始まりー5
森の中、連十は、テントの方へと進む。もう、お昼なので気温が高く、蒸し暑い。先ほど殺した、カルキリスの腕も持っているので、少しばかり足が遅くなっている。早く帰りたいのは、やまやまだが、気温と環境が連十を襲う。
(あっ、暑すぎる……。)
体中から、汗が滝のように流れ出てくる。このままだと脱水症状に陥ってしまう。
これでは、昨日とまるで同じになってしまう。あんな失態はもうたくさんだ。連十は、早くテントの場所に戻るために、できるだけ走った。
それからしばらくして、連十は、テントに到着した。ただ、もう服は汗まみれで、体中ベトベトとなっていた。
「……水浴びでもするかな」
近くに確か、小さな湖があったはずだ。そう思い、カルキリスの腕を置き、そのまま湖へと連十は向かった。
********
まぁ、昨日、体も洗わずに二人とも野宿をしていたので、体中が汗まみれで気持ち悪くなっていることは明白だ。ましてや、片方は年頃の女の子だ。やはり自分の体が匂うのは嫌なのだ。まさにそれは、人間の本能であり、世界の摂理であり、しょうがないことであり……。
(どこか遠くのお師匠様。いかがお過ごしですか?今わたくしは人生で二度とないであろうピンチに陥っています。……女性が水浴びをしているのに気づかず近づいてしまったんです。あぁ、神様何でこんなことになってしまっているんですか!?)
何かおかしな声が聞こえた気がした。連十はおそるおそる木の陰から湖を覗き見る。そこには一人の少女がいる。ミオだ。ミオが水浴びに来ていたのだ。
さきほど、連十も水浴びをしに、湖に来たのだが、何やら音がすると思い、木陰に隠れて様子をうかがうとという経緯で現在に至る。
今、ミオはまさに生まれた時の姿である。その肢体がさらされてしまっている。豊満なバストに引き締まったウエスト。まさに男性が、理想とするであろうそんな体が、森のど真ん中にある。
……そして、現在の連十の状況は、とてもひどかった。もし音を立てれば、気づかれる→怒られる→ボコボコにされる(最悪殺される)が執行されてしまうだろう。
(いっ、今すぐ立ち―――)
目の前に、一匹のリス。名は、『イスキーロ』。大きな声で鳴くリスであり、
「……嘘や」
その後は何が起こったか想像はつくだろうが、結局、はたかれました。
―――数分後。
「すいませんでした」
完璧な土下座を決めて、連十は、ミオに誤っていた。左ほおには赤い手の跡がじんじんと痛んでいた。
「いえっ、こちらこそすいません。……その、びっくりして」
ミオは、着替えを終え、二人でテントに戻ってきていた。連十は先ほどの事情を説明し、とりあえず分かってはもらえたのだが、連十はどうしても許せていないのだ。
「嫁入り前の女性の素肌を見てしまうなど、……ほんっとうに、すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」
地面に何度も頭をぶつけながら誤っている。そんな様子に、ミオは、とまどってしまっていた。確かに恥ずかしかったのだが、事故ならしょうがないと思っていた。
「……大丈夫ですから。顔を上げてください。怒
ってませんから」
ミオがそういうと、連十は、ゆっくりと顔を上げて、また誤った。
そして、とりあえず昼食(ミオにとっては朝食)をとるために、カルキノスを連十が、調理しようとすると、」ミオが驚き、
「どこで手に入れたんですか!?」
と、目を輝かせてきたので、そこで見つけたと言っておいた。
―――昼食後。
二人は、座りながら話していた。
「そういえば、ミオさんはこれからどうするの?」
連十がそう聞くと、ミオは、考えたような顔をして、少しうねった。
「そういえば、私行く当てがありません。どうしましょう」
そう言うと連十が、何かひらめいたように手をたたいた。そして、ミオに提案する。
「じゃぁさ、一緒に来ない?」
「えっ?」
ミオが驚いたように口を開く。
「い、いいんですか……?」
不安そうに、ミオは連十に聞く。すると連十は、任せろと言わんばかりに胸をはり、手を当てる。
「もちろん!!!」
自信満々に言うその姿は、どこかの誰かに似ていた。
「……」
ミオは少し考えて、すぐに決めたように顔を上げて、
「はい!よろしくお願いします!」
そう、笑顔で言うのだった。
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