第254話 エンリケのお試し加入
「ふふふ、既に何度もこの森に来てるけど、誰かと一緒だと気分が違うね」
エンリケは上機嫌で森の中を歩いている、今日は休養日が終わったのでお試しという事で一緒に依頼を受けて森へやって来たのだ。
エンリケが普段使ってる武器は短剣2本、戦闘スタイルはホセに1番近いかな?
………そう思っていた時期もありました。
ぶっちゃけエンリケは万能だった、今回の依頼は
300歳を超えているエンリケは当然魔法が使える、探索して発見して討伐して、しかも解体も出来ちゃう。
更になんとストレージまで完備!
何だかショッピング番組みたいになって来た、あれもこれも付いててお得です、パーティに1人エンリケを! みたいな…。
そんな事を思わずこぼすとエンリケは笑った。
「あはは、それは今まで1人だったから全部自分でやらなきゃいけなかったからさ。さっきまでは俺の能力を知ってもらう為にやったけど、ここからは連携優先にするよ。それに俺のストレージは容量がそこまで大きく無いんだ」
「そうなの? どれくらい入る?」
「う~ん、成体の
「ジュウブンダヨ…」
早々に依頼の素材を手に入れ、早めの昼食となり、食休みしてる時にリカルドが唸る様に呟いた。
「うぅん、これはまずいかもしれない…」
「え!? 何が!? 俺は『
「あ、いや、入れないとかじゃないが…、アイルが入って楽になってたのに、エンリケが入ると更に討伐も楽になるからSランクになってしまうかもしれない。だが俺達の実力でSランクになって良いものかと思ってな…」
「なんだ、そんな事か。それなら問題無いよ、だってパーティ総力でランクが決まるんだし、全員ちゃんと実力もあるじゃないか。
「それはまぁ…確かに…」
「そうだね、僕も上手いとは思ったけど手合わせしても良い勝負出来るとは思ったかな」
「そうね、あたしもSランクの背中が見えてるとは思ったわ」
「オレは何年かして実績さえ積めりゃいつかSランクになるって前から思ってたぜ!」
うんうん、だよねぇ、大氾濫でも飛び抜けて強いパーティとか居なかったし。
そうやって頷いていたら皆の視線が私に集まっていた、何事かと首を傾げたらエリアスが苦笑いを浮かべた。
「アイルにはわかりづらかったかな? つまり皆はエンリケを加入させてSランクになる覚悟はあるって言ってるんだよ」
「そ、そんなの「明らかにわかってなかったよな?」
わかってるよ、そう嘘
「ちゃんと言ってくれなきゃわからないもん…」
プイっとそっぽ向いた視線の先にエンリケの心配そうな顔が見えた。
「あっ、別に反対してる訳じゃないからね!? エンリケが入るのは大歓迎だよ!?」
「本当!? 良かったぁ」
だって長く生きてるせいか酔った私にも寛容な態度だったし、今後ホセに説教されてる時に
ただ魔法が使えるという私のアドバンテージが
「戦力が増えたなら二手に分かれて効率良く素材回収も出来るかもしれないな、ビビアナも結婚して妊娠するまでに稼いでおきたいだろう?」
「そうねぇ、今の内にたっぷり貯めておこうかしら」
「って事で、エンリケ、これからよろしく頼む」
リカルドが握手を求めて右手を差し出した。
「え? あ、本当に!? ありがとう!! こちらこそよろしく!」
エンリケは両手でリカルドの手を握り、満面の笑みを浮かべた。
「じゃあエンリケは町に戻ったら宿を引き払わないとね、ビビアナの新婚ベッドが出来るまでは一旦アイルの隣の客間を使って、ベッドが出来たら今ビビアナが使ってる部屋に移動してもらう事になるよ」
「わかった。ふふっ、俺の種族を知ってる人達と共同生活するなんて…今まで考えられなかったなぁ。あの時君達と出会えて良かったよ」
エンリケの笑顔はとても幸せそうで、だからこそ今まで孤独を抱えて来たのが伝わって来た。
よし、これからは遠慮せずにエンリケを家族として扱おう、仲間や家族の温もりをたっぷり感じて貰える様に。
食後はまた大蜘蛛を探して素材回収に
大蜘蛛なんてその筆頭な為、ギルドで「大蜘蛛素材は不足しているので優先的にお願いします!」と言われてほぼ強制的に依頼を受ける事になったのだ。
結局12体の大蜘蛛を討伐して町へと向かう、途中から様子を窺っているパーティがいくつかあったせいでエンリケの魔法は封印したが、短剣の腕前だけで十分戦力として頼りになった。
「今日からエンリケが『
「あっ、それなら豚骨ラーメン? っていうの? 一昨日ギルドでガブリエルに会って自慢されたから食べたいなぁって思ってたんだ!」
「へ? ギルドにガブリエルが?」
「あはは、ギルマスに豚骨ラーメンの自慢しに行ったんじゃない?」
「間違いねぇな…、迷惑な野郎だぜ」
「よっぽど嬉しかったんだろうな」
「ふふっ、仕方ないじゃない、自慢する相手がギルマスしか居ないんだから」
「「「「…………」」」」
エンリケはガブリエルをよく知らないからキョトンとしているが、私達はビビアナの言葉に何も言えなかった。
そしてその日の夕食にはバレリオから分けてもらったスープで豚骨ラーメンが出され、その準備の時にエンリケの包丁捌きはビビアナよりマシ程度であり、ストレージは時間停止ではない事がわかってちょっとホッとしたのは内緒だ。
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