106. 二度目の結婚式

 新緑が眩しい季節。どこまでも広がる青い空。ユアンとメアリーの結婚式は市街地の教会で行われることになった。

 初めての神父という大役に、先ほどから誰よりも緊張しているクリスの背中をバシリとルナが叩く。


「お兄様とお義姉さまの晴れ舞台なのよ、もっと笑顔で!」


 気合とも脅しともとれる活にクリスがさらに引きつった笑顔を作る。


「メアリーきれいですわ」


 ルナがクリスに喝を入れてる間、新婦の控室では身支度を手伝っていたローズマリーがうっとりとメアリーの花嫁姿に見惚れていた。


「ありがとうマリー。それにアンリ先輩もお腹が大きいのに、ここまで来てくれてありがとうございます」

「当たり前じゃない、メアリーもユアン君も私の大切な後輩で、旦那の大親友なのよ」


 少しお腹が目立ってきたアンリは、用意された椅子に座りながらニコニコとメアリーにそうかえす。


「しかしユアン君は大丈夫かしら」


 アンリがフウとため息を付く。

 身ごものアンリのためを思って一日前からユアンの屋敷に泊まっているキールとアンリだったが、キールもユアンも昨日から思い出話に花を咲かせすぎて、すでに声が掠れるほど二人で泣き晴らしていたのだ。

 前の人生からずっとメアリーのためだけに人生を捧げてきたユアンだ、キールはその頑張りをずっと身近で見てきたのだ。そりゃあ二人とも感無量だろう。


「メアリーお姉様。準備はできましたか?」


 ルナが呼びに入って来る。


「はい」


 メアリーは花がほころぶように微笑むとそう答えた。


☆──☆


(あーなんてきれいなんだ)


 バージンロードを歩いてくる純白のメアリーを見て思わず息を呑む。

 一度目のメアリーは天使のような純真無垢な守ってあげたくなる可憐さがあったが、今回は強い意志と自信で内側から輝く逞しい女性の美しさがあった。

 前とは違う輝きを放つメアリーに、でも次に生まれ変わっても、ユアンはきっとメアリーを見つけて愛してしまうに違いないそう確信した。


「──病めるときも、健やかなるときも、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか」


 クリス神父の問いかけに。


「「はい。誓います」」


 二人はお互い見詰めあいながら答えた。


「それでは誓いのキ、キスを」


 クリスが最後の最後で噛んだのを聞いてルナが一瞬息をのむのが聞こえたが、ユアンは何事もなかったようにメアリーのベールをあげる。

 今ので緊張がほぐれたのか小さく微笑んだメアリーの顔が現れる、ユアンもそれをみてほほ笑みかえす。そして少し顔を傾けると、その唇にそっとキスをした。

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