第23話 川町の部屋に酒を備蓄してるとお思いでしょう?ちゃうの、川町が部屋出てって田嶋のとこから持ってきてたんやで…(遠い目)


帰宅すると、ながれとにしきは菊市の部屋の前でクッションに寝そべっていた。

足音を聞きつけ、むくっと起き上がる。

「お帰り」

「おかえり!」

「ただいまさーん」

3人は思い思いにながれとにしきを撫でていく。7時過ぎだが、外にいるのはちょっと珍しい。

「外にいるの珍しいっすね?」

「ご飯食べた~?」

「田嶋がくれたぞ」

「からあげ!とおかかおにぎり、あじがこいの」

「へ?菊市さんは?西崎さんもいない?」

「二階にいるぞ」

「にかいで、たのしそう」

「なぁ、明智いい匂いがするぞ!」

「いいにおい!」

ながれは明智のビニール袋に鼻をよせ、にしきはぐるぐると周りを回る。

お土産に大量に買った肉巻きおにぎりは、みんなのご飯になればと思ったが、明日のご飯になりそうだ。

特別に一つだけ、ながれとにしきに食べさせて谷村は2人を部屋に入れた。


二階の川町の部屋が騒がしかったので、3人そろって二階へ向かう。

「西崎さーん、戻ったっす…あ…ら?…!?」


部屋の中では田嶋以外全員が酔っ払って騒いでいた。

机…と床にはさらに空き缶と酒のびんが散乱している。


「…すまん…谷村、平野!!田嶋に酒かまされてな…、明智ぃ~!!」

「何が…あったの?」

「小松が何か悩んでるってな、川町の部屋に来たらしくってな、んでな、田嶋がな、飲み物に酒混ぜて飲ましたのを皮切りにな…」

「なんで酒なんすか…」

「相談に来た割には肝心な所話したがらねぇから、酒入ればいけるかなって」

「んで…なんで西崎さんや菊市さんまで…川町はわかるケド。」


「こいつオレのお茶にも上手く酒仕込んでたんやぁ~!」

「菊市と西崎も呼び出してな…ふっ…言うの忘れてるうちにガッツリ飲んじゃってなぁ…。…はっはっは!ついでに振舞っていったんだ」

「クールな田嶋さんがこんだけ笑ってんの、ある意味ショックっすよ」

「酒、追加したそばから誰か飲んでいくのが面白かったぞ」

「お、オレは飲まされたんや~!」


机に突っ伏した菊市。田嶋に説教している川町。笑いながら懇々と絡み続ける小松。小松に捕まえられ泣いている西崎。部屋は混沌と化していた。

「兄…ちゃん!聞いてんの!!怒ってんだよ、ぼくはお金なんかいらないの!!兄ちゃんが居ればいいんだから!」

「はいはい、ちょっと黙ってろな…」

田嶋が川町にチュッとする。

「んん…こんなんじゃ騙されないからネーーー!」

「そろそろな、お開きお開き、さー部屋に戻るぞ」

「大丈夫っすか?川町。」

「ああ、2回くらいヤれば意識とぶだろう。じゃ…」

川町をお姫様抱っこし部屋を出ていく田嶋。


「さらっと何言うとんねん」


「テクニックを教わりたい…」

「ダメっ!あんなの手本にしたら先生許さない!」

菊市がガバッと起き上がり、谷村に詰め寄っていく。菊市はシャツのボタンがすべて開いていた。

「菊市さん、その前にまともに上着着てください…。閉めるよ、ボタン」

「あーつーい。」

西崎を捕まえてた小松が、平野に気付き、今度は平野の腕を掴む。

「平野くーん!どこに行ってたのさ!さては浮気!僕という正妻が居ながらっ!!…正妻だって、くすくすっ!!それとも汚いから、いらないんだぁ~あっはっはっはっ!」

「何言ってんだよ小松、浮気もしてねぇし、汚いなんて思ってないぞ」

「じゃああ!最近キッスしかしないし、…うっふっふっ!」

「いや~、壊れてんねぇ、小松」


「そ、そんなんじゃないんだよ、大事にしたいんだ!」

小松の発言に平野が慌てる。小松はほわほわした顔のまま小松は平野の背中に腕を伸ばし抱き着く。

「僕、お人形じゃないもん、壊れたりしないもん…くすくすくす」

「そうだよ、私なんか人間じゃないし…!あははっ!!」

菊市がまたガバッと起き上がり話に加わる。

「えーん!だれか毒舌笑い上戸とめてくらさい…」

「西崎さん、落ち着こうね、はいはい、困ったねぇ~」


菊市はふらふらと立ち上がると教師風に腕を振って言った。

「えー、要するに、小松くんは欲求不満なのですっ!ネっ!!」

「菊市さん!正解です!また、抱かれてみたいのです!!ネ!」

「よかったな、テクニシャン平野!えーーん!!」

「泣き止もうねぇ、西崎さーん」

明智が西崎の頭をなでる。

「どう考えても褒められてナイ…。」


田嶋が収拾にやってきた。

「お前らまだ騒いでんのか?ほらほら、戻れ、散れ」

小松は平野の首にしがみ付いたまま離れない

「ひーらのくん、かっえりましょ!うふふっふ」

「はーい、帰りまーす。明智さん、おれ小松連れていきます。」

「うふふふふ、コアラ」

「それじゃ」

前から抱き着かれたまま、平野はしょうがなく小松を抱っこし部屋へと戻っていった。


「うぃー、たのもー、菊市さんもお引き取りを~」

明智が菊市に言う。

「先生、帰ろー」

「いやだーー!谷村、田嶋みたいにお姫様抱っこしろー、カゴを持て―」

「カゴを持てーー!菊姫がご所望やぞ~!!」

「はい、喜んでー、よいっしょ…帰りますぞ、菊姫」

「わーーい!」

意外と体力のある谷村が、菊市をお姫様抱っこして部屋を出る。

「じゃ、あと頼みます明智さん」

「西崎バイバーイ!」

「菊姫バイバーイ!」

谷村に姫抱っこされたまま、上機嫌に西崎に手を振る菊市。

西崎はぐしぐしと涙を拭きながら、手を繋ぐと明智に連れられて部屋へ帰る。

狂気の飲み会はお開きとなったのであった。




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