202011 ジャパロボ 50

渋谷かな

第1話 ジャパロボ50

「私はシングルマザーなんだよ。」

「え?」

 祐奈は自分のことをみなみに話す。

「私は結婚もしていないし、まだ男性と付き合ったこともないんだ。ある日、怖い上官が私の細胞を使って、遺伝子操作で娘を生み出したから育てろって言うんだ。無茶苦茶だろ!?」

 もちろん綾幕僚長のことである。

「そんなことが許されるんですか!? 人権侵害だ!?」

 いつの間にか、壮絶な話を聞いたみなみに生まれた祐奈家族に対する殺意は消えていた。

(そうだ。祐奈さんは何も知らなかったんだ。知らない間に自分の戦闘データを使われて、知らない間にクローンの娘さんまで作られて、なんて可愛そうな人なんだ!)

「あ。」

 祐奈に同情していることに気づくみなみ。

「さあ! 今日は無礼講だ! みんなで楽しく女子会しよう! レッツ! ガールズトークだ!」

「おお!」

 こうして敵と味方の交じり合った奇妙な女子会が始まった。

「どうしてあなたたちはみなみちゃんと知り合ったの?」

「はい。私はジャパロボ世界大戦の時の戦争孤児で、良心を失くしお腹が空いていたんです。」

「可哀そう!?」

「空腹に耐えかねた私は1枚の食パンを万引きしました。しかしパン屋の店主に見つかり捕まりそうになった所を「おいで。」とみなみ様と亡き結子お姉さんに助けられたんです。」

 これがみなみと敦子の出会いである。

「なんて良い話なんだ!? ウルウル。」

 祐奈は同情して涙ぐむ。

「ただの窃盗の協力者にしか思えないんだけど?」

 麻衣は首を傾げ疑う。

「囮に使われたんじゃない?」

「そういえば・・・・・。」

 確かにみなみと結子の手には大量のパンが握りしめられていた。

「でもでも!? 私を助けてくれたのはみなみ様だけでした! 困っていても日本政府は助けてくれなかった! もしみなみ様に出会ってなかったら、今頃私はお腹を空かせて死んでいました!」

 本当に困った時に助けるから信頼が生まれる。

「なんて良い話なんだ! ウルルン。」

 子育てをして母性が強くなっている祐奈は感動の涙を流す。

「君たちも同じ境遇なのかい?」

「私は駅で置き引きをしている所をみなみ様に助けてもらいました。アハッ!」

 まゆとみなみの出会い。

「私はカレー屋で食い逃げしている所をみなみ様に助けてもらいました。アハッ!」

 由紀とみなみの出会い。

「さすがみなみ隊員だ。私が見込んだだけのことはある。」

「祐奈教官。こいつら罪を自白したんですから逮捕しましょうよ。」

「貧しくて罪を犯さなければ生きていきなかったんだ。彼女たちを裁くことができるか? 私にはできない。」

 名奉行、祐奈裁きである。

「祐奈さん!」

 テロリストたちは猛烈に感激していた。日本政府に見捨てられたとテロリストに復讐を志したのに、当の復讐の対象が自分たちを理解してくれるのだ。

「ドカーン!」

 その時だった。横浜に爆発が起こる。

「何事だ!?」

「祐奈教官!? ジャパロボです!?」

「なに!?」

 破壊活動を行うジャパロボが現れる。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

202011 ジャパロボ 50 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る