第8話
翌日。
今日は日曜で世間は休みだが、
二十四時間勤務なので、これから指定場所で交代及び、その場所での待機になる。とはいえ、那覇や三沢に比べたら格段に少ない。
それでも未だに任務があるということは、全くないとは言えない状況だったりするからだ。主に大陸の北とその下にある、バカデカい土地を持った国がちょっかいをかけてくるから、迷惑極まりない。
特に沖縄は年々
まあ、仕方がないよな。地図を九十度左に回転させるとよーくわかるが、日本列島が奴らを外洋に出せないよう、蓋をしているような地形になっている。
だからこそそのあたりのことや諸々のことについて、アメリカを中心にした友好国たちはしっかりとわかっているからこそ、お互いに手を組んでいるというわけだ。
……まあ、アメリカの軍人たちは、どういうわけか日本大好きなやつらが多いが。
特に海軍と空軍。一度日本に滞在すると、辛さが十段階ある某カレー店のカレーを食べたいがために、また日本に来たいと思う奴らもいるらしい。
もう一度言うが、海軍と空軍、たまに海兵隊。特に海軍は海自が好きだという話は有名、らしい。
確か、海外にある軍隊のほとんどが自衛隊に対し、「正確過ぎて恐ろしい」「怒らせたら一番ヤバイ」と言われているらしいしな。……どんな認識なんだよ。
それはともかく、話を戻すと。百里も少なからず
日曜だから比較的静かなものだが、茨城空港が近いため、民間機はそれなりに離発着している。その音を聞きながら待機場所である建物に近づくと、なにやら整備員たちがあたふたと忙しなく動いているのが見える。
それと同時に
それに首を傾げつつ、近くにいた奴に話を聞くことにする。
「なにかあったのか?」
「たいしたことじゃないんだが」
そう言いつつも教えてくれたのは、昨日の夜連絡が来て、月曜に帰投予定だったCH-47とU-4、C-2が、急遽それぞれの基地に今日帰投することになったらしい。入間と美保の意向だそうだ。
特に入間は近くに米軍横田基地があるから、その兼ね合いかもしれないという話だった。横田にも空自が入っているとはいえ入間との距離はかなり近いし、米軍サイドの訓練次第では滑走路の侵入が厳しい場合もあるだろう。
横田基地の上空は民間機すら飛ばないって話だからなあ。そのあたりは仕方がないのかもしれない。
そんな話をしていると、まずは一番デカいC-2が運ばれ始める。それを見ていたら、足に何かが擦り付けられると同時に「にゃあん」という声が。
下を見れば昨日に引き続いてキンタとギンジ、タビ―とタマが俺の両足にじゃれついていた。おいおい、毛をつけられたら困るんだが。
「おはよう。今朝はずいぶん早いな。どうした?」
「うにゃあ」
「にゃん」
「なぁ~」
「みゃ~」
「いっぺんに鳴くなよ」
何を言っているのか、さっぱりわからん。それでも俺が挨拶をしてから頭と背中を撫でたからなのか、満足するまでその場に残ったあと、シェードにも同じことをした。
そのあとは運びだされたC-2の脚にじゃれついて「コラーッ!」と整備員に叱られている。それでもめげないのが猫たちなわけで。
まるで、帰投の無事を祈るかのようにC-2とCH-47、U-4の脚にじゃれついた猫たちは、そのまま俺たちのところへと戻ってくる。
「こら、あまり毛をつけるな」
「にゃん」
「にゃんじゃねえよ」
「そろそろご飯の時間じゃないのか?」
「にゃっ!」
シェードの言葉に、そうだった! と言わんばかりに鳴いたギンジは、キンタと鼻をくっつけたあと、四匹揃ってハンガーをあとにした。
「ったく。コロコロって待機部屋にあったっけか?」
「あるはずだよ。たぶん耐Gスーツがある部屋の入口にもあったはず」
「あ~、そうかも」
シェードと話ながら、耐Gスーツが置いてある部屋へと移動する。すると、扉の傍にコロコロがいくつかぶら下がっていた。
そのひとつを手に取り、足だけじゃなく全身に転がして毛を取ると、中へと入る。そして自分の耐Gスーツを手に取り、簡単に身に着けたあと、待機部屋で過ごす。
何事もなければ仮眠をしたり漫画や雑誌を読んだりなどあれこれすることはできるが、ひとたびアラームが鳴ればすぐさま部屋を飛び出し、じいさんに乗って飛び立つ。
その時間は五分にも満たずに飛び立つことになる。
何度も訓練を重ね、音が鳴っただけで反応するまで、体に覚えこませるのだ。もちろんそれは、自室内の片付けも含まれるし、自室の片付けは陸海空に限らず、誰もが入隊して一番最初に覚えることではあるが。
結局何事もなく二十四時間を過ごし、交代する。多少の仮眠をしたとはいえ、さすがに眠い。
あくびをしつつも交代してハンガーに出ると、猫たちがじいさんと戯れていた。
くそう……こういう時、癒されるって思うんだよなあ。これだから猫は性質が悪いんだよ……いい意味で。同居人がいるのであれば飼うことは吝かじゃないが、独身男で自炊が面倒だからと基地内の官舎に住んでいる以上、それはできない。
しかも二十四時間勤務があるパイロットだしな。事務方なら違ったんだろうが、猫を飼うためだけに配置転換をするのは間違っている。
「基地にいる猫を愛でられるだけマシか」
そんなことを呟き、T-4ブルーインパルスが松島に帰るのを見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます