電流、告白の瞬間
第1話
夜。
いつものように、街を巡る。人通りの多い駅前から、細い路地裏まで。くまなく。
彼のことを、少しだけ、思い出した。
こんなにも、彼のことを好きになっているとは、思わなかった。
『管区より零零ちょうど。定時連絡』
時計を確認し、零時零分であることを確かめる。
「哨戒担当より管区へ。時刻確認。異状なし。通信機器、および監視システム確認作業を継続」
『管区了解』
監視カメラに不具合が多発していて、それを補完するための哨戒任務だった。街の平和が、いかに監視カメラとそれを操作する人工知能に頼っていたかが分かる。
ただ、街の夜の平和は守らなければならない。バーやナイトネオン、それに小さなコンビニに至るまで。この街の夜の姿は、治安維持の上に成立する。
物音。話し声。ふたりか。
後ろ。
銃とフラッシュライトに手をかけながら。
「止まれ。そこで止まれ」
警告する。曲がり角のちょうど向こう側。
「止まったぞ」
声。
「これは失礼した」
街の正義の味方の二人組。
「管区から哨戒か。ごくろうさまです」
「いえ。治安維持業務は管区の基本的な仕事なので」
この二人組。片方は人の生き死にが見えて、もう片方は機械の生き死にが見える。
「今のところ、特に異常なしだ」
「電子機器のほうも。なんか、監視カメラに何か変なのが入り込んでいるのは見えるけど」
「変なの?」
「わるそうな感じは受けないんだけどな。なんか、世界を破壊しそうな感じというか、なんというか」
「それは危険なのでは」
「まあ、よくわかんないからこうやって回ってるんだけどね。監視カメラの不具合が出た箇所、分かる?」
「いま管区に繋ぎます」
通信。
「哨戒担当から管区へ。エレクトリッカー&デッドアイから情報確認要請。監視カメラに不具合のある箇所を知りたいとのことです」
『こちら管区。了解した。現在不具合が発生しているのは駅前コンビニ、ドリームロール前』
「ドリームロール前だそうです」
「いや、あそこは大丈夫だろ」
「まあまあ。教えてくれてありがとうございます。そういえば、彼氏さんは?」
「彼氏じゃないです」
「あ、そ。いい加減くっつけよ」
フラッシュライトで威嚇。
「あっまぶしっ」
「おちょくるからだよ。情報ありがとうね。助かりました」
「いえ」
二人組が、歩き去る。
彼に逢いたいと、思った。
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