第71話 獅子の仮面の人影その2

ショウマ達は『野獣の森』前で集合してる。


「みんな、気を付けてねっ」


ケロ子、みみっくちゃんは森の前で待機。

剣戦士エリカ、魔術師ミチザネもだ。


忍者のコザルが先頭に入る。

迷宮に入った途端何が有っても対応できる忍者。

次に槍戦士ハチ子、弓戦士ハチ美。

魔術師ショウマ、従魔師コノハ。

最後に従魔のタマモ。


ハチ子、ハチ美ははマントを着てきた。

革のマント。


「イチゴちゃんが貸してくれたのだ」

「借りてきたのです」


「『火鼠の革』を使って作ってあるんだそうですよ、ご主人様。攻撃魔法に強くなると言われてるです」

「それって。

 魔法武具じゃない?」


手に入れたいと思ってた魔法武具。

こんな簡単に手に入っていいのか。


「ミチザネに見せてください」


ミチザネがハチ子のマントを手に取る。



『鑑定』



「ふむ。

 『革マント 魔法防御力上昇(小)』

 ですね。

 間違いなくステータス上昇の力の有るホンモノです。

 ベオグレイドで手に入れようとしたら2万Gから5万Gくらいでしょうか」


うわ。

なんか一気に情報キター。

ミチザネ、『鑑定』スキル使えるの?

鑑定ってチートの定番じゃないの。

ヤバくない。

態度の大きい魔術師だと思ってたら、チート持ちだったとは。


革マント 魔法防御力上昇(小)

イチゴちゃん?

ユキトの妹だっけ。

『火鼠の革』を使ってイチゴが作るだけで魔法武具出来ちゃう?


でも2万G~5万G

というと日本円でおよそ200万円~500万円。

高いじゃん。

ショウマの革フードは1000G、およそ10万円程度なのだ。


ミチザネの言った値段合ってんの?

いや。

そういえばコイツ職業 魔術師、商人だった。

商人でも有るんだ。

なら合ってそう。

『鑑定』も商人スキルなのか。


「そんなに高いモノなのっ?

 気軽に借りて来ちゃったっ。

 汚しちゃったらどうしようっ」


ケロ子も似たようなマントを着ている。

同じく借りて来たらしい。


「魔法武具はなかなか売っていませんから。

 取り合いになります。

 値段も上がるのですよ」

「アレ。

 帝国ではけっこう手に入るんじゃなかった?」


『野獣の森』から魔法武具の材料は手に入る。

そんなに希少価値が有りそうじゃない。

ミチザネは言う。


「魔法武具はだいたい帝国の直属の兵士、警察、情報部に流れます。

 特に魔法武具でも効果が(中)以上の物は一般人では手に入りません。

 (小)ならなんとか手に入りますが、安くは無いです」


「アタシの鎧は?

 これも借りてきたの」


エリカだ。

エリカは昨日鉄の胸当てを壊された。

今日は革の上着を着てる。


「これは攻撃力上昇(小)です。

 こんなに魔法武具が有るとは驚きですな」


「ケロ子、汚しても替りに革のドロップ品をあげればいーよ。

 それで魔法の防具作れないか。

 イチゴちゃんに訊いてみて」


ベオグレイドで手に入らないかと思ってた魔法武具。

こんな簡単に入手出来て良いのか。

もちろんいい。

簡単な方がいいに決まってるじゃん。



「“鎌鼬”っ」


ハチ美の矢が細長い魔獣に刺さる。


「フンッ」


ハチ子の槍が“飛槍蛇”(ヤクルス)を貫く。

木の上からこちらを狙っていたのだ。



今は『野獣の森』の中。

『野獣の森』に入る前に時間がかかってしまった。

目的はハチ子、ハチ美のLVアップ。

ハチ子はLV8。

ハチ美はLV9。

LV10までは持っていく。


ハチ子が前に出て、ハチ美が支援。

ショウマ、コノハは後方に。

タマモは二人の周りをガード。


「クォーーン」


たまに『マヒの遠吠え』を使ってる。

魔獣が多数出てきたときには便利な能力だ。


コノハがスリングショットを取り出す。

パチンコと呼ばれたりもする。

鉄製の玉を撃ち出す武器だ。


「あれコノハさん。

 そんなの持ってたの?」

「はい。大きな魔獣にダメージ与えるほど強くないですが、“火鼠”くらいなら倒せます」


さすが。

コノハさんも亜人の村の住人だ。

あそこの住人は老人、子供も手に棒持って魔獣と戦ったりするのだ。


ショウマはハチ子、ハチ美の戦いを見物状態。

後ろには何故か布装束の人がピッタリくっついてる。


「コザルさん、何してるんですか…?」

「ショウマさんの護衛だ。

 分かるようにショウマさんを助ける。

 任務なのだ」


いや。

確かに分かるけど。

ピッタリくっつかなくても。

オンブお化け?


“暴れ猪”が襲ってくる。


「ブモッ ブモモー!」


ハチ子が槍を突き刺す。

だがコイツは体力が有る。

ハチ子を抜けて、後衛まで突撃してくる。


「ハッ」


苦無だ。

コザルがショウマの背後から投げた苦無。

“暴れ猪”の脚に突き刺さる。

脚をやられた魔獣はドンっと倒れる。

ハチ子、ハチ美がトドメを刺す。


まぁ護衛として役に立つのは事実みたい。



『氷の嵐』


ショウマも“火鼠”が多数出た時は火の攻撃に対抗したりしてる。

ハチ子の槍が“火鼠”を仕留める。

コノハが撃ち出した、鉄の玉も一体仕留めてる。


コノハはちょっと驚いた顔。


「前は一撃では倒せませんでした。

 私もLVアップしてるんですね」


コノハは昨日“双頭熊”戦でLV7になっている。

従魔師も後方支援出来るんだな。

ショウマも何か武器を考えてみるかな?

いや。

自分は魔術師だ。

魔法攻撃有るし、回復役もやってるんだった。

攻撃してるヒマはないよね。

そんな余裕があったら従魔少女達の活躍を目に刻み付けないと。


狼の魔獣が現れる。

昨日は見なかったヤツ。


ハチ美の矢が刺さる。

動きの鈍った魔獣をハチ子が仕留めた。


「これが“埋葬狼”か。大したコトは無いな」

「大した魔獣じゃないです」


“埋葬狼”はコノハさんの母親を攫ったらしい魔獣だ。


「はい。“埋葬狼”は正面から戦えば手強いワケじゃないです。

 でも正面で別の敵と戦ってる最中に、脇からケガした戦士や弱い子供を攫って行きます」


「それに村にも現れて人を攫って行くんです」


コノハさんは暗い顔。


「母上だけでなく、攫われた人がいるのか?」

「攫われた人間は多いのですか?」


「村に若い女性が少ないのにお気づきかと思います。

 ここ数年、若い女性が何人も攫われてるんです」


「魔獣が相手を選ぶの?

 エロ狼?

 男はオオカミなのよってヤツ?」


「それは怪しくないですか?」


ハチ美も訝しげだ。


「攫われた人の家に狼の獣毛や臭いが残ってました。

 間違いないと思います」


「“埋葬狼”からも

 男か、女かで旨いマズイとか有るのかな?」


どうせ食べるなら若い女性がいいとか。

しかしそれで分かった。

ショウマが今一つ亜人の村の人達を観察する気にならなかった理由。

若い女性がいなかったからだ。

子供と老人ばかりなのだ。

後は昼『野獣の森』に出かける男達。

観察する気にならないに決まってる。


「私が村を出たのはそれも理由の一つです。

 若い女性は残り少ないです。

 怖くなってしまって…」


コノハさんもいつ攫われてもおかしくなかったってコト?


「んじゃ“埋葬狼”は気配を感じたら退治していこう。

 どんどん駆除しよう。

 絶滅危惧種まで追い込む方針で」


「うむ。見つけ次第倒すとしよう」

「はい。女の敵です」



コノハはLV8に。

ハチ子はLV9になってる。

そろそろハチ美がLV10になりそう。


うーん。

パッパとLVアップしたかったけどけっこうかかるね。

“火鼠”や“飛槍蛇”を倒していてもなかなかLVアップしない。

強いのだとLVアップしやすい。

けど手強いし、危険もある。

アタリマエの話だけど。

なかなかメンドくさい。


「また“双頭熊”が出てきてくれれば、

 一気にLVアップしそう。

 だけどアイツ手強いしな」


昨日は正面でケロ子が戦ってくれたから魔法で仕留められた。

今日のメンツじゃシンドそう。


「“鋼鉄蛞蝓”を倒すとLVアップ出来るって、

 聞いた事が有ります」


コノハが言う。

ショウマは考え事をまた口に出してた。


「“鋼鉄蛞蝓”?」

「はい。硬くて、素早くてなかなか倒せないんです。

 でも倒すと一気にLVアップ出来るらしいです」


それなんてメタル〇ライム?


「それって何処に出るの?」

「場所は決まってないですが、

 木の裏側や枝の影を探すとたまに発見できます」


ショウマは試しに近くの木を見てみる。

枝の生い茂った辺り。

枝をかき分けてみる見ると。

いた!

銀色に光るナメクジ。

大きさは普通のナメクジ大じゃない。

仔猫くらいはある。

30cm前後。


「キター!キタキタ!メタル〇ライムキター!」


というかナメクジだからメタル〇ラッグか。


ショウマが叫んだら逃げてしまった。

ナメクジとは思えない素早さ。

あっという間に木の幹を伝って姿を消す。


「ああ。

 逃がしちゃった」

「すぐ逃げるとは聞いてましたけど、

 あんなに素早いんですね」


「ハチ美。

 今の“鋼鉄蛞蝓”見た?

 同じ気配がどこにいるか分からない?」


「ショウマ王。

 いますよ。

 そこに」


「?」


ハチ美は弓矢を構える。

狙う先は木だ。

木の枝の陰になって見えない場所に矢は飛んでいく。

カンッ

固いものに当たった音。

矢は撥ね返されてる。

いた!

“鋼鉄蛞蝓”。

木の幹を伝って逃げてる。


素早く反応したのはタマモ。

爪で“鋼鉄蛞蝓”を捉える。

だけど気にせず、“鋼鉄蛞蝓”は逃げてく。


「どいて、どいて。

 大きいのいくよ」



『全てを閉ざす氷』



焦ったショウマは範囲攻撃魔法を繰り出す。

やった。

ナメクジは凍ってる。

と思ったら消えていく。



『LVが上がった』

『コザルは冒険者LVがLV18からLV19になった

『ショウマは冒険者LVがLV18からLV19になった』

『ハチミは冒険者LVがLV9からLV11になった 

『ハチコは冒険者LVがLV9からLV10になった』 

『コノハは冒険者LVがLV8からLV10になった』

『タマモは冒険者LVがLV8からLV10になった』


全員LVアップした。


「経験値ボーナスステージ発見?

 経験値マシマシ。

 なのにまさかの制限無し?」


今日の目標は達成した。

でもここは穴場っぽい。

ハチ美によると“鋼鉄蛞蝓”は何匹もいる。

今度、従魔少女達とショウマだけで一気にLVアップ狙おうか。

そんなコトを考えてるショウマ。


ありがとう


どこかから言われた気がした。

あたりを見回す。

女性。

毛皮を着て仮面を付けた女性。

女性が森の奥からショウマを見ていた。

仮面から覗いた口元が少し笑った気がした。

と思ったら女性は消えていた。

木々の奥に。


「ハチ美、今の人は?」


どこへ行ったの?

さっきの仮面。

獅子を象ってた。

ザクロさん?

『野獣の森』の冒険者組合受付を思い出す。

どちらも似たような仮面。

リアルな動物の面ではない。

神社にある狛犬とか獅子の像のような面。

今見た女性も同じような仮面を付けてた。

けど違う人だと思う。

雰囲気が全く違った。

ザクロさんはマイペースなお喋り女性。

さっきの人はもっとなんていうか。

人間離れした雰囲気があった。

そういえばさっきの女性は一人だった。

『野獣の森』に一人で入って行ったのか?


「人?

 ショウマ王、我ら以外誰もいません」


訊いても誰も女性を見ていなかった。

見たのはショウマだけ。

気配も感じてない。

ハチ美やコザルまで気配を感じていないのだ。

幻覚?



【次回予告】

西方神聖王国の第一王子。

冒険者なら知っている有名人だ。毎週の功績順位で二位の常連。

その能力は詳しくは知られていない。しかし、職業はウワサになっている。その名も聖戦士(剣)。聖剣を召喚するというのだ。

「聖剣と言うとアレ? 伝説の十本の聖剣、遥か太古神の手によって作られてそれを巡って人々が争ってきた、正当な所有者にしか使えないという…」

「いや、このミチザネそんな話は聞いたコトがありませんな」

「アレは聖剣といいつつ、どう見ても変なカタチの木刀だったところがスゴイよね」

「知りませんてば」

次回、ハチ子は覚醒する? 

(ボイスイメージ:速水奨(神)でお読みください)

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