凄腕の剣士

「さてと、行ったわね」


南の祠へ向かうシオンを見送った後、アイラは広場へ向かった。村の広場には全ての村人が集まっていた。


「アイラ殿、すでに説明は終わっております」

「ええ、ご苦労様です村長」


アイラは集まった村人に声を掛けた。


「すでに村長から説明があったと思うけど、この村の場所が魔王軍に知られました。既に魔王軍の1軍団が南東の海岸に到着しています。王国からも援軍要請をしてありますが、距離的に間に合わないでしょう。故に、『全ての村人』に避難して頂きます!」


ざわざわ

ざわざわ


「王国から新しく住む場所や仕事の斡旋などの援助要請をしてあります。住み慣れた場所を捨てるのは悔しいですが、生きていればまた戻ってくる事もできます!急いで準備して下さい!」


アイラの言葉に村人達は荷物を運ぶ為に動き出した。


「アイラ殿、村人全員と言いましたが、ワシらは残りますぞ?」

「村長!?」


「アイラ殿もお忘れでないか?ワシら長老のみ伝わる盟約の秘術を。それにアイラ殿のみ戦わせてはシオンに会わせる顔がないのでのぅ?我々勇者の血脈の力を魔王軍に思い知らせてやるのじゃ!」


村長はカッカッカッと笑いながら行ってしまった。この村の重役は知っているのだ。この村が見つかった時に何をすべきなのかを─


アイラはシオンの無事を祈るのだった。


「シオン。この村は私が命を掛けて守るから。どうか無事で………」


アイラは空を見上げて呟くのだった。



一方シオンは─


「………なにこれ」


南の祠までの道のりは特に問題無かった。1日掛けて無事に魔王軍と会わずにこれたのだが、問題はたどり着いてからだった。


南の祠の周辺には、おびただしい数の魔物……いや、魔王軍の兵士達が倒され死んでいた。


「もしかして魔王軍の目的は勇者の血筋の撲滅の他に聖剣の捕獲もあったのか?」

「でも一体誰がこれを?」


正直、こんな事ができるのってお母さんぐらいしか思い付かないんだけど?グレンは死んでいた魔物を軽く調べて言った。


「アイラ様じゃなさそうだぞ?一部魔法を使った形跡はあるが、ほとんどは剣で斬られているぞ」

「えっ、マジで?こんな事ができる剣士って村に居たっけ?」


シオンとグレンはう~んと考えたが思い付かなかった。


「取り敢えず、早く祠に入ろう。すでに魔物も入っているかも知れない」

「そうだな。これをやった人物もいるかも知れないしな」


二人は南の祠の中へと入った。祠と言っても、入口から地下へと続き、中は迷路になっていた。中は光ゴケが生えており周囲が見渡せた。


「マジかよ。中の構造なんて聞いてないぞ?」

「取り敢えず、先に進むわよ!」


先へ進もうとするシオンにグレンが止めた。


「待て待て!闇雲に進めば逆に迷って時間を喰うぞ?」

「大丈夫よ!血の跡を追って行けば良いのよ♪」


確かに地面には血の後が続いていた。


「先を急ぎましょう。もし魔王軍を殺った人の血なら早く手当てしないと。こんな所で死なせる訳にはいけないわ!」


グレンも頷き、生活魔法のライトを使いより明るさを確保して先に進んだ。

進んで行くと何度か野良の魔物と遭遇したが、難なく剣の錆びと消えた。


「思ったより弱いな?」

「そうね。歯応えがないわね」


魔物と遭遇した事でより警戒を強めながら先を急いだ。かなり広い地下ダンジョンとも呼べる南の祠の中を進み、遂に聖剣が安置されてそうな扉の前にたどり着いた。


「見て!?人が倒れているわ!」


シオンは急いで駆け付けると壁に寄り掛かるように人がいて、血溜まりが出来ていた。


「おい、これはもう………」

「いいえ!まだ息があるわ!」


シオンはすぐに回復魔法を唱えた。


「彼の者を癒したまえ!『ハイヒール』!!!」


シオンの回復魔法によりどんどん傷が塞がっていった。


「………相変わらずデタラメな回復魔法だな。勇者の血筋っていうより聖女の家系って言われても不思議じゃないよな?」


倒れていた人物は男性で、銀髪の腰まである長い髪に、長身で………耳が長かった。


「うわっ!」

「どうした!シオン!?」

「凄い美形だわ!」


グレンはシオンの頭をぐりぐりした。


「痛い!痛い!」

「お前の頭を治療しろ!そこじゃないだろう?耳が長いってことは、この人はエルフじゃないのか?」


なるほど!エルフって美形が多いって言うしね!

シオンとグレンが漫才をしていると、目を覚ました。


「ここは?俺は生きているのか?」


その人物はシオン達を見ると警戒したが、周囲を見渡し状況を把握した。


「お前達が助けてくれたのか?」

「はい、酷い怪我でしたので回復魔法を使いました。大丈夫ですか?」


シオンはどうしてここにいるのか尋ねることにした。




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