第55話 覚悟はある?

 本当は、ある程度大きなVと仲のいいことをアピールできれば、繋がりは増える。

 その、ある程度大きなVとつながるために初コラボというのは使えなくもない。

 結局は宙音に依存する形にはなるけど。


「初コラボは15……いや、20万以上のを目指して」

「え、い、いきなり!?」

「今までコラボを断っていた人には、どうして自分の誘いは断ったのに、とは思われるだろうけど。それは誰とコラボしても同じ。だから、折角なら最初くらい上を狙う」

「そ、そんなにうまくいくかな……」


 そこは運。


「かかわりができれば、あとは大丈夫」

「そうなの?」

「宙音は、対人能力が高い」

「た、対人……?」

「……コミュ力がある」

「あ、え!? そ、そうかな……」

「そう。だって、私がそこまで宙音に悪感情がない」

「え!? も、もしかして、デレ?」

「気持ち悪い」

「ご、ごめん」

「そう言う人間だと思うからいい。それより、私はそろそろ帰る」

「え、も、もう!?」


 だって。


「兄ちゃんがそろそろ帰ってくる」

「え? あ、山梨……じゃないや、えっと、海斗さんが?」

「なんだそのよびかた」

「ちょ、海菜さん!? いきなりどうしたの!?」

「勝手に兄ちゃんのこと名前で呼ぶな」

「え、えぇ……」



¥¥¥



「だって、海菜さんも山梨さんだし……」

「私のことを名前で呼んでるなら迷わないはず」

「じゃ、じゃあ……海菜?」

「気持ち悪い」

「だ、だって!」

「はぁ……好きに呼んで」

「う、うん!」


 なんだか、友達って感じ。

 実際はウチが相談を受けてもらってる立場だけど、海菜がはっきりした口調だから、気の置けない、みたいな。


「最後に言っておくけど、宙音がするべきことはコラボ。それが一番楽だから。そして、配信時間を伸ばすこと。あくまで現状やってる配信時間を含めたうえで、前後に伸ばす。時間を変えることは、メリットもあるけど、かなりリスクがある。そして、本当に、一番大事なこと」

「う、うん」


 つばを飲み込んだ。


「結局は配信者の腕」

「ど、どうしようもないじゃん!」

「当然。私の言ったのはしょせん小手先の技術。後は全部配信が面白くてまた見たいと思えるか、それに尽きる」

「えぇ……」

「当たり前。私の、実際に配信をやったこともない人間のアドバイスで何もかもが、うまくいくほど甘くはない」

「そ、それは知ってたけどぉ……」

「私ができるのは一緒に悩んだり、視界が狭くなってるのを少し広げるくらい。本人以外が何かできるわけがない。だから、コラボも、配信時間も、全部宙音が決めるしかない」


 そうだ。

 これは、『銀河水玉』のチャンネルは、海菜のチャンネルじゃない。

 『銀河水玉』が全部決めて、責任を負わなければいけない。


「話し過ぎた」

「ま、また」

「なに」

「また相談のってくれる?」

「……もう私のアイデアは全部話した」


 そ、そっか……


「でも、暇があったら話し相手くらいにはなってあげる」

「か、海菜!」


 普段こんなことしないのに、テンションが上がってしまったのか、ウチは海菜を思いっきり抱きしめた。


「ありがと!」

「……気持ちわるい」

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