JKとホテルへ!?

「それでもエゲツないぜ。ドラゴンなんて俺たちでも苦戦するのに」


 実際、ロバートは攻めあぐねていた。

 炎属性同士というハンデもあったが。


「いくら魔女のサポートがあったとはいえ、ドラゴンだぜ?」


 レックスが、リスとたわむれているヒナマルを見てつぶやく。


「彼女がスゴい理由なんて、わからないよ。強いのはバアサマによるドーピングのせいだろうけど」

「戦闘スキルは、だろ? 副業スキルの多さは何だあれ? 見たことねえ」

「とにかく、元の世界に帰さないと」



 向こうにいる、ヒナマルの家族も心配しているだろう。


「今日はありがとう。話せてよかったよ。料理ごちそうさま」

「こちらこそ。何かあったら、必ず連絡をくれ」


 夕飯をごちそうになり、宿まで手配してくれたらしい。


「あの、ヒナマル様」

 仕事を終えた受付嬢が、布の袋をヒナマルに持たせる。


「これは?」

「装備品です。何かと必要かと思いまして」


 中身は、寝間着や普段着、下着類などだった。

 着替えがなくて困っているだろうからと、ヒナマル用の服まで手配してくれたのである。


「ほとんどが、私のお古なのですが、よろしければ」


「やったー。ありがと! なにこのパジャマかわいい!」

 胸元に衣装を持っていき、ヒナマルが大はしゃぎした。


「わーいピッタリ! よくあたしのサイズがわかったね?」

「寸法でしたら、水晶玉のチェックでわかりますから」

「すっげーっ! 近未来!」

 なんでもないことなのに、ヒナマルが驚く。


 あの水晶玉は、身長体重どころか、犯歴などもわかる。特に何も言われなかったから、犯罪などは起こしていないのだろう。


「ありがとうございます」

「いえいえ。ロバート様には、お世話になってますから」


 まったく気が回らなかったので、助かる。


「色々ありがとう、レックス。奥さんもすいません」

「どうってことねえよ。バタバタしてたんだろ。抜かりはねえさ。それはそうと、例の魔王残党の件だったよな? こっちでも調べておくから」


 レックスが、妻とアイコンタクトをする。


 妻の方も、うなずいていた。すべて指示通り動いているという意味だろう。


「さすがギルマス。手際がいいね。よろしく頼むよ」

 ロバートは、レックスと握手を交わす。


「貴重な情報に感謝する。あとは俺たちでなんとかするから、お前さんはゆっくり休みな。有事の際には、いつでも動けるようにしておいてくれ」

「こちらこそ、色々と面倒見てくれてありがとう」


 すばらしい友人がいてくれて、よかった。


「じゃあ、俺はカミさんとガキとディナーにするから」

 レックスが、妻の肩を抱く。

「せっかくの嫁さんだ。フラれるなよ」


 なぜか、レックスから肘でこづかれる。


「まだ嫁さんじゃないから」


「まあ、うまくやれよ。じゃな」

 手を振りながら、レックスは家に帰っていく。


「うーん。なんだってんだ。まったく」

 レックスの手配してくれた宿へ。


 しかし、どういうわけかキーを一つしかくれなかった。


 まさか……。


「相部屋だって!?」

 ヒナマルと、同じ部屋で寝ろというのか。


 信じられない。

 会って一日も経っていない男と、二人きりでホテルに宿泊するなんて!


「あっちゃー。これはこれは」

 さすがのヒナマルも、状況に苦笑いを浮かべた。


「だよね! 困惑するよね! どうしよう……」

「とりあえず先にシャワー浴びちゃうね」

「えーっ!?」


 この娘には、貞操観念というものはないのか。

 地球という星は、いったい。


「バッカ! 何を言ってえええ!?」

 なんのためらいもなく、ヒナマルは服を脱ぎ始めていた。

 水色の下着があらわになる。


「マジでここに泊まる気なの!? 相部屋なんだよ!?」

 背を向けながら、ヒナマルに意見した。


「いいじゃん。泥と汗まみれなんだから、早く汚れ落としたい」

『ワシが見ておくから安心せい』


「ふふーん♪」

 バスタオル一枚になったヒナマルが、ガラス戸へ消えていく。


「一緒に入る?」

「結構です!」


 シャワーの音が聞こえてきた。


 ヒナマルがシャワーを浴びている間、フロントに聞いてみる。


 手違いではなく、「満席なので勘弁」とのことだった。

 お詫びのルームサービスまで無料でもらっては、何も抗議できない。


「ねえねえ、ミニムちゃん。おトイレしたい」

『その便器がそうじゃ』


 シャワールームから、ヒナマルとミニムの声が聞こえてくる。


「おーっ、ちゃんと水洗じゃん」

『最近になって発展した技術じゃ。魔法石で水を出すのじゃ』


 どうやら、トイレのボタン操作を教えているらしい。


「うっわ。紙がないからヤバいと思ってたら、お尻も水で流すんだ!」

『左様。こうやって温風を送って乾かすのじゃ』

「すっげ! 未来じゃん!」


 想像しないように、ロバートはチキンの丸焼きに手を伸ばす。

 フルーツの盛り合わせを、むさぼるように口へ放り込む。


「おまたせ」

 Tシャツとホットパンツ姿で、ヒナマルが風呂から上がってきた。温風の魔法で、髪を乾かす。

 上下は白と紫のストライプが入っている。よく見ると、タオル地だ。


「いいコト教えてあげる」

 ドヤ顔で、ヒナマルはホットパンツを引っ張る。


「どうしたの?」

 ややうっとうしげに、ロバートはヒナマルを相手をした。


「この下さぁ、何もつけてないんだよねー」

「説明しなくていいから!」

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