俺達の道は重ならない。
蒼生の父親夏生も香織の母親ミカも
裁判迄持って行き、
制裁するつもりだった。
裁判を起こせば会社にバレて、
親兄弟親戚にもバレる
それを狙っていたが、蒼生と香織の
事まで話さなくてはならない。
彼等の未来を考えると記録に残る
制裁は得策では無い、そう考えて
夏生もミカも手を引いた。
蒼生の母ミカは数億と言われる資産を
手放す事になる、まだ蒼生の祖父母が
管理している為、財産分与には
当たらない。
夫婦の財布も別だった為折半は
した物の、長年の不倫の慰謝料請求
は、かなりな額を示していた。
このまま夏生の嫁で居たなら何不自由
ない生活がおくれて居たはず。
菜々香は、ミカにも慰謝料請求され
かなりな額を渋々受け入れた。
ミカは菜々香の会社に内容証明を
送り付けた為、不倫バレして
同僚の知る事となった。
積み上げたキャリアも、顧客の信頼も
何もかも失う事になった。
噂千里をかける、昔の人は良く言った
ものだ、人の旦那を取る女は
信用出来ない、しかも親友の旦那を
寝とるとは・・・
噂には尾鰭、背鰭が付き物
噂は膨らんで膨らんでとうとう
長年務めた会社を辞める事になった。
かつて、ブランド品で身を固めた
女王様は慰謝料請求に怯える日が
続いた。
蒼生にも、見放され仕方なく
パートを掛け持ちしながら
ギリギリの生活が始まった。
それは慎吾も同じだった。
多額の慰謝料にどんなにバッシングを
受けても辞める訳には行かず
分割で夏生とミカに慰謝料を払い
続ける事になった。
この年で部長まで上り詰め
一気に窓際族へと落とされる、
さぞかしミカのやった復習は爽快な
ものだろう。
菜々香と慎吾は罵りあい、喧嘩ばかり
な日々を仲良く過ごしているらしい。
運命の相手なのだからさぞかし
満足している事だろう。
蒼生と香織は夫婦になるはずが
兄妹になってしまった。
嫌がらせの為、蒼生は母親
香織は父親に付いたからだ。
2人の未来を、苦しむ姿を見て行く
為に・・
しかしそれも終わった、
籍は、母親でも実際は父親と暮らし
やがて父親は再婚し継母がいる。
今の母親だ。
蒼生は暮らしているとはいえ
アメリカの大学に編入してアメリカの
大学を出た。
香織と決別する為に‼
香織も大学在学中に結婚した
蒼生の全く知らない男と、
卒業すると香織はパッタリと姿を
消した。
それから七年・・・・
香織は蒼生の元に現れた。
「元気・・だった。蒼生?」
「おう、身体は丈夫なんだよ。
香織は結婚したんだろ?
幸せか?」
「そっか、蒼生知ってたんだね。」
「旦那どんな人?」
「普通の人よ!」
蒼生は香織の様子に違和感を感じ
「おい、おいアメリカに来る事
旦那は知っているのか?
まさか黙って出てきたんじゃ
ないんだろうな‼
香織、俺達の母親、父親の、
真似だけはするなよ!」
「う・・・・ん。
わかってるよ。」
「なら良いけど。」
「おじさん、再婚されたのね
仲良く買い物されてた。
綺麗な人だった。」
「ああ、あれから同窓会に
行った時、知り合ったらしいよ。
母さん気さくで人懐っこくて
俺にもベタベタしてサ
可愛らしいよ
お節介すぎるけどな‼アハハ。」
「そう、蒼生のママ
知ってるの?」
「今は香織の親だろ!」
「私たち兄妹だから2人の
母親よね。」
「母親?
そんな事思ったことないな‼
あんな女どうなろうが
知った事じゃない‼
今の母親が俺の母親さ‼」
「やっぱり、ホテルをとろう。
既婚者の香織と一夜を過ごすのは
違う気がする。
ホテルを取るよ、何泊するの?」
「蒼生、変わったね
私達ってそんな他人?
愛し合った仲じゃない。」
「香織、あの時の俺じゃないよ、
君がそうじゃないように
俺やっと、大好きな人に出会えて
手に入れた婚約者がいるんだ。」
「エッ」
香織は、嘘とばかりに顔をあげた。
「香織も、旦那がいるだろう!
俺達は別々に人生を歩いてる
俺達の背負ったキズをパートナー
にも背負わせるのか?
たとへ何も無かったとしても信用は
されないよ、俺達が良く分かって
いるだろう。
香織は女で、俺は男だ‼」
「蒼生、私、彼と別れたいの‼
どんなに優しい人でも
蒼生と比べてしまう。
蒼生が忘れられなくて・・・・
私蒼生がいいの・・
蒼生が好き。
又あの頃の様に蒼生のそばに
いたい・・ダメ?」
「ゴメン香織、俺はあの時と
違う。
俺も香織より好きな人は出来ないと
思って来た。
香織に無性に会いたくなった事も
ある。」
「じゃあ良いじゃない。」
香織は嬉しそうに満面の笑顔を向けた
「悪いけど・・
その人の見合いをぶち壊してまで
手に入れたかった。
今は彼女が一番で香織の事忘れてた。
彼女を守りたい
大事にしたい
愛しているんだよ。
俺は香織じゃなくて・・
彼女が良いんだ‼ ゴメン。」
香織は目にいつぱいの涙を溜めて
「ウッウッウッ時間って流れるように
過ぎたのね。
もっと早く会いに来れば良かった。
残酷よね。
もうあの頃の蒼生は居ない・・の?」
「ゴメン
今は彼女しか見えない‼
籍も彼女との結婚をメドに
父親に移すよ、復習は終わるつもり
今度帰国したら裁判所で手続きするよ
香織とも、兄妹じゃ無くなるな!
早くそうするべきだった。」
そう俺が結婚を軽く見て盆、正月
だけ過ごす嫁を探していたのは
本気の恋愛は不必要と思っていた。
母親の裏切りに傷付いたし
パートナーにも傷ついて欲しく
無かった。
お互い自由な恋愛、束縛なしな人生
それを望んでいた。
愛だの恋だの馬鹿らしい。
人生は好きにいきようが
苦しんで生きようが
終点は一緒‼
なら面白、可笑しく自由に生きた
方が得、悩んだり苦しんだり
馬鹿らしい!
愛情なんてものが邪魔だった。
盆正月だけで後はお互い自由
生きたいように生きる。
苦しむなんてナンセンス
嫁、姑問題もナシ‼
たった一度の人生じゃないか
楽しみたい!
そう思っていた。
あの頃、香織が結婚したと聞いて
ホッとした。
俺は香織への責任感から解放された、
俺もやっと自由になれた。
しかし未華子にあって180°変わった
未華子を好きだと自覚して
香織にも持たなかった嫉妬、
感情の起伏の激しさ・・喜び
そんな気持ちを知ってしまった。
未華子に会いたい♥
「羨ましいな
蒼生に愛されてるなんて・・
学生の頃から私、
皆に羨ましいって言われてた。
皆こんな気持ちでいたんだね
憎たらしくてドロドロな気持ちよ。」
香織はパスタを、ゆっくりと
食べた。
蒼生もコーヒーをゴクリと
飲んだ。
流れるジャズは切なく2人のきりの
時間はやっと戻ったのに
それは重なる物では無かった。
ハッキリとした別れの時間だった。
「蒼生、ありがとう。
明日帰る、旦那にも連絡する。
蒼生への気持ちも落ち着いたし
スッキリしたよ!」
「おう、」
「またね!
お兄ちゃん。
良いお兄ちゃんだったよ
ありがとう。
又ね」
「あ、ああ、又な香織」
香織をホテルにチェックインさせて
前料金で支払った。
エレベーターに乗る姿を見て
呟いた。
「香織、幸せになってくれ。」
またね、とお互い手を振ったが
お互い分かっていた。
俺達に、またね、は無い事を・・
「冷たい兄貴かも知れない」
呟きながら自宅への道を急いだ。
帰り道、仕事中の未華子から着信
「ちょっと、蒼生こんな時間
どこホッついてんの‼
アンタ婚約してんだよ
いい加減にシロ‼
分かってんの、何とか言えコラ‼
聞いてんの?」
何とか言いなさいよ、と言いながら
何とか言おうとすると連打で攻撃
して来る。
ギャギャーまだ喚いている
「アンタ又青い目のカノジョ
作ってない?コラ
う・わ・気・して無いでしょうね‼」
俺は、可笑しくなり大笑い‼
「未華子ヤキモチか?
なんか嬉しいな‼
俺の事そんなに好きなんか?」
「は‼ え‼は?
な、な、何言ってんだかな‼」
未華子はタジタジになっている
それも”そうだよ好き”
って言われてるみたいで嬉しい。
「未華子見てみろ」
テレビ電話に切り替えてパノラマ
で回りを見せる。
「うわ、モロニュヨーク
素敵♡」
「腹減ったから飯食べて、
今から帰るトコ、疑いは晴れたか?
気になるなら会社やめて
俺ん所来いよ!
大歓迎だぞ‼」
「え、無理、今は無理‼」
「未華子冗談抜きで
会いたい♥」
「どうしたの?なんか失敗した?」
「未華子が電話してきたから
声だけじゃ不満になっただけだよ。
ホームシックには、なった事無いけど
未華子シック的な感じ‼」
「なんだよ‼
未華子の事そんなに好きなのかい?w」
「そうだよ、愛してる。」
「・・・・しょう、しょう、
正直で宜しい。
じゃあ仕事戻るから」
「未華子」
「ん?なに?」
「離れてるの限界ポイよ俺‼」
「うん。ワタシも‼」
「近々話さないか?」
「うん。
じゃあ蒼生の時間取れたら
連絡してねー♥」
未華子は最初の剣幕はどこへやら
明るい声で電話を切った。
「全くフフフ」
未華子は忙しいな!怒ったり
機嫌良くなったり。
暗かった気持ちも、ぱ━っと
明るくなった。
声を聞くだけでこんなに元気に
なるものか?
やはり未華子に惚れてる
そう実感した。
未華子への気持ちは募るばかりだ‼
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