第66話 おはなしがあります
「ちょ、母さん! こっちくるな!」
「残念、ぴったりだから他の選択肢ないわよ」
「これで海斗が最下位候補かな」
「お父さんは借金返してから言って」
夕食後、海菜に母さん、父さんと俺の4人で金次郎地鉄をやった。
「……あ、父さんにぴったりだ」
「おいっ! せめて一回は被害出してからこい!」
「危なかった……」
「ここからなら海菜よりも母さんの方が近いか……?」
「あら、私につける気なの、あなた?」
「あ、ごめん。私着いた~」
「ちょっと、海菜!? 私についちゃうでしょ!」
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「おやすみ」
「はやく寝ろよ~」
「おやすみ~」
「海菜もはやく寝なさいね」
「は~い」
海菜と階段を上る。
部屋に入ろうとすると、海菜もついてくる。
「こっちで寝るのか?」
「ん~、寝るには寝るんだけど、その前に真面目な話かな~」
「……珍しいな」
海菜と部屋に入る。
たまに漫画を読みながらだったり、横になったりしているときに、突然報告されたりするので、こうやって改まって真面目な話と言われて、少し緊張してしまう。
「えっと?」
「……『山幸うみ』に依頼が来た」
「うん」
ここまではいつもと変わらない。
だから、それに続く言葉が違うはずで。
「
「ビーソンっていうと……」
「そう。『ばか×ろわ』の」
Vsomは、海菜の作った『ばか×ろわ』を買い取ってくれた会社で、もともとはVRゲームを中心に制作していたゲーム制作会社だった。その後、VRゲーム以外にも手を広げていったとのことだった。
海菜の『ばか×ろわ』を買ってもらうときに父さんが調べてくれたのを聞いただけなので、今は少し変わったかもしれないが、そこまで大きな変化はないと思う。
「そこが、依頼?」
「そう、『ばか×ろわ』の大会にでないかって」
「大会?」
『ばか×ろわ』は海菜の手を離れた後、大会なども開かれ、eスポーツで採用されたゲームの一つにまでなっている。
「運営会社主導の初の大会」
「そこに出るのか?」
「その依頼が来た」
「……海菜は、どうした方がいいと思う?」
「兄ちゃんが決めるべきだと思う」
海菜と『山幸うみ』は、俺の心情ではなく、第三者から見れば、基本的に深い関わりはないとなっている。
ゲームを先行でやらせてもらっている時点で、関係が浅いとは言えないけど、すくなくとも、ゲーム制作者としての海菜……『陸空』を通して『山幸うみ』に依頼をしたところで、それが有利に働くわけではない、そういう風に今までやってきたのだけれど。
売ってあげたと買ってもらったは同じことだと、海菜が以前言っていた。
買ってもらわなかったら、そのうち管理が疎かになってしまったかも、と。
だから、海菜はVsomに多少なりとも恩を感じているのだと思う。
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