第21話 タツノオトシゴって魚なんですね

「はい、配信始まりますよー。今日は、今日も?『それいけ イワシ子ちゃん』! え、飽きてきましたー? そんなこと言わずにもう少し付き合ってくださいねー! 今日と、来週も! そこまでおっけーとのことでしたので! 今回のボスは何でしょうねー? マグロ、貝ときたら……何でしょう? 関連性とかあるんですかね? まあ、めちゃくちゃうまくいけば数分後、今まで通りなら数時間後のお楽しみということで! では、さっそくやっていきましょう!」



「え、『数分は無理』? か、可能性はゼロじゃない、ん、ですよ……? さっそくやられましたけど……」


「今回のステージはずっと後ろから押され続けるみたいですねー。後ろ方向に移動し続けないとその場に留まれないみたいですー」


「今回は熱帯を意識してるんですかねー? サンゴありますし。おっっと! タツノオトシゴって擬態するんですか!? でも、今避けたの見ました!? うまくなってますよね!?」


「え、これどうやって避けるんですか!? 上から下まで埋まってるんですけど!」


「あ、今回海面低いと思ってましたけど、ジャンプできるんですね? あれ、イワシって海水から出ていいんですかね……?」



\\\



「一回休憩しますねー」


 区切りよく死んでしまったので、休憩に入る。水分補給をしながらコメントを読んでいく。


「『このステージ楽そう』? ほんとですかー? うまくなったのかもですね!」


「『あれは多分ハナタツ』? どれのことですかー? ハナタツってものが出てました?」


「『タツノオトシゴの種類』 そうなんですかー? 何とかタツノオトシゴとかじゃないんですね?」


「『全然進んでなくて草』? たしかに! 頑張らないと夜までかかりそうですよねー。では、再開しましょうか!」



\\\



「あ、イソギンチャクですかねー? 動いてますし、攻撃して、きましたね! え、はっや!? コンティニューっと」


「あー、このイソギンチャクが中央に来るまでに右側に移動しないとダメなんですねー? 押されてるので右方向にはすぐ移動できますから」


「なにこれなにこれ!? クマノミ?の大群が左埋めてるんですけど!?」


 画面の左半分が使えなくなってしまった。


「え、ずっとこのままですか? 流石にちがいますよねー?」


「攻撃してくるの!? ただでさえ邪魔なのに!?」


「これ一面のマグロの小さい版じゃないですか!? まだボス戦じゃないのに!!」


「あ! やっとどこか行ってくれました! ということはー? ボス戦ですかね!」


 サンゴなどもなくなり、障害物のない広いステージに着いた。




 そして、ボスは見えなかった。

 

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