第5話 マグロ攻略!

「えー、どうやったら折れるんでしょう?」


「あっ、今曲がった! 見てました!?」


「目の前で攻撃ってことですかね? え、死んだ……」


 1時間。ようやく戦い方が分かってきた。

 まず、基本的にマグロは直線で突進してくるが、少し前で一度テッポウエビの攻撃を行うと、その攻撃で発生する泡が上に向かっていく。

 それをマグロが追っていることが分かった。


 つまり、一度目の攻撃の泡をマグロが追うことでマグロのお腹がこちらに向くので、そこに二回目の攻撃を当てると。

 難しくないですかね。

 でも、ようやく糸口がつかめた。



¥¥¥



「あっ、今惜しかった! 惜しかったですよね!?」


「あ、当たりました!! 当たりましたよ!? 見てました!?」


「いけそういけそういけそう……」


「あ゛あ゛ぁぁ、あとちょっとなのにぃぃ!!」


「次、行けそうじゃないですか!? 行けそうですよね!」


「あと半分あと半分!!」


「次いけそう! 次こそ行けそうですよね!?」


「よっしゃぁぁ!! 見てました!? 見てましたよね!?」


 そして3時間。

 ようやくマグロを倒すことができた。

 ちなみにテッポウエビは、マグロを倒した後にイワシ子ちゃんが食べていた。かなしい。


『おめ』

『おつかれさまでした!』

『きいてた』

『みてました!』

『みてるに決まってるだろ。逆になんで見てないやつがいると思ったんだよ。まじで……ほんとうにおめでと! がんばったね!』

『まぐろぉ……』


「はい。予定よりも、かなり長時間の配信になってしまいましたが、最後まで見てくださってありがとうございました! ようやくマグロ倒せましたね! 苦戦させられたので、近いうちにマグロ食べようと思いまーす。ではでは、おつかれさまでしたー」


『乙』

『今日まだ食ってないわ』

『おつかれ!』

『おつー』

『今日も楽しかったです』

『みなさん、今日の夕飯なんでした?』

『おつかれ』

『おつ』


 エンディングを流しつつ、コメントを読む。

 労いの言葉が大量に流れている。

 こういうコメントは疲れが吹き飛んでしまうくらい嬉しい。

 こちらこそおつかれさまと言いたい。

 エンディングが明け、スペチャを読み、配信を終了した。


「ふぅ~……」


 ずっと同じ姿勢でいたため、身体が固まってしまっていた。

 腕を伸ばすと、ぽきぽきと、関節が鳴った。


「おつかれさま~、兄ちゃん!」

「うぉっ」


 海菜がいきなり俺の肩をもみ始めた。

 いつの間にか入ってきていたらしい。

 ヘッドフォンを外しながら、海菜に向き直る。


「も~、こんなに長くなるなら言ってよ~。お母さん怒ってたよ?」

「え、あっ……」


 画面の端を見れば、普段、夕ごはんを食べる時間は、とうに過ぎてしまっていた。


「終わったら食べさせてって。はい!」

「おぉ、ありがとう」

「あと、マグロのお刺身。一回覗きに来た時にマグロまで辿り着いてたから、お母さんに頼んどいたの!」

「おぉ、ありがとう……?」


 配信で話してはいたけど、すぐに食べることになるとは思ってなかった。

 美味しかったけど、少し複雑な気分になる夕ごはんだった。







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