路地裏で僕とミアは
ミアのキスは、舌を絡めるものから、次第についばむような口づけと変わっていた。
ちゅ、ちゅ、と何度も何度も可愛らしいキスが続いた。
しばらく呆けていた僕は、なし崩しにそれを受け入れていたものの、なんとか気を取り直すと首を横に振って抵抗した。
「こんなことやめて……」
僕は震えた声でそう伝えてミアの肩を掴んでゆっくりと引き離――そうとしたのだが、ミアは離れてくれなかった。強引にぐいぐいと体を寄せてくっついてくると、再びキスを始めた。
「女の子をこんな気持ちにさせておいて、イザとなったら腰が引けるなんて男の子らしくないですよ?」
「僕は人として当たり前のことを言っただけで……」
「……当たり前を言うのであれば、女の子をこんなに淫らにしちゃった責任を取るのが男性としての当たり前だと思います」
蕩けるような、見方を変えればだらしがないような表情になってしまったミアには、何を言っても効果がなかった。
ああ言えばこう言うで全てを返される。
好意が頂点に近くなっている場所で止まったが為に、多少強めの言葉を放っても傷つく様子はなく、むしろ焦らしとして受け取られているのだ。
僕は内心で大変に焦りながら、この状況を打破するべく、新たな魔術式を組み上げようとする。
しかし、気が散って上手く術式が纏まらない悪循環。
僕の気を引こうと、ミアが必死に様々なキスを試し始めるものだから、どうしても意識がそっちに向かってしまっていた。
「他のコト考えたら”めー”ですよ? 女の子と一緒の時は、その子のコトだけ考えないと」
ミアは両手で僕の頬を抑えると、そのまま再び舌を絡めるキスをしてきた。今度のキスは今までで一番長く数分間にも及んだ。
小さなミアの口から伝わる吐息の熱が移って、徐々に僕の心や体が昂るのを感じる。
――なんとかしないといけない。
心ではそれを理解しているけど、淫靡な空気に当てられ続けていく中で、次第に僕の男としての本能が反応し始めた。
この本能に逆らうことは非常に難しくある。
今までの経験から僕はそのことを悟っており、もしかするともう自分は駄目かも知れないという思いも湧き始めてくる。
ミアは僕の首筋に舌を這わせると、そのまま衣類に手を掛けた。
男性用の服の勝手が分からず、少してこずる様子を見せたものの、徐々に慣れてするすると僕の服を脱がしていった。
こんな状況になっても僕は動けずにいる。
理性で本能に抗うことで精一杯で、ミアからの行動に制止をかける余裕がなく、成すがままを許してしまっていた。
「男の人の体って、ごつごつしてて、たくましいんですね……」
ミアは僕を半裸にさせるとそんな感想を漏らし、今度は自分も服を脱ぎ始めて同じく半裸となる。
小柄で細いミアの体は、他の三人のような男の欲情を誘う女性らしい肉感は一切感じられず、例えるならお人形のような感じであった。
少しでも力を込めてしまったら壊れてしまいそうな感じだ。
「子どもっぽい体ですけど、でも、努力でカバーしますから……」
そう言われて、僕の中で争っていた理性と本能の情勢に変化が産まれた。本能が理性を負かしてしまったのだ。
ぷつん、と糸が切れるような感じがあって、気づけば僕はミアの両手を優しく掴んで四つん這いにさせていた。
本能は怖いものだ。理性に勝ってしまえば、もう止められなくなる。
「ようやく、本気になってくれたんですね?」
「……誘ったのはミアだよ」
僕はとんでもないことを口走っている。誘ったのは確かにミアだし、好意を抱いてくれていたことも事実ではあるけれど、歯止めを効かなくさせて完全に暴走させたのは僕だ。
ミアが発情しているにも等しくなってしまったのは、僕が創った新しい魔術の効果によってなのだ。
だというのに、僕はミアに全ての責任の所在があるかのように言った。
酷いことをしている。
「……ですね。私が誘いました。だから、遠慮とかはしなくてだいじょぶですよ?」
僕はミアからその言葉を引き出した。
そして、これで免罪符を得たとして、ミアの体を満足が行くまで隅々まで味わった。
行為中、僕は妙な背徳感を抱いた。
ミアが子どものような見た目なせいで、イケナイ事をしている気分だったのだ。
「ぁっ……んっ……」
「まだまだこれからだからね。ミアはちっちゃいけど、それでも僕の全部を受け止めて貰うから」
「は……ぃっ……」
努力でカバーする、と言ったわりにはミアは防戦一方であった。
僕を受け入れることで精一杯な様相で、それがまた僕の気持ちを高ぶらせて仕方がなくて。
誰かがくるかも知れないこの路地裏で、何度も何度も繋がっては満たされた。
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