第20話 白米もいいよね

「おはようございます、海斗くん。昨日は大丈夫でしたか?」


 今日は初華さんの方が先に教室にやってきた。


「おはようございます。昨日って何のことですか?」

「大丈夫ならいいんですが、もし疲れているようでしたら今日しっかり休んでくださいね」

「? はい」

「はよ!」

「おはようございます」

「おはよう」

「初華、昨日ごめんねー。メッセージ送ったつもりが送れてなくてー」

「だから遅くにきてたのね」

「そそ、まあ、学校で話せばいっかー」


 二人に集まる視線に巻き込まれている。


「カイトは何でもいいんだよねー?」

「何のことですか?」

「日曜日、どこ行こっかーって」

「ああ、はい、どこでも大丈夫ですよ」


 そんなこと聞かれたっけ……?


「でもー、どこいこっかなー? カイト、ボウリングとか苦手そうだよね」

「ボウリングは、そうですね……投げれますかね?」

「さすがに投げることはできるんじゃないですか? 重さも色々ありますし、きっと海斗くんに合ったものもありますよ」

「そうですかね? たしか、小学生の頃に行ったきりです」

「じゃあ、行ってみるー? 私も最近行ってないし! ね、初華」

「たまにはいいかもね」

「じゃ、けってー!」

「はいはい」


 そこで先生も来たので二人は席に戻っていった。しかし、視線はしばらく離れていかなかった。



\\\



「今日のおべんとーはどうかなー?」


星那さんがウキウキしながらお弁当箱を開ける。俺たちも少し気になって、そのお弁当箱を見ていた。


「ちゃんとご飯だ! やったー!」


 切られたパンではない。星那さんがとても喜んでいるので、俺少し笑ってしまった。


「じゃー、おかずはー?」


 初華さんが微妙な顔をしているのが気になった。


「ぇ……」


 一段目を持ち上げた状態で固まってしまった。中を覗いてみれば、おにぎりが入っていた。


「……」

「き、昨日よりは、手間かけてくれてるもんねー、やったぁ……」


 後に行くにつれ乾いた笑みを浮かべ始めた星那さんから思わず目をそらしてしまう。


「おにぎりの中に、あるかもー?」


 おにぎりを一口食べた星那さんの目が潤んだ。


「えっと、少し食べますか?」

「はぁ……私のも少しあげるわ」

「うわーん、ありがとー!」



\\\



「兄ちゃん」

「んー?」


 海菜は俺の部屋で漫画を読んでいた。


「ちょっとVの関連で話しとくことがあって~」

「うん」

「いい~? 今日休みだけど~」

「話くらいならいくらでもいいけど」

「コラボ依頼が来てた~」

「コラボかー」


 海菜がわざわざ話してきたということは個人のVtuberだ。企業所属は基本的に断ってもらうことにしている。海菜と俺が兄妹ということは知られていないが、俺が海菜の作ったゲームをリリース前、誰よりも早く実況していることで、Vtuber「山幸 うみ」とゲーム制作者「陸空リクウ」は個人的な繋がりがあると噂されている。

 そのこともあって、企業と変な繋がりを作りたくないという話になったので、申し訳ないというか、畏れ多いというかではあるのだけど、すべて断ってもらっていた。


「正直、あんまりメリットとかはないかも~? あっちは女Vだし、層がな~」

「なんて名前?」

銀河ぎんが 水玉みずたまだって~」

「ぎんが、みずたまね」

「でも、なんかいつまでに返信くださいみたいのもなかったから~、断っておいて、気が変わったらこっちから連絡でもいいかもね~」

「誘われたことを話したりもしなさそう?」

「今まではそういう裏事情を話したりはしてないみたい~? 有料配信もやってないし、他で配信もしてたりはしないかな~。魂分けしてたら別だけど~」

「そうだな。平日にってのも厳しいし、少なくともイワシ子ちゃん終わってからかな」

「りょーかい~、じゃあ、断っとく~」

「おねがい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る