吾輩は猫耳である (pcで読まれる方向け)

 少し観察して尻尾が二本ある事に気付く。


 獣人……、とは少し違うのかも知れない。


「あの、だから何をしていたのか聞きたいのだが」


 失念、そう言えば話しかけられたまま返してなかった。


……しかしこの場合どう返すべきなのだろう。


正直に異世界から来たことを話すべきなのか、それとも変な奴だと思われるから適当な理由を言うのか。


 どうせどちらが正解か分からないのなら、俺は嘘は言わない方を選ぶ事にした。


……って言う感じです」


説明終了。


第一話の一番最初に戻って見てくれれば分かると思うが、そこに『「』がある。


そこからさっきの所まで全てが俺のセリフだ。


「……話しかけても一切反応し無かったと思ったら、今度は長い説明をしてくる……。随分と変わった人間だな、てん君は」


「まあね」


 あまり特徴と言ったそれが前世にはなかったからか、俺は誉め言葉でなくとも〈普通ではない〉と言う事を言われると喜んでしまうのだ。


「……まあそうでも無ければこんな凄い事は出来ぬのかも知れないが」


「そんなこと無いですよ。いつの間にか持っていただけの力ですから」


「そう言う意味ではないのだが……、まあいい。異世界からの訪問者である事と言い、失礼ながら能力に対して本人が弱い事と言い悪い事は無いだろう。吾輩も同行させてもらいたい」


 転生していきなり可愛い仲間が出来てしまう。


こんな事がある物なのか。


嬉しさやら色々で放心状態の俺を見て、彼女は悩んでいると思ったのか、


「吾輩は猫耳である。聴力で敵を感知も出来るし、戦闘能力も低くは無いと考えている」


「いや、歓迎です! よろしくお願いいたします! 」


「うん、こちらこそよろしく頼む」


「……えっと、俺にはステータスウィンドウみたくパーティー登録ってのが出来るんだけど、やってくれる……ます……? 」


 ……いつもの事なんだが、どうも新しいパーティーメンバーとかに敬語で話すべきなのか迷ってしまう


「ため口で良い。いや、良い」


 話し方を指定してくれるとは有り難い。


 ゲームでは〈ゲームだから〉と言う何となくの理由でため口で話せるが、現実になったとなると話づらいのだ。


 窓をスワイプしてパーティー招待の画面を出す。


「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

|窓寺 十さんのパーティーに加入し|

|ますか?            |

|  〈はい〉 〈いいえ〉    |

|________________」


「〈はい〉を選んでくれ。そうすれば多分だけど、君の実力が数値化して見られるはずだ」


お言葉に甘えさせてもらってため口で話す。


見た目からすると同年代か下かぐらいだし、そこまで気にはならない。




 ……あくまでも予測だが、俺と俺を取り巻く環境がゲームの物になっているように思える。


あの時はそれどころじゃなかったが、土虫にのみ込まれた時も痛みを感じなかった。


万が一のため試したくはないが多分死んでも何らかの形で復活するだろう。


「〈はい〉だな」


 俺の左上に小さな窓が開いて〈華焔かえん 紅白くれはがパーティーに加入しました〉と表示される。


「華焔……紅白……さん? 」


「名前も呼び捨てが良い」


「……じゃあ紅白くれは、ステータス、見て良い? 」


 流石に女子の名前を呼び捨てにした事は小学生以来だから慣れない。


「勿論だ。仲間同士、情報は出来るだけ共有しよう」


「ありがとう。……ステータスオープン」


窓を操作して仲間のステータスを詳細に確認する所に変える。


「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

華焔かえん 紅白くれは(呪術師) Lv124              |

|体:0                         |

|魔:645                        |

|力:285                        |

|守:232                        |

|速:359                        |

|                           |

|スキル:一級呪術                   |

|                          |

|装備品                       |

|武器 無し                     |

|防具 無し                     |

|__________________________」


 変な想像をしてしまった方、一応確認だが、彼女はちゃんと服を着ている。


地獄絵図の描かれた着物だ。


 ……成程、俺と違ってゲームシステムによる存在ではない彼女のステータスには、ゲームに無い物は書かれないのか。


 確かスキル一級呪術は呪術系の威力や成功率を上げ、消費魔力を下げる物だったっけ。


「あらゆる実力を数値化する、か。中々便利そうだ」


横から紅白が窓を覗く。


「滅茶苦茶強い……。ゲームなら上位五パーセント位だったと思う」


 これはお世辞抜きの言葉だ。


「そう言ってくれると嬉しいな。……して、てんはこの世界に来て直ぐの様だが、通貨は持っているのか? 」


 そういえば確認していなかった。


「ステータスオープン」


一、十、百、千……。


「五百万ゴールドあった」


 友達が千万ゴールドで良い武器を譲ってくれると言っていたのでゴールドを貯めていた。


 中人数パーティー向けの拠点なら買える位の金額のはずだ。


「……残念ながら、今は凄まじいゴールドやすの様なものでな……。この前、両替をしてすぐにそれがあって、十君の所持金と吾輩の二千万ゴールドと合わせて、やっと二週間生活できる程度なのだ……」


「……マジで? 」


 俺のファンタジー異世界で最初の冒険は、何とも現実的な金稼ぎになりそうだ。


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ー次回予告ー


十「ゴールド安ってなんかスルーしてるけど、具体的に何? 」


紅白「そうだな、そっちの世界における円安えんやすと一緒だ。今回のゴールド安の原因は需要と供給、その需要が落ちに落ちたと言うのと、大手銀行の不正が次々にばれて金融危機に陥っているためだ」


十「はー。俺はあんまり公民聞いてなかったから良く分からないけど、なんか大変なんだってことは分かった」


紅白「このゴールドという単位通り本物の金貨だったら良かったのだが、あいにくこの国の通貨は真鍮しんちゅう製だからな……。デフレが起こりにくい理由にはならないのだ」


十「??? 」


紅白「難しい話だ、分からなくても問題は無い」


十「次回『金、経験値、鎮魂歌。』。ステータスオープン! 」

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