福虹
勝利だギューちゃん
第1話
雨上がり
虹が出た。
二重に・・・
福虹というらしいが・・・
「ほら。虹が出てるよ」
となりにいた彼女が、指をさす。
七色の橋が、ふたつかかっている。
さっきまで、相合傘をしていた。
その傘を、僕は閉じる。
彼女と言っても、恋人ではない。
今日、初めて会う。
出会いは必然。
どしゃぶりの中、僕は傘をさして歩いていた。
すると、歩道橋の下で雨宿りをしている彼女を、見かけた。
べたな展開だ。
僕は彼女に傘を差しだし、自分は走るつもりだった。
しかし、たまたま行く方向が、途中まで同じなので、相合傘で向かうことにした。
学校は違うが、同い年らしいので、敬語は禁止となった。
「今日の、私たちみたいだね」
「うん」
しばらく、ふたりで眺めた。
青い空に、映える。
「では、わたしはここで。本当にありがとう」
彼女が言う。
「何のお役にも立てなくて」
「ううん。楽しかったよ。男の子と歩けて」
それは、こちらも同じ。
「じゅあ。ご縁があればまたね」
「ええ、また」
おそらくはもう、会う可能性は低い。
名前も連絡先も交換していない。
一瞬の出会いに、それは野暮だ。
でも願わくば、あの福虹のように、出会うことも、面白いかもしれない。
彼女の背を見送った後、僕は駅へと向かう。
福虹 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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