Perimeter Admin / 境界線の管理者

asao

第1話 かわいいは正義


・プロローグ

(導入部分です。お忙しい方は第四話からお読みください。浅尾)



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無数の岩肌がこちらを睨み付ける。

いつだって厳しく在り続け平等に立ちはだかる。そんな頑固親父みたいな稜線が今日だけは微笑んでくれている。


登ればのぼるほど、いまこの時間が正しいのだと確かめさせてくれるようで心が落ち着く。

息苦しくなれば生きていることの証におもえて嬉しくなり、その呼吸が止まる高鳴りを待ちきれずに興奮する。



もうすぐだ



もうすぐでのぼりきる。





装備や食料の携帯がなければ、登山はこんなに楽なんだ。。


ふと頭に浮かんだ率直な気持ちににやけながら足を進める。いつだって新しい発見は嬉しいものだ。独り嗤いは気持ち悪いけどね。



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6つあるルートから、一番人が少ないコースを選んだので登山客は疎だ。ときおりすれ違う人々とすれ違い様に挨拶する。

登りはじめが昼過ぎだったので追い抜いたり追い抜かれたりしない。常にすれ違うだけ。

軽装備を訝しむ様子が無かったのは、恐らく上級者か、高地トレーニングの一環かと思われたか。もしくは無関心のせいか。


理由はどうであれ、終わりへ向かう道程はすこぶる快適だった。




さて、目的の岩稜に着く。

真夏だというのに、12月の風のように凛と澄み肌を撫でる。

ジャンヌダルクみたいな名前のついた切り立つ岩の先に足を乗せ、ヒュルヒュルと跳ねるように進む。失うものがない今だからこそできる歩みを純粋な気持ちで楽しみ、頂に着いて直ぐに飛び立った。




不思議と恐怖が無い。

周囲が暗いからか、クライマーズハイのせいか。一瞬の無重力と刹那の重力。


宵闇に飲み込まれ、自分という存在の消失が確定し安堵。

これで物語はおしまい。






の、



はずだったwww







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「あれ?なんか長くね?」



ナイフリッジから身を投げたにしても、衝撃が数秒のうちに来ないのはおかしい。

おそるおそる目を開ける。

何も見えない。

漆黒。




そのまま手持ち無沙汰になり、数分。ばたばたと手足を動かしてみたりしながら謎の時間を過ごす。うん、謎。




ん?


死んだん?



俺、死んだ?




死後の世界や冥界など信じる生い立ちではなかったために、この、魂が浮遊する状態を形容する言葉が見つからない。



えーっっと、


さっきまで夜の山を駆けてて、


切り立つ岩から飛び降りて、


衝撃待ち。



うん、把握。


急に心が落ち着いてきた。きっとアレだ。衝撃強すぎて直前の記憶を無くしたとかいうアレだ。強いストレスがかかると記憶障害を起こすこともあるようだし。


このまま無の世界を悠久に彷徨うの?というbadendが頭に過った刹那、エコーのかかった瑞々しい声が響く。



『もー!おこだよ〜』




5歳とも10歳ともとれる幼い声が浴びられると視界が急に明るくなる。

視界が広がり、たぶん地面側と思われるほうに足を向けふわふわと浮かぶ。



目の前に顕われたのは、金髪碧眼の美女....、、、ではなく。ごく普通の黒髪少女。


顔立ちに派手さはなく、眼はぱっちりとしているが大きくなく、口も鼻もこじんまりとまとまっている。どちらかというとオタク系?

その手の趣味の方にはどストライクな感じ。




いきなり眩しく参上したかとおもえば、片方だけ方を膨らませ、『メッ!』といいながらこちらに上目遣いする。



まあ、あれだ。


いろいろと言いたいことはあるが、可愛いからok。

細かいこと抜きに話を聞こうじゃないか。

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