第67話 成長……

「『山幸うみ』が誘われてるのはやっぱり……」

「うん、一番最初のプレーヤーっていうのが大きい。でも、最初からそのつもりだったかはわからない」

「どういうことだ?」

「本当は、大会は普通の、それこそプロだけでやる予定だったかもしれない。私に大会の連絡が来たのは今から2か月くらい前だから、その頃にはプロは招待されてたはず」

「そこにでるのか?」


 プロの中に混じって……?

 思いっきり叩かれそうなんだけど。


「ん? ……あ、違う。『山幸うみ』が誘われてるのはその前。Vtuberだけの

記念試合みたいなもの」

「ああ、さすがにそこは分けるのか」

「そう。それで、Vtuberだけの大会も行うのに、『山幸うみ』を誘わない方が不自然」

「そこに誘われてるのか……海菜はどう思う?」

「……兄ちゃんが決めた方が」

「感情抜きにしたら?」

「……出るべきだと思う。今回の『ばか×ろわ』のVtuber限定の大会に限っては、『山幸うみ』は無条件に宣伝される。それこそ100万人越えの登録者を持ってるVtuberよりも注目されるかもしれない」

「『ばか×ろわ』を見るのが目的の人にってことか」

「そう。プロ同士の試合を見に来た人が待機するついでに見てくれる可能性は低くない」

「じゃあ、誘いは受けるべきなんじゃないか?」


 海菜が心配してくれてるのはわかるけど、普段なら、それでも出るべきという結論になる気がする。


「何か理由があるのか?」

「…今回、試合は2回。ソロと……デュオがある」

「それって」

「……参加するなら『コラボ』しなきゃいけない」

「それでも、参加するべきだと思うか?」

「……するメリットの方が高いと思う。まずは、メリット自体は小さいけど、これが企業案件ってこと。ちゃんとギャラは支払われる。次は、コラボのこと。今回はちゃんと『仕事』だから、相手とそこまで仲良くする必要もない。大会後は相手から何を言われても無視すれば、普通の相手なら仕事だから関わってくれたと理解するはず。相手によるっていうのは少しデメリット。あと、コラボ解禁の場として悪くない機会なこと。これは運が絡む。運が良ければ、話題の中の一つになれる。運が悪ければ、他の話題に消される。つぎは……」

「じゃあ、参加させてもらおっか」

「っ!」


 海菜が勢いよく顔を上げた。その目は大きく見開かれていて、少し可笑しくなってしまった。


「海菜は頭いいからな。海菜が参加すべきって言うなら頑張るよ」


 海菜は俺のことを考えてくれていたけど、俺は、コラボしない理由は変な繋がりを作らないため、『山幸うみ』を通して『陸空』……海菜に負担が行かないようにするためだった。

 それは海菜もわかってるはず。

 そういうのも全部ひっくるめて海菜がそちらの方がいいといったなら、あとは『山幸うみ』がやるだけだ。

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