妖物グルメ(スマホで読まれる方向け)

「えっとね、炭は空気が入りやすい様に空間を開けて配置して……」


「こうかな? 」


「そうそう。後は火加減の調節が出来るように高く積む部分と低く積む部分を作る」


「成程……」


「いい感じいい感じ! やっぱり炎使いだけあってセンスあるよ」


 小人ゴブリンの狩りや戦闘の練習とかで教えてもらってばかりだったからこちらから教えられる事があるのはとても嬉しい。


 異世界から来てるんだからもっと色々知っているべきなのかも知れないが、こういう互いに教え合える関係と言うのも一方的じゃなくて良いと思う。


「いくら吾輩が馬鹿猫舌だと言って料理は美味に越した事は無いからな……! 感謝するぞてん君! 」


 嬉しそうな紅白くれはに、彼女もこんな顔をするんだなと思ったが、そう言えば今日会ったばかりなんだった。


 色々とありすぎて感覚が麻痺まひしていた様だ。


「それで……実は小人ゴブリン達から奪った食料なんだが、一人の一食分程度しかないのだ」


「……どうするんだ? 」


「あのミミズの様な妖物ようぶつ土虫どむしを食べる」


 ……。


「オエ……」


「やめろ吐くな! ただでさえ食料が足りないんだから! 」


 」……エオ「


 。……


「ふう、どうにか戻すことが出来た」


「……え? 何をした? 時が巻き戻された様な……」


「ゲームあるある。重大な問題が起こると時間が戻される」


 あくまでもギャグ演出だから戦闘では出来ないぞ!


「……やっぱり凄いな、てん君は」


「……凄いから土虫は勘弁して」


「駄目だ」






 ……。


「ステータスオープン! ……よっと。ふんっ! 」


 ステータスウィンドウを使って土虫どむしの肉をスライスして行く。


 薄切りになった肉を川でしっかりと洗ったのち、小人ゴブリンの脂肪で揚げる。


 紅白くれはによると小人ゴブリンは人間の味に近く、人間は豚や猪に近い味らしいから、この油はラードの様な感じだろうか。


 取り合えず不味そうには感じない。


「よし、こんな感じか」


 ミミズ自体の味は旨味うまみや甘みもあると昆虫食の動画で見たことがあるから、それを参考に臭みを飛ばした後はニンニク等強い匂いの香料で飛ばしきれなかった臭みをを消す。


 試しに少しかじって見よう。


「おおっ! 」


 良い具合にぎとりとした油にカリジュワッとした食感、胃袋を殴る様な旨味に、油と身の甘み、そして臭みを消すだけではなく味を引き立てるニンニク。


 ……やって見れば出来るものだ、これは文句なしに美味いと言える。


 濃いめの味付けもともなって、白飯が進みそうな料理が出来上がった。


 大人なら酒のさかなにちょうどいいと言うはずだ。


 寮生活での自炊の経験があったのに加え、事前にゴブリンの焼肉を焼きまくって料理スキルをどうにか上げて置いた成果だろうか。


「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

|必殺料理人(Lv1)     |

|   ↓         |

|最近料理始めたんだ(Lv3) |

|_____________」


 人型の生物を料理に使うのはどうかとも思ったが、ここは異世界だ。


 そんな考えは捨てていかなければならないだろう。


「良い具合に出来たか? 」


 俺の焼いた小人ゴブリンの肉をある程度食べ、残りを塩漬けにし終えた紅白くれはが話しかけてくる。


「ああ、これはすごく美味い……! 自分でも驚くレベルだ」


「それは凄い! どれ、吾輩も一つ貰おう」


 カリッと言う音が小気味よく聞こえる。


「うん、うん! これは美味いな! 馬鹿舌の吾輩でも分かるぞ」


「猫舌では無くて? 」


「吾輩は猫又ねこまたであるからな、高温は基本的に効かぬのだ」


 ……尻尾が二本だし、獣人とは少し違うと思っていたが、成程。


 今明かされる衝撃の事実。


「ん? 猫又って炎の妖怪なの? 」


「そうだな、妖怪の火車は猫又が正体と言う。そこから考えると猫又が炎を扱えてもおかしくないだろう」


成程?


初耳だ。


「ステータスオープン! 」


紅白くれはが、しょっちゅうステータスオープンと叫ぶなーと言う目でこちらを見ている。


「ちょっとそれ貸して」


ミミズ揚げニンニク味(今名前決めた)の乗った皿を渡してもらう。


「料理のステータスオープン! 」


……わかるよ? ダサいよね、俺も思うよ? ……でも別に伝われば良いんだ、伝われば良いんだよ、認識システムに。



料理名:������


味:B

香:B

栄養:B

食感:A

見た目:C

生産コスト:B

総合評価:B

消化-------------------◇-------腹持ち



ゲームに無い料理だから文字化けしているのかな?


それにしてもこの味でBか……。


Sともなれば凄いものになるのだろう。


ウィンドウを閉じる。


「……御飯が欲しくなる味だな」


「そうだね」


「……御飯が無い」


「そうだね」


「……もう味が濃くて食べられない」


「……そっか……。……クソッ! 味付け失敗したッ!! 」


 米さえ……ッ! 米さえあればッ!!




〈ザザ……〉


「!? 妖物か!? 」


「いや、違う。足音からして人型の生物、体重もそれなりにある。……うん、警戒する必要は無い。オークの眷属だろう」


「? オークって妖物じゃないのか? 」


 三つ目の町までしか行っていない段階で転生してしまった俺はこの世界の事をよく知らない。


 ゆえにそこまでに出てこなかった設定(オークがどういう生物なのかという情報、ゴブリンの細かい設定とか)は教えてもらわないといけないのだ。


「確かにオークも、その眷族も妖物の一種であるが、知能がそれなりにある故、多くの者は『敵』とはみなされない。恐らく先程の町に向かう商人か何かだろう」


 ザッザッ……。


「何か近づいてくるけど」


「……一応警戒するぞ」




 風が吹く。


 呪符が舞った。


 札が風に流されるままに舞うのか、風が操られているのか。


 それは幾何学的模様に地面に落ち、俺達の周りを地獄の様相に変化させた。


 


「『黒縄地獄』……」


「え! え! 何これ! かっけー! ガチバトルの時に使う奴じゃないの!? 」


「『黒縄地獄』範囲内に入った物を熱感知する呪術。範囲内では常にノーモーションで炎を発生させられる」


 ザッザッ……。


 俺達の間に緊張が走る。




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ー次回予告ー


十「教えて! 紅白先生! オークとは何ですか! 」


紅白「ん? うん。ゴブリンに引き続いての質問だな。オークとは本来、ゾンビに近いオーク、日本の妖怪で言う海坊主の様なオークの二種類がいたらしい。前者はゾンビに近いと言う事で腸内の細菌の生んだ硫化物が血中ヘモグロビンに付くことによって死体が緑色になる様に肌の色が緑だったのだろう。そして後者は巨体と牙、豚の様な鼻を持っている海の妖物だ。ここからは考察なのだが、その二つの特徴が混じって今のオーク像が出来上がったのだろう」


十「成程? 」


紅白「では次回、『耳』。また耳の話だな」


十「の前に『もし、ヴァン・ヘルシングが負けていたら』とのコラボ回が挟まるかな? 」


紅白「コラボ第一話は『もし、ヴァン(以下略)』の方で公開中」


十「ちなみに『耳』ってタイトルは芥川龍之介の『鼻』のパロディだよ」


十「次回も~、せーのっ」


十&紅白「「ステータスオープン! 」」




*『もし、ヴァン・ヘルシングが負けていたら』は作者が書いて居るもう一作。

HELLSINGやベルセルクに大きく影響を受けた吸血鬼ハンターモノのラノベ。

是非見に来てね!

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