一柳荘の人々
うさと飴
第1話 相談だけど、知らなくて良いこともあった
コーヒーを片手にミニテーブルに片肘ついたまま畳に座ってるのは、オレ。西崎。
その向かいにオレが入れたカフェオレにも手を付けず深刻そうな顔で座ってるのは川町、オレのアパートの住人だ。
話が進まないので、オレから口を開く
「相談て何?」
意を決して、相談内容を話し出す川町。
「ねぇ、好きだってどんな時に感じる?」
「はあぁ!?」
質問の主旨がわけわからんなぁ。
一度話して勢いがついた川町が話し出す。
「どんな時に、好きだって思う?」
ここは「一柳荘」と言う古びた木造アパートだ。元は一軒家を親父がリフォームし、学生を住人にした。
両親は、アパート経営を息子のオレに任せて別で暮らしている。木造だけど、オレの巧みなメンテナンスでいい感じの古びた所が気に入っている。
今は7人の住人がいる。田嶋、川町、小松、平野、谷村、菊市、皆んな男…。年齢は、昔学生だった頃から居座ってるのもいるし、結局30代まで住んでいる。オレも30近い。
質問している川町は20才、花屋でバイトしている。年齢の割にコロコロとよく動く元気なお子様だ。精神年齢はだいぶ低い。うーむ…。
「ねぇ!どー思うの?」
オレがぼーっとしていたので身を乗り出して川町が言う。
「どうって…、何があったんや?」
「かくかくシカジカで……」
「略すな!…詳細を述べろ!」
「ごめぇん…」
やや消沈した川町。かくかくシカジカでは分からんからな。
「ぼく…付き合ってる人がいるんだ…」
「へー。相手知ってる人か?」
「田嶋さん」
オレはコーヒーを噴き出した。
「田嶋!?は?あいつと!?」
川町は照れながらも笑顔で頷いた。
「うん」
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