元天使の義弟は堕天しました(泣)
@chachiku
第1話 弟は天使だった(過去形)
「お姉ちゃん!お姉ちゃんは、お姫様なんだから、僕が守るから、後ろにいてね!!」
そう言った、大きな澄んだ瞳、サラサラの黒い髪、天使のような笑顔・・・。
それが、私の父が再婚してできた弟・
まさに可愛い盛り。
ヒーローが大好きな元気な男の子だった。
私は、兄弟が出来たのはもちろん嬉しかったし、それ以上に遥の存在が私を夢中にさせた。
遥は本当に、本当に・・・ねえ?天使なの??ってくらい可愛い顔をしていて、昔は、初対面の人に
よく女の子に間違えられるくらいだった。
そんな弟は私によく懐き、私も、彼にとって絶対に素敵なお姉さんになるんだと自らに誓いを立てて、
お手伝いに、お勉強にものすごく頑張った!
おかげで、私達はご近所でも評判の姉弟になった。
それが、いったい、いつから歯車がおかしくなってしまったのだろう?
・・・やっぱり、あの時からなの・・・遥?
遥が家に来てから、丁度、今日が10年になる。
本当なら、家族が家族になった日として、皆で外食でもしたいところだが・・・今、目の前をごついバイクの後ろに跨またがる弟を、大学からの帰り道に、偶然目撃してしまった。
「外食は無いな・・・。」とその瞬間思った。
彼は、今日も元気に遊びまわっています。
義理の元天使の弟は、見事に堕天し、
今では、ご近所に最凶に恐れられる、立派なヤンキーになってしまいました(泣)
黒いサラサラヘアーは金髪プリンに、くりくりした瞳はガンを飛ばす鋭い眼光に、ぷくっとした耳や唇にはみごとなピアスがズラリと刺され、おまけにどこかしらにタトゥーが有るとか無いとか・・・。
しかも、身長すでに180cm越え・・・こんなん普通に怖いわよ・・・。
あのまま育っていたら、モデルかアイドルの道もあっただろうに・・・本当に、何と勿体ない・・・。
「・・・ただいま。」
私はのろのろと、靴を脱いだ。コンバースのスニーカーに、ジーンズ。Tシャツ・パーカーにひっつめ髪。
おまけに、長年、参考書とにらめっこしていた私の視力は落ちに落ち、コンタクトは苦手なので眼鏡をご愛用。
勉強・手伝いに明け暮れていたら、私は見事な地味っ子になっていた。
これでも、昔は髪型を毎日変え、ピンクが大好きで、宝物と言っては、ヘアアクセを机の一番上の引き出しに沢山入れていて、中々に女子力が高かったのに・・・
いや、それでも、人生の途中までは、おしゃれも勉強もお手伝いも頑張っていたのに・・・
なのに、それなのに。
私は、手を洗い。眼鏡を取って顔を洗った。
・・・人生の初の彼氏につまづいてから、私はすっかり女の子の自分への自信を失ってしまった。
それからは、逃げるように更に勉強に打ち込んで、おかげで国立大学法学部に一発現役合格。学歴的にはかなり上出来だと思う。
けど、ここから先の歩き方が、私には眼鏡を外した時の今の様に、ぼんやりしていて、よく解らない。
私・・・いったい何になりたいんだろう?
顔を勢い良く洗い終わり、タオルで拭うと、私は眼鏡を探した。
・・・あれ、・・・あれ・・・??・・・ここに置いたはずなのに、あれ・・・!?無い!ないわ!!私のメガネ様はいずこ・・・!!?
「うっわ、なにこれ、かけると目がぐらぐらする。」
その時、聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえた。
この声は!
私が振り向くと同時に、すっと、眼鏡が私の目元に戻ってきた。
そして、私の眼前には、何故か遥のドアップの顔。
「!!」
「本当に、無いと何も見えないんだな・・・というか、気配で分からない?風呂中に入ってきたらどうするの?やっぱりあほなの?」
目の前で罵詈雑言のライブ中継。
「~~~~~!!か、考え事してて・・・。」
「はあ?普通の人は考えながら、周りに注意が払えるものだけど?」
そう言い、遥は鼻で笑った。・・・要領の良い末っ子タイプと不器用な長男長女タイプを一緒にしないで!
「・・・て、いうかどうして遥がここに??いつもなら夜まで帰らないのに。」
それに、遥はいったん離れ、むっつりとした表情になった。
「何、自分の家に好きに帰っちゃいけないわけ?」
ジロリと睨まれ、思わず、うッと息を詰まらせる。
「別に、そう言う訳では・・・。だっていつもより、だいぶ帰りが早いから。・・・珍しいなって。」
もごもごと私が言い訳を述べると、遥はつまらなそうに横を向いて
「良い肉を今日は食わせてくれるらしいから、帰ってきたんだけど?」
へ、そうなの?その割には、あんまり嬉しそうじゃないけど・・・というか!
「!!え、遥も一緒に外食に行ってくれるの!?」
まさか、絶対に来ないと思っていた弟の参加表明である。
「・・・・・。邪魔な様なら空気読むけど?」
「!!ううん、すごくびっくりしたけど!そんな全然!!・・・久々の家族全員そろっての夕ご飯だなんて・・・嬉しいよ!」
それは、私の本心だった。昔はあんなに仲の良かった家族が、いつの間にか、最近は個人個人の行動になって、単なる同居人になってしまっている。・・・それが、当たり前になっている日常が、私には悲しかった。
私の作り立てのご飯を、熱いうちに食べるのは、いつも私だけだった・・・。
「ふーん。ほんとあんたって変わってるよね・・・。」
弟は、いつからか私の事をお姉ちゃんとは呼ばず、代名詞や、時には、それすら省略して私を呼ぶ。でも、それでも今日は悲しくない!ひゃっほう!!
「お父さんやお母さんには言ったの?」
「・・・言う訳ないじゃん。いちいち。」
「それじゃあ、レストランの予約もあるから、私言ってくるよ!」
「あっ?面倒なことすんなよ。」
「だって、良いお肉が食べたいんでしょう!?・・・おかあさーーーーん!!」
私は、遥の気が変わってしまう前に急いで、廊下に出た。これこそまさに善は急げである。
そして、洗面所に遥だけを残し、私はバタバタと母を探しに走った。
遥は、そんな私のその後ろ姿に
「ばーーーーか・・・。」
と、言って見間違いかもしれないが、少しだけ昔の遥と重なって見えた気がした。
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