over extended.

 彼を背負って。歩いた。

 彼。わたしの背中で。気持ちよさそうに寝ている。

 まさか、お酒を呑むと眠くなるタイプだとは、思わなかった。これじゃあ、何も仲良くできないじゃない。


「むにゃあ」


 彼。寝返りを打つように、背中から転げ落ちそうになる。そのたびに、背中のニュートラルポジションに彼を戻した。


「暖かいなあ。暖かい」


 彼。寝言を言っている。

 わたしの背中も。彼の温度で、暖かかった。


「好きな人がね。いるんだ」


 彼。寝言。


「でもね。俺。いつ死ぬか、分からないから。パイロットだから。踏み出せ、ないんだ。俺は」


 寝言。寝言だから。彼は。寝ているから。


「好きな人を、泣かせたくなくて。でも。俺。身寄りとか、ないし。MIA通知欄に、好きな人の名前。書いちゃったんだ。こんなことするべきじゃないのに。ひとりで生きてきた、から。死ぬときも、ひとりなのに」


 彼を背負って、歩く足が。止まってしまった。


「俺は。ひとりだ」


 彼の、孤独。わたしの背中から、伝わってくる。


「ひとりじゃないよ」


 寝言に応えちゃいけないのは、なんとなく知っていたけど。


「ひとりじゃない」


 応えずには、いられなかった。


「あなたは。ひとりじゃない。わたしがいるよ。あなたが、いつ死んでしまうとしても。急にいなくなって、しまっても」


 わたしは。


「わたし。あなたのことが。好きだから」


 彼の、帰る場所でいたい。そう、強く思った。


 彼。満足したらしい。寝息をたてはじめている。


 空。


 まだ、流れ星は、降り続いていた。涙で、滲んでしまっている。

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