香織と蒼生

「香織支度出来たー

急ぎなさい!

蒼生君もう待ちくたびれてるん

じゃ無い。

嫌われちゃうぞ‼」


「ママ、んな事言わないで‼

蒼生は私を嫌ったリしないの‼

香織には分かるんだから‼」


「はいはい。

これ蒼生君の分‼

しっかり食べる様に言ってね。」


「お母さん有難う。

蒼生のママ、最近忙しいらしいの

夜も遅いらしくておじ様と

居酒屋行ったり

お昼もお弁当買ってるんだよ。」


香織はポニーテールを揺らしながら

高校に持って行くお弁当を2つ受け取り、ニッコリとミカに満面の笑みを

見せた。

「蒼生のママもバリバリ働いてるから残業残業で大変らしいの‼」


「まあまあ、そうなの‼

菜々香ったら仕方ないわねぇー

親友の息子ちゃんだし

蒼生君のお弁当はママに任せなさい、

ソレに香織の旦那様になる

予定だしね。

息子同然‼

ママ蒼生くんに投資しておくわ♥」


「ママ、胃袋で蒼生を釣るつもり‼

確かにいい方法かも♥」


「ほらほらー

待たせてると振られるよー」


「だから‼大丈夫だってば

私達、仲良しなの‼」


朝のバタバタした時間

嬉しそうに香織は蒼生君と並んで

歩く。

朝課外授業を受けるため

娘の香織と彼氏の蒼生君を

玄関から見送りミカは、ホッとする。

そして第2段階へと進む‼


「あなたー

あなたー早くしないと

朝ごはん冷めるわよ。」

7時に主人を起こす。


珈琲とパンの焼ける匂いにつられ

ノコノコと主人が起きてくる。

毎日遅く帰って来る香織の父親

慎吾は妻であるミカに軽くキスをする。身支度を整え新聞を開く。


口下手な慎吾は、あんまり喋らず

食事を取る。

営業部長の為外では愛想良く

喋らなければならない。

そんな慎吾を柔らかく支えたいと

ミカは思っていた。


美味しい料理と栄養を考えた食事、

そんなミカのお陰か

健康で歳よりも遥かに若く

女子社員にも人気があった。



「あなた、遅くなるわよ。

はい、お弁当

今日ぐらい早く帰ってきたら?

疲れてるわよ。」


「フウ~有難う。

今日も接待で遅くなる

ミカ私を待たずに寝ときなさい。

すまない。」


ミカはニッコリ微笑みながら

「大丈夫よ。

行ってらっしゃゃゃーい。」


明るく元気なミカを慎吾は軽く

手を振りながら振り返り振り返り

香織より少し遅れて家を出る。

何時もの同じように時間はながれる。

バタバタと全員送り出したら

やっとTVをつけミカの朝食が

始まる。


至福の時間芳醇な珈琲の香り

に軽く茶色く焼きあがったパン

お気に入りの生野菜サラダにドレッシングをグルリと一回転

野菜に振りかける。


珈琲を一口飲むと忙しかった朝が

終わりを告げる。


蒼生と香織は母親同士が仲良くて

親友だった。

旅行、キャンプ、BBQ

蒼生と香織はずっと一緒に育って来た。

春も夏も秋も冬も


「ウチのパパ帰り最近遅すぎ

でね、受験勉強してると帰り

コンビニ寄って来てスイーツ

買って来るんだよー‼

太る元だし‼」


「ハハハでも香織も

食べちゃうんだ‼」


「まあ・・ね💕

ママもパパのスイーツ

起きて待ってるのー笑」


「娘に甘いな、おじさん‼」


「そうだけどフフフ

ママとパパ仲良しなんだよ(笑)

幾つと思ってんだろ!

ラブラブなんだから、こっちが

恥ずかしくなっちゃう。」



女子大を受けた香織と

有名大学を受けた俺の合格発表

が同じ日だった。


家族で俺の家に集まり全員┣¨‡┣¨‡

仲のいい家族同士だったから

どちらが、落ちても受かっても

気を使いながら┣¨‡┣¨‡┣¨‡┣¨‡


初め香織の合格が決まった。

が喜びを噛み殺し┣¨‡┣¨‡┣¨‡┣¨‡

そして俺の合格が決まった時

┣¨ッと家中が沸いた‼


あの時のバンザイ三唱は、今でも

忘れられない!


それ迄一緒の進学校だった香織と

蒼生は、生まれて初めて離れて

しまう寂しさを感じていた。


お互いが好き同士で両想いな事は

分かっていたが蒼生から告られる

事も無く、香織も告る事はしなかった。


大学は離れたけど何時も会っていた。もうお互い受験も終わり

大学生になった今、もう2人に壁は

無くなった。


香織は何時、蒼生に告られるか

ソワソワしていた。


大学に入っても、蒼生の飲み会には

良く呼ばれた。

もう彼の新しい大学の友人も

蒼生の彼女だと認識されていた。



ある日遂に蒼生に誘われた。

其れはどうしても観たい映画が

封切りされた日だった。

親には大学の友達と出かけると

嘘をついてお泊まりデート


待ち合わせの場所に行くと蒼生は

女の子達に囲まれ逆ナンされていた。

蒼生は目ざとく私を見つけると


「オッ俺の彼女が来たから

又ねバイバイ👋」


羨ましそうに睨んで来る彼女達を

振り切って蒼生は香織の手を握った。

早足の蒼生について行くのが

やっとで香織は小走りになる。


早足のまま蒼生が言った。

「大学出たら結婚しょう。

俺はずっと香織が好きだった。」


蒼生は急に立ち止まりペアリングを

香織の指にはめた。


「香織、卒業する迄待ってて

くれる?」

小さい頃から待ち望んだ蒼生からの

告白、香織はポロリポロポロと

柔らかい頬をぬらした。


「おい、おい、香織

そんな嬉しかったか?」


「だって、だって、蒼生

何時までも言ってくれないし

待ちわびちゃったヨーウエーン」


「え━━━━━━━━ッ

香織、香織、どしたぁー

泣くなよ!」


蒼生はビックリしてアタフタ

していた。

香織は、泣きべそかきながら、

蒼生がバタバタするのが嬉しかった。


「大丈夫か?(笑)」


「うん。

凄く嬉しくて、ありがとう蒼生。

待ってて良かった♥」


「何だよ!

ケジメ付けるために告ったん

だけど、俺の気持ち分かって

ただろ!ああ、今更だよ。」


香織は嬉しくて嬉しくて

幸せだった。

蒼生と蒼生の車で

ドライブに出掛けた、蒼生が免許

取得した事を香織は知らなかった。

サプライズ🎉


「1番に乗せるのは俺の

婚約者ナーンてね。」


「うん。

助手席は私の席にしてね。

あ、おば様はOK

女の子はぜーつたい駄目‼」


ドライブに行った街で、蒼生と香織は

本物の恋人になった。


それから旅行に行ったり

キャンプに行ったり婚約ライフを

たのしんでいた。


お互いの両親にも挨拶をして

今更だと笑われたが

了解をもらっていた。


蒼生は相変わらずモテまくって

居たが真面目で好青年、香織は

それだけで満足していた。

蒼生は信じられる恋人だった。

蒼生の性格を知っていたし香織を

愛してくれているのは彼の深い

愛情をひしひしと感じていた。


幸せモード全開♡♡


蒼生は浮気するタイプじゃ無い‼



「ねえアナタ‼

蒼生君と香織、大学卒業まで

待たなくて良くない?

籍だけでも入れておけば

いいんじゃない?」


「はあー?

ミカそんな事したら夏生に

怒られるゾ‼」

リビングで呑気に新聞を読んでいた

慎吾は何でもパパパと片付けたがる

ミカを諌めていた。


「じゃあ明日、菜々香と会って

話して見ようかなぁ~

夏生さんの意見も聞いてみたいし‼

そーだアナタ出張だから

菜々香と食事しょうかなぁ

蒼生君と香織も誘って‼

名案名案♥」


慎吾は急に

「むっ、む、向こうだって

都合があるだろ‼

急に何言うかってなるよ‼

香織だって、蒼生くんだって

都合がある‼」


「何言ってんの‼

たまには、菜々香と呑みたいの‼」


ミカはルンルンしながら電話したが

菜々香も出張が入り約束は

次の週末と言う事になった。


「ふー、残念‼

あなたも菜々香も忙しいのね。」


ミカも結婚前はバリバリの

キャリアウーマンだった、

しかし慎吾と結婚をし、妊娠が分かり

悪阻も酷かった為、寿退社をした。


正直、仕事に未練があったが

慎吾が専業主婦希望だった為

ミカは仕事面から退いた。


最近になり働きたい、と思うようになった。まだまだ45歳は働ける。

香織が手を離れたことが一番の

理由かもしれない。


家にいて夫は日付け変わる頃

帰って来る、最近は残業、出張が

増え作るのは朝食、洗濯、掃除が

終わればずーっと一人

香織は蒼生君と住んでいて

良く帰って来るけど直ぐ居なくなる。

暇な毎日が苦痛になって来た。


孫でも入ればと思うのは仕方ない

事なのかもしれない。


バリバリ働く親友の菜々香が

羨ましく思う、スーツが似合って

ハツラツとして眩しくもみえる。


鏡を見ながら、溜め息を付く

そんなつまらない毎日を

過ごしながら、気付けば

おばあちゃんになって

いるんだろうなぁ

テーブルに置いた鏡をパタッと

ふせる。


思えば昔のママ友達は香織の同級生

が、中学生になる頃は

殆ど就職してたっけ!


「ミカと蒼生君に相談して見よう。

晩御飯も一緒に食べに行くか‼

暇だし‼」


その日、蒼生と香織2人の

マンション近くの居酒屋に7時

集合だった。


「おばさん遅くないか?」


「うーんねっ‼

時間には厳しいのに・・・」


「香織電話してみろよ

お義父さん出張なんだろ‼」

香織も蒼生もお腹が空いてきた!

香織はバックの中の携帯を探し

母親の番号を押す。


「出ないなー!」

約束を守る母親だから香織は

胸騒ぎを覚えた。

蒼生と2人で香織の実家に向かった。


家の鍵は空いていて、

静まりかえった部屋には

明かりさえ付いていなかった。


「不用心だな!

おばさんらしくなくない?」

蒼生と香織は廊下を抜けリビングに

行くとTVが付いていた。


ぼんやりと映る町あかりで

ミカがソファーにクッションを

抱え座っているのが見えた。


「お母さん‼

お母さん‼どうしたの!

お母さんってば‼」


母親の異変に気づいた香織は

一目散に母親に駆け寄った。












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