第429話 酒と涙と女と男
「あの部屋に居るはずだよ」
ガブリエルが廊下の先にある明かりの漏れる部屋を指差すと、ホセはガブリエルを追い抜いて
ブラウリオ達の足音が近付いて来たのは気付いていたが、酔っ払って周りに迷惑を掛けているのではと丸い引き手に手を伸ばそうとした時、中からアイルの声が聞こえた。
「もうおしまい…っ、わらしのむねをしゃわってもみんなのむねはおおきくならないんらから…っ(もうおしまい、私の胸を触っても皆の胸は大きくならないんだから)」
ほろ酔いになったアイルに1人が大きい胸はどんな感じなのか知りたいと言い出し、許可を出すと結局全員が持ち上げたり揉んだりとアイルの胸を触り、その間お酒が飲めなかったのでストップを掛けた。
「皆、アイルの胸を触るのは終わりにして話の続きを聞こう」
名残惜しそうにする最後の1人をセラフィエルが引き剥がし、飲み会と共に始まったお悩み相談室を再会する。
「ふぅ、やっとのめる…らけろしゃあ、ゴクゴク…ぷはぁ。はじめてがいたいのはしょーがないけろ、やりかたによってけいげんしゅることはできるれしょ。ちゅぎにしゅるときにあいだがあいてたとしても、しょれはおとこたちのどりょくがたりないんらよ(ふぅ、やっと飲める…だけどさぁ、初めてが痛いのはしょうがないけど、やり方によって軽減する事はできるでしょ。次にする時に間が空いていたとしても、それは男達の努力が足りないんだよ)」
「アイル、話し方がおかしい、大丈夫?」
「らいじょーぶ! しょーら! なかまのしゃんにんはなれてるからこうぎをひらかしぇればいいんらよ。こっちがどりょくしてるのにむこうはしないなんてふこーへーらもん!(大丈夫! そうだ! 仲間の3人は慣れてるから講義を開かせれば良いんだよ。こっちが努力してるのに向こうはしないなんて不公平だもん!)」
「それで変わったりするかしら?」
ガブリエルのお母さんによく似た女性が不安げに言いながら揚げパスタをポリポリと食べる。
「しゃんにんはしょーかんによくいくからなれてるのはまちがいないんらけろ、じょーじゅかどうかまれはねぇ…。あんがいしょうふのおねえしゃんまかしぇれじぇんじぇんらめということも…ププッ(3人は娼館によく行くから慣れてるのは間違いないんだけど、上手かどうかまではねぇ…。案外娼婦のお姐さん任せてで全然ダメという事も…)」
「アイル! 好き勝手言ってんじゃねぇぞ!!」
アイルが笑った瞬間スパーンと襖が開けられ、ホセが吠える。
そして次の瞬間固まったのはアイルではなくホセの方だった。
「なんれホシェたちがじょしかいにらんにゅうしゅるの! しょっちもだんしかいれもしてればいいれしょ!(なんでホセ達が女子会に乱入するの! そっちも男子会でもしてればいいでしょ!)」
ホセが固まっている事に気付かずふらつく足取りで目の前まで歩いて来ると、人差し指でホセの胸を突いた。
そのアイルの姿は胸を触られた時に着崩れ、かなりはだけて下着も見えているという状態だった。
「アイル、見えちゃうよ、っていうか下着が見えちゃってるから隠そうか。女の子なんだから、ね?」
エリアスが引き
アイルはグリンと首だけ動かして
「どうしぇゆかたはねてるあいだにはだけるからみじゅぎにもちゅかえるみしぇぶらちゅけてるもん(どうせ浴衣は寝てる間にはだけるから水着にも使える見せブラ着けてるもん)」
「あ? 何言ってんだ?」
『
胸を突かれたままのホセが不機嫌に聞き返しても仕方が無い状況だった…が。
「ちゃんとしぇちゅめいしたのに…、ホシェはきかなくていいことはぬしゅみぎきしゅるくしぇに…ふ…ぅ…ぁあ~ん! ばかぁっ、ホシェのばかぁっ!(ちゃんと説明したのに…?ホセは聞かなくて良い事は盗み聞きするくせに…。馬鹿っ、ホセの馬鹿っ!)」
アイルは風呂場でホセだけが会話を聞いていたと勘違いしていたが、号泣し始めたアイルを見て訂正する勇気は誰にも無かった。
その場に居るエルフ女性の無表情ながら軽蔑した目がホセに向けられる。
空気を読めないガブリエルですらこの異常事態にオロオロしている程だ。
ポカポカとホセの胸板を叩きながら泣くアイルの様子にホセは諦めた様にため息を吐いた。
「悪かったよ…」
思った以上にアイルが傷付いたと知ってしまったホセは怒る事を諦めてエドガルドの屋敷から持ち帰って愛用している夜着のボタンを外し始めた。
そして呼吸の為にアイルに隙が出来た瞬間獣化する。
「キュ~ン」
獣化し、悲しげに自分を見上げるホセに動きを止めたアイル。
「しょんなの…じゅるいんらからね…っ、ひしゃびしゃらからって…わらしがあまいかおしゅるなんて(そんなの…ズルいんだからね、久々だからって…私が甘い顔するなんて)「クゥ~ン」
しゃがみ込んで目線を合わせたアイルの顔に顔を擦り付け、仕上げとばかりにペロリと涙を舐め取るホセ。
この時点ですでにアイルは泣き止んでいる、そしてホセの首根っこの毛を鷲掴むとフラフラと歩き出した。
ホセは仕方無く脚に絡まる夜着を引き摺りながらアイルの進む方へついて行くと、そこは最初にアイルが寝ようとしていた布団だった。
ホセを押し込む様に布団に入れ、続いて自分も布団に潜り込むと正面から抱きつく様にワシワシと撫でながら腹毛に顔を埋める。
「ちゅぎはないんらから…(次は無いんだから)」
その言葉を最後にアイルは寝息を立て始めた。
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