第11話 嫉妬深い獣
帰りはお酒を飲んでなかったサアヤがわたしたちを乗せて車で送ってくれた。わたしの家で待つ常田くんを見せる目的でもある。常田くんにも二人は友達だってことをちゃんとわからせたかったし。
常田くんは寒い中外で待っていた。わたしは慌てて車から出る。他の二人も一緒に。
「梛、おかえり……あ、はじめまして」
「ちょっと、寒いのに家の中で待ってないと」
「大丈夫、すぐさっき出てきたばかりやで。心配すんな」
手が冷えてるよ。それなりに着込んではいるけど。
「はじめまして、薫子です」
「サアヤです」
二人とも常田くんをじろじろ見過ぎよ。するとサアヤが
「まじイケメンじゃん。ちょっと、梛やるぅー」
と小突く。そ、そうかなぁ。常田くん、イケメン? サアヤはかなり男を見る目は厳しい(見る目だけで、中身を見るのは下手でダメンズばかり付き合うけども)のにそんな彼女からは見た目ではまずオッケーもらえてよかった。
食事の時に写真見せたけど常田くんは目が細いし写真写り良く無いから今までのわたしの好きな男とのタイプは全く違うって言ってたのにね!
次は薫子。
「すっごいお似合いよー、ほら二人横に並んで! ホラホラーっ」
と盛り上がる。さっきまではわたしたちのことを共依存とか心配だとか言ってたくせに……。
「梛、楽しそうだったみたいやね。お二人もありがとうございました……」
常田くんは丁寧に、そしてニコッと笑ってお辞儀をした。ああ、この笑顔でわたしは落ちたのよ……。
と、薫子とサアヤを見るとすごくデレェーっとして顔してっ。ほら、どうよ! 二人ともとろけてしまってる。
ふふっ、どうだ。わたしの彼氏。今まで二人の彼氏も見たことあるけどその時にめっちゃ自慢されて悔しかったり羨ましかったけど、とうとう自慢できる。
すると常田くんが腰に手を回してきたっ! ちょっと……。しかも体を引き寄せて。二人見てるよ。彼を見ると近くで微笑まれる。ダメだよ、もうわたしまでとろけちゃう。
「いやーん、ラブラブねっ。邪魔しちゃダメよ。サアヤいこいこー」
「まぁ、なに見せつけちゃって! 梛、彼氏さん、この後ラブラブして頂戴ね」
ちょっとーっ! 常田くんは隣で会釈して笑顔で見送る。恥ずかしい。食事会でそれなりに夜の営みの話も根掘り葉掘り聞き出されてしまったからなぁ。恥ずかしい。
でもわたしの心中は穏やかじゃなかった。……部屋の中に入って常田くんに玄関でキスされた。激しいキス。やっぱり嫉妬してる?
そのままベッドで抱かれて、激しく交わっているのにもかかわらずどうしても仙台さんと夏姐さんが会ってお話をしているのを思い出してしまった。
「梛……っ、またなんか考えてるやろ」
首筋にキスマークをつけられた。痛い。
「あっ、そ、そんなこと……っ」
そして細い目が見開いてわたしを見る。
「僕のことだけ考えろや」
と、キス。舌をねじ込まれた。
「うっ、うんっっ……」
お願い、忘れさせて。って常田くんと付き合ってるのに仙台さんのことを思ってしまうわたしって……。
ああ、また常田くんがわたしの妄想にねじ入ってくる……ごめん……ごめんなさい。わかったよ、今は常田くんのことしか考えないからぁっ!
わたしはシャワーを浴びてベッドに戻ると常田くんは腕枕してくれた。優しそうな顔をしてわたしを見てる。
さっきまで嫉妬に狂ってた獣のようだったのに。
洗面台の鏡を見てキスマークも二箇所ほど。タートルネックで隠せるからいいけどさ。
ナイトキャップを被って腕枕に頭を乗せた。
「梛、それなくてもええやろ」
「ううん、これ無いと寝癖がひどいの」
「せやかて僕もそれつけずに寝て寝癖できても櫛でとかせば一発で治るで」
「あなたはストレートだけどわたしは癖っ毛なの。寝癖一つでウイッグの固定感も違うの」
「大変ですなぁ、梛」
「けっこう大変なのよ、女の子って」
「関心しちゃう、どんどん女にしか見えなくなってきたわ」
「アレがついてても?」
「うん、ただついてきちゃっただけやろ」
「……穴とかは……」
「無かっただけやろ、だから元々あるところに入れてるだけや」
……もうなんというピロートークなのかしら。
それよりも仙台さんと夏姐さんはもう結ばれたのかしら。もしもっと早くわたしと仙台さんの関係が進んでいたら……常田くんみたいに彼はわたしを愛してくれたのだろうか? 体を受け入れてくれたのだろうか。
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