、その時既にセレネの姿はそこには無かった。
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