白の反逆 望郷編
ニソシイハ
選択と望郷の物語
に.『虹』とは
その国には、2つの選択肢が万人に用意されていた。15年前、突如として首相官邸に現れた『選択の白』。自身を“究極の人工知能”と名乗ったその白は
『最善の選択肢』
『最悪の選択肢』
この2つの光景を全国民に予見させる事を条件に、白という存在を必ず守ることを提案した。当時の首相はこれを受け入れ、国は発展し世界でも有数の軍事力と影響力を持つ国家へと成長していき、現在でも進行中。
*
先程まで雨が降っていた事で、うっすらと空に虹がかかっていたある日。
「遅刻っ遅刻だ」
都心部、ビルによって陽の光が阻まれた陰を小走りで駆ける青年が1人。早朝のため幸い通行人は少なく彼を妨げる者はいない。しかし彼が気にかけている事は他にあった。
「なんで朝6時に始まるのかねぇ……!」
独り言を濡れたアスファルトに吐き捨て踏みつけている。名は川上拓真。彼が狙う商品はただ1つ、ではなく2つ。
“朝6時に先行販売を開始する、人気アイドルの握手券付きライブチケット”
“朝6時頃に販売開始される人気アニメの一番くじ、その1等の特典であるフィギュア”
これを求め最寄りのコンビニへと向かっている真っ最中だ。目覚ましは朝5時に設定し、前日の同じ時間帯にリハーサルは済ませていたというのにこのザマ。
拓真は目覚まし通りに起きたにも関わらず、髪をセットし歯磨きへと移行している最中、動画サイトのランキングに見入ってしまい数分遅れた。たかが数分、されど数分。拓真にとってはかなりのタイムロスで、何ヶ月も前から楽しみにしていたコンテンツに手が届かず目の前で離れてしまう。それを恐れた拓真は額から汗を大量に流していた。
「くそっどうしてこんな日にランキングなんて見たんだ……! 恐るべき中毒性!」
動画サイトに責任を擦り付けようとはしていたが、自分の責任だと考え直し声に出した言葉は以上。
「ん……? これは、『選択』?」
すると、彼の目前に2つのスクリーンが表示された。これが予見の選択。
『最善の選択肢』
『最悪の選択肢』
拓真は急ブレーキをかけ、黙ってスクリーンを見比べ始める。
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