飲食店で、パートする。
立ち上がった未華子の腕を掴み
「そんな理由なんて
認めない、未華子を嫁には
行かせない。
どんな手を使ってもな‼
俺は離婚なんて認めないからな‼
裁判起こしてでも覆す。
不履行だ、他の男との結婚なんて
俺が許さないからな‼」
蒼生はどーしょうも無い事をデカイ
声で叫んでいた。
未華子は
「どうもこうもならないと
思う。サインしたのは
蒼生自身だし!」
自由に生活したい
まだ遊び足りない
かと言って未華子とは別れない
と言う。
そんなの犬の遠吠えじゃあ
ないの‼
我儘‼
「じゃホントにコレで
さよなら」
ソファーに座り睨み付けブルブル
と震える蒼生に恐怖を感じ
未華子はマンションを飛び出した!
「なんじゃ、アレは!」コワ〰
1週間後未華子の退職が発表された
表向きは寿退社。
沢山の花束を抱え花に抱かれる
様に長年務めた会社を後にした。
蒼生も笑わない拍手をしていた気
がする。
ハアァァァア━━━
見栄張って退職したものの
これから先どうするかな━━━━ぁ
人生生きているうち三回は
どうしょうもない困難に合うって
おばあちゃんが言ってたな‼
今が一回目のその時なのかな‼
蒼生は・・私を好きだったの?
まさかね!予定通り都合のいい
女にするつもりだったのかよ、
重たい足を引きずりながら
マンスリーマンションへと帰る。
毎日求人誌と朝から夜まで睨めっこ
マンションは昨日決めてきた。
2Dkのセキリュティがしっかりした
のがキメて、新築マンションで予算
オーバーしたけど、ま、仕方ない。
年上彼氏ばかりだったし
蒼生は年下金持ち彼氏だったし、
実家暮らしだったこともあり、
マンション買うのは、大丈夫な
金額が通帳には並んでいた。
明日引越しだから住む街をブラブラ
丁度居酒屋の募集が出ていた。
最近募集の文字に敏感。
軽い練習の気持ちで面接を受け
なんと採用された。
本業が決まる間での腰掛けの
つもりで入った飲食業
誰でも出来るとナメていた。
「今日から一緒に働く関田未華子
さん、分からない所は
先輩の皆さんが教えてあげて
くださいね。」
「は━━━━━い。
う━━━━━━━っす‼」
背の高い25歳のイケメン店長さん
痩せ型で目がクッキリと濃ゆい。
飲食業らしく髪はキッチリと
ビジネスカット、
従業員の評判もいいらしい。
12月に入ってからバイト生も入った
らしく高校生も沢山いた。
「オ━━━━━プンしま━━━━す。」
その掛け声で皆パラパラと
持ち場に付いた。
未華子はポツンと残り、何を
していいか分からない。
皆忙しそうにしているのに動けない。
ゴツイ体格の人が現れ
「ボヤボヤするな!
仕事は自分で見つけてやるんだ‼」
「え‼え━━━と、ハイツ
と、何しましょう。」
「洗い場、溜まってる"」
イカつい顔だが日本男子つポイ
かなりイケメンだが
取っつきにくそうな威張った感じ
「は、はい。」
取り敢えず洗い場でデッカイ鍋
や、それよりデカい寸胴鍋
デカーイまな板が洗い場を占領
するかのように積まれていた。
華奢な未華子は鍋はデカいし、
重いし抱えるのも
一苦労。
イカつい彼はどうやら料理長と
呼ばれるDON的な存在らしい。
「おい、スピード、スピード」
後ろからDONがせき立てて
彼が顎でクイクイすると16歳の
バイト君が走り寄り洗い場に
入って来た。
未華子は頑張って洗っていたが
彼が入ると瞬く間に洗い場が
スッキリして来た。
「分かったか‼
スピードかつ綺麗にな‼」
怒鳴るように言うからビビる‼
自分より16下のバイト君に
「関田さん、慣れですよ、慣れ
鍋も抱えるのは要領良くやれば
上がりますから。
鍋の真ん中をこのステンレスに乗せて、くるりと半壊転させれば力は
半分ですみますよ。
洗い場も、その内回るように
なりますから
頑張って下さい。」
と励ませられた。
席が満席になる11時半
厨房はピークへと突入、戦場の
様に様変わりする。
未華子は何も出来ずバタバタと
初日は、終了した。
`ァ'`ァ💦とグッタリ
疲れまくった体を引きずり
新居のマンションへと
やっとの思いで帰ってきた。
一日中立ちっぱなしで足パンパン
リビングに倒れ混むように眠って
しまった。
今迄の仕事とは180°違う。
甘い考えで足を突っ込んだ事を
後悔した。
私に向いてないかなぁー
やめよっかなぁー
2日目
「関田さん、包丁は使えるよね‼」
40代のパートらしき人が声を掛けて
来た。
「は?包丁・・・使えるってか
握るくらいなら・・・」
「え?え━━━━━━━っ‼
まさか使えないの‼
包丁・・💦」
「使えるか使えないか
使った事無いから分かりません。」
「はあ━━━━━アンタ幾つ
お嬢様?30過ぎたマサカの箱入り?、
ꉂꉂあははは」
こりゃ呆れたとばかりに年配の
パート山内さんが叫ぶ!
「ちょっと、料理長に報告して来て‼
包丁使えないって‼」
山内さんが叫ぶと
河本さんが焼き場へと走る。
《《料理長━━━関田さん厨房じゃ
つかえませーん。
ホ━━━━ルに回しましょう。》》
料理長はマジかと言うしかめっ面で
焼き場から出てきて
ガクッと項垂れたが気を取り直し
「やる気はある?」
と未華子に聞いてきた。
「はい。」
辞めるにしてもコケにされたまま
では負けず嫌いの名折れだ
やるだけやってダメな時は辞めよう。
端(ハナ)から諦めたくない。
山内さんは
「料理長、怪我でもされたら
大変ですよ。
厨房は要りませんて、ホールに
出しましょ。」
料理長はじーっと未華子を見て
「よし‼
包丁の持ち方から私が教える
1週間だけ、預けてくれ‼
迷惑かけるが・・・」
料理長の甲斐田悠は、パートの
山内さん、河本さん、佐藤さん
に頭を下げた。
「わ、分かりました。
まーったく期待はずれも
いいとこですよ‼
包丁も握れないのに厨房に
来るかいな‼」
キリッとした山内さんが嘆く
仕事が回らないから募集したのに
包丁の握り方からなんて信じ
られない‼
料理出来ないなんて
甘やかされて育ったようにも見える
と言いたい放題。
余計仕事が増えてと
河本さんも佐藤さんも苦笑い。
何と言われても仕方ない、自分の
甘さから店に迷惑かけたのは
間違い無い‼
厨房のスタッフは黒シャツ
黒エプロン、黒いパンツ
未華子も同じ格好をしている。
仕事は何も出来ないのに同じ
格好をしているのは申し訳なく思う。
「あーあー仕込み楽になると
思ったのにな━━━━‼
これじゃ、ハァ16、17の子を
引っ張って来た方が未だマシよー」
陰口も叩かれ高校生の子に
「あんま、気にしないがいいっす。
あの人達のせいで厨房は人手
不足なんスから‼」
と慰められ、苦笑い
「関田さん。
飲食店は、お客様から見たら
皆プロなのよ。
分かってる、ちゃんとやってね。💢」
「は、はい。」
自分も新入社員にやかましく
怒った事もあった。
何人も泣かせた、だから山内さん
の気持ちもよく分かる。
店が引けると厨房には
料理長と二人
まな板を出し、包丁を握る。
キャベツの千切りから始まる。
グワサッグワサッ
まずは半分切り、言われた通りに
スパ━━━━━━━━━ン‼
ア"ア"ア"ァ"ァ"ア━━━━━‼
牛刀は切れ味バツグン
キャベツは真っ二つ‼
〃ゴラア━━━━ッ〃
ヒッ‼
〃まな板の下に濡れ布巾しかんかー〃
ヒッ‼
バタバタと濡れ布巾をしく。
「すっ、すいません‼」
「日頃からちゃんとスタッフの
動き見とかないと!
怪我するぞ!」
プッン、プッン、プッン‼
イライライライライライラ
料理長のピシピシとした怒りが肌を
つつく‼
「あのなぁー関田さん。
千切りはもっとリズムよく
しないと夜が明けるぞ‼」
「す、すみません。」
料理長は後ろに回り
「こうして、こうして、こう。」
料理長の顔が髪に重なり肌が近い。
重なる手を手で感じてしまう。
相変わらず無愛想な感じだが
食材を扱う手に優しさを感じてしまう。
出来ないスタッフを叱るより
上達させる事を熱心にやる人だと
尊敬してしまう。
にわかに店先が賑やかになる。
明かりが見えたからか数人の
外国人が入ってきた。
料理長は流暢な英語で
お断りをして、帰ってもらった。
未華子も聴いていたが可成の
英語力だった。
料理長は多分未華子と2人っきり
だからワザと皆に怪しまれ無い
ように灯りを落さなかったのだろう。
厨房は外からもよく見えるように
硝子貼りで見渡せるようになって
いる。
気配り出来て語学も堪能、
中国語、韓国語でも、さっきの
外国人に謝っていたのを聞いていた。
サービス券も、謝りながら配って
いた。
彼の思いに応えたい。
未華子の本気は度を越している。
甲斐田悠、只者では無い
未華子の長年に渡る勘がそう
感じていた。
懲りずに仕事終わりに、毎日毎日
スーパーへキャベツを
買いに行く。
未華子の一生懸命は甲斐田の気持ち
に応えたい、それだけに頑張った。
みっちり指切って、血出して
指に輪ゴムで血止めして上から
ビニールの手袋をして練習した。
未華子の千切りはやる気スイッチON
日に日に細くなって来て
店に出せるようになって来た。
1週間と言うが手は豆が出来
寝る間も惜しんで没頭した。
不眠不休の1週間だった。
その成果もあり上手く切れる様に
なり、
料理は、始めてみると中々面白い
事にもに気づいてしまった。
未華子は料理にドンドンハマって
行った。
パートだったためシフトを減らし
魚屋にバイトで務めるようになった。
掛け持ちって奴だ。
魚の裁き方を魚屋の大将に
手ほどきを受け裁き専門になった。
魚を買い付けまた夜通し
練習に励んだ。
キャベツの次は魚、未華子の
親友、和歌と恵子の家に
調理方法を書込み届けた
調味料の材料は毎日の事だから
店仕込みの味だ
ハズレな訳が無く間違い無く美味し
いはず。
家計の足しになると2人は大喜び
いよいよ魚も捌けるようになると
魚屋のシフトを減らし休日は肉屋の
門を叩いた。
そうこうするうちリブロースも
捌けるようになり未華子は魚屋
でも肉屋でも重宝される人材に
なって行った。
忙しい日には必ず手伝いに来ると
約束して本業の居酒屋に休みがち
なシフトをもどした。
思えば半年の月日が流れていた
忙しく一生懸命な月日のお陰で
蒼生の事をすっかり忘れていた。
無我夢中で蒼生がアメリカに帰る頃
も、鯛や、ヒラメ、カレイ
などの刺身に没頭していた。
離婚の傷を忘れる様に山内さんは
協力してくれたのかと思う程
蒼生の事を忘れていた。
こうして未華子は居酒屋に
全シフトを移した。
〃ば━━━━ん〃
厨房のまな板の上にまん丸とした
カツオが載っていた。
「関田さん、半年厨房にいて
見てたんだから捌いて‼
勿論、出来るよね‼」
騒ぎを聞きつけた店長が慌てて
飛び出して来た。
「山内さん、さすがにマズイですよ。」
「店長、甘やかしていたら
何時までも成長しませんて‼
最近シフトも減ってたし、
人少ないのに、負担がこっちに
回ってくるんですよ‼
やらせないと店まわりませんよ。
年末年始、の事考えたら今から
やらせないと‼」
「然し、赤字が出たら
本社に報告しないといけないし」
「何ビビってんですか‼
分かりました赤字は私達で
補いますから、店長は引っ込んで‼」
河本さんも
「料理長も店長も、関田さんに
甘いですよ。
皆、陰で言ってますよ、関田さんの
仕事は楽だってね‼」
「然し・・・」
店長は煮え切らない態度で山内さん
の申し出をどうしたものかと
困り果てていた。
「・・でも、料理長の許可が無いと‼」
未華子はカツオくらいチョロかった。
スズキ、ヒラメに比べると
丸々してるし捌きやすい。
「関田さん、やれる?」
心ぼそそうに店長が耳元で囁いた。
黙って頷く未華子に、山内さんが
出刃包丁を差し出す。
未華子が受け取ると水を打った
ように静かになった。
皆が息を飲む中
パパパパと三枚卸がまな板に
並ぶ
カツオに、焼きを入れて大根の
ツマとシソの葉の上にカツオの
叩きが横たわり
シソの花がポイと真ん中に飾られた。
オーオオオオーオオオオーオオオ
そこへ剣幕の料理長が厨房へ
駆けつけた。
「誰が許可した?
勝手な事をするな!」
店長の予想どおりの展開になる。
皆=͟͟͞͞=͟͟͞͞==ササッといなくなり
厨房には山内さんと未華子と店長が
睨み付ける甲斐田の前にいた。
「すみません、私が止めるべき
でした。」
店長が謝った。
「いえ、私が捌けと言いました。
年末年始の為に今から鍛えようと
思ったんです。」
山内さんも申し出る。
「いえ‼ 捌けるようになった事を
自慢したくて私の独断でやりました。
あまりに見事なカツオでしたので‼」
未華子もつい嘘で2人を庇った。
「何処で覚えた?
見事な裁きだ‼」
「スーパーの魚店で
無理やり、シフト休みの日に
雇ってもらって覚えました。」
「ん?まさか魚華?」
「そ・・・うですけど‼」
ハハハハハハハハハハハハ
「マジで‼兄貴の言っていた弟子って
関田さん?
しつこく通って来るからバイトに
入れたって、なげいてたが
アハハハハハハ
そ━━━━━━か‼関田さんか!」
「マジでヤバイんですけど・・・」
店長が未華子を見て囁く
「大丈夫、兄貴の仕込みなら
間違い無い‼
俺より上手いかもだな!
そのまま続けて‼
外国人の予約入ってるから」
それをか聞いた店長はやせ細った
胸をホッとなでおろした。
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