3章

第31話 ライブ

『みんな~!今日は私たちのライブに来てくれてありがとーー』


ウオォォォ!!


週末。

俺と山田君、葉月さんは埼玉県にあるさいたまスーパーアリーナに来ていた。


「たまアリって初めて来たけど、すごいね~!」


「ほんとにそうですね」


今日は、3人組の女性声優ユニット――『Try☆Starsトライ・スターズ』の結成3周年ライブが行われている。


3万人以上の収容人数がある会場にも関わらず座席は超満員。


すごい熱気だ。

そして、俺の隣にいる彼も――――


「うおぉぉぉ!!!!しおりちゃああああん!!!!!!!!」


「な、なんかすごいね山田君」


「そ、そうですね……」


山田君がペンライトを振り回して絶叫している。


いつもの教室で静かにしている彼からは想像もつかない変わり様。

す、すごい気迫だ……。


とはいえ、別に山田君が目立っているわけではない。

会場中のあらゆる所から雄叫びのような歓声が上がっている。


――『Try☆Starsトライ・スターズ』、ファンからは「トラスタ」という愛称で親しまれているこの声優ユニット。


全員が同じ声優事務所、「大石プロダクション」に所属しており、しかも3人ともまだ10代の学生なのだ。


しおりん以外の2人も、今までにレギュラー出演したアニメの役は片手で収まらないほどの売れっ子声優。


自分とほとんど年齢が変わらない人達がスポットライトを浴びてキラキラと輝いているのを見ると、自分も負けていられないという気持ちになり元気をもらえる。


俺も、頑張らないとな……。


『それじゃあ、行くよ~!Try☆Stars 3rd Anniversary Live in さいたまスーパーアリーナ――』


『『『――スタート!!』』』







ライブが終わった帰り道。

俺達は3人で駅へと向かっていた。


「いや~、すごかったね!今日のライブ」


「本当に葉月さんの言う通りだよ!!根倉君、ありがとう!」


2人とも満足してくれたようで本当に良かった……。

特に山田君には借りがあったし、これで返せただろう。


「2人が喜んでくれて良かったです」


「ほんとに根倉君のおかげだよ!でも、どうやってトラスタのチケット3人分もゲットできたんだい?ファンクラブに入っていた僕でさえ全く当たらなかったのに……」


「ああ、それは……」


1週間前、あの騒動の後に俺は山田君にどうやってお礼をしようかと考えていた。


山田君の好きなものをそれとなく聞いてみると、どうやら彼はTry☆Starsの大ファンだという事が分かったのだ。


1週間後――つまり今日のライブに外れてしまったことを山田君が嘆いていたので俺がダメ元でしおりに聞いてみたところ、


『めぐめぐ(メンバーの1人)の家族が来れなくなったからちょうど3席空いているよ~』


と言って招待してくれたのだ。


だが、しおりんに直接ラインしたとは言えない。


どうしたものかと考えていると、葉月さんとチラッと目が合う。


「涼雅くん、お父さんの会社がスポンサーらしいよ。それで関係者席が取れたんじゃないかな?」


「へぇー、そうなのかい?」


「えっ?あ、ああ。そうなんだ」


た、助かった……。


そう思ってふと横を向くと、俺に向かって片目でウィンクする葉月さんの姿。

思わずドキッとしてしまう。


以前と比べたら慣れてきたけど、仕事モードじゃない状態で葉月さんのような美少女と喋るのはやっぱり緊張するな……。


プルルルッ プルルルッ


そんなことを考えていると、不意に俺のポケットが震える。


誰だろうか?

スマホを開いて着信画面を見ると――


「へっ?」


そこには『姫宮 しおり』という文字列。


「根倉君、どうしたんだい?電話?」


「あ、ああ。ちょっとな……。喋ってくる」


俺は2人から距離をとり、通話ボタンを押す。


ガチャッ


「も、もしもし?」


『あ、涼くん!お疲れさま~』


「お、お疲れさまです……」


『もうっ!敬語!!』


「あ、ああ。ごめん、お疲れさま」


『ふふっ、よろしい。それで、どうでした?今日のライブ』


「本当にすごい良かった。しおりも、他の2人も輝いてて。俺も……負けてられないなって思ったよ」


『そうですか、そう言ってもらえると私も頑張った甲斐がありますね♪』


「それで、何の用事だ?」


『ああ、そうでした。あの……涼くんってこの後空いてますか?』


「えっ?まあ空いてるけど――」


『良かったです!実はめぐめぐがryogaくんに会いたいって言ってて……、今から私たちの楽屋に来てもらうことってできますか?』


「が、楽屋に?」


興味はあるけど、俺なんかが行ってもいいのだろうか……。

というか警備員の人に止められるんじゃないのか?


『マネージャーに話は通しているので、警備の人に話しかけてもらえれば通れますよ』


「あ、ああ。分かった」


『それじゃあ、待ってますね♪』


プーッ プーッ


通話が切れる。


それにしても、俺が今からTry☆Starsの楽屋に?

マジか……。


いきなりのことに放心状態の俺に、葉月さんが声をかけてくる。


「誰からだったの?」


「ああ、いや別に……」


「ふぅーん?なんか怪しいなぁ」


葉月さんは何かに感づいた様子。

まあ、俺がryogaだということもバレてるし、今さらだよな……。


「ごめん、ちょっと用事があるからここで解散でいいか?」


「用事?ああ、分かったよ。じゃあね、根倉君。今日は本当にありがとう!それじゃあ行こうか、葉月さん」


じーーっ


葉月さんがめっちゃこっちを見てくる。でもさすがにこれを言うのはちょっとな……。


「……」


「……はぁ、分かったよ。じゃあ、また明日ね。涼雅くん」


そうして2人は駅に向かって歩いて行った。

さて、俺も行くか……。

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