第8話 初デート準備<決戦前夜>
うおおおお、なんだこれなんだこれ!! なんで恵理子からこんな連絡くるんだ? 明日は休日という事もあり確かにデート日和ではある。だが俺達は偽装カップルだ。調子にのってデートに誘って何勘違いしてるの?とか言われたら死んでしまう。
でも確かに誘わないと会えないんだよなぁ。このまま会えないのはきついしデートはしたい。
「なあ、沖田さー、デートってどうやって誘えばいいんだ?」
「え、付き合ってるんだよね、だったら普通に誘えばいいんじゃない」
普通って何だよ、普通って!! こいつ二回目の人生でも送ってんのか? 好きな子とデートなんてしたことねえよ!! そもそも偽装カップルだしな。
「はあ、もうめんどくさいなぁ。貸してよ、送ってあげるからさ」
俺がうだうだしていると沖田はため息をつきながら、俺の手から携帯を奪いなにやら打ち込みやがった。え、こいつなにしてくれてんの?
「はい、あとは返事を待つだけだよ。どうせロクな服持ってないだろ。デート決まったら僕の服貸してあげるよ」
「お前ぶっころすぞ、何勝手に送ってんだよ!!」
こいつのスマホ奪ってソシャゲのアカウントをアンインストールしてやろうか……スマホの画面には『今日は学校お疲れ様、明日か明後日暇だったりしない? 転校してきたばっかりだろ、よかったら街を案内するけど、どうだ?』って書いてある。なんかこなれた感じがむかつくな。ご丁寧に俺が書いたようになっている。
あ、既読ついた……そして返信がくる。オッケーのスタンプだ。
「うおおおおおおおおお、沖田様ありがとうございます!!」
「大体付き合ってるんだから、あっちに予定ないかぎり断られるはずないんだよねぇ……今からデートするときの注意点話すから良く聞いてね」
なんだこいつギャルゲーの親友キャラかな? さすがそこそこもてるだけあって場慣れしているようだ。俺は沖田の言う事を聞き逃さないようにノートにメモを取ることにした。
美味しいパンケーキを食べて私たちは帰宅する事にした。二人で食事をしたこともあり、仲良くなれた気がする。神矢と付き合う経緯や好きなところなど散々聞かれたが不思議と口からぽんぽん出てきた。偽装ということは内緒だけど……こちらも神矢の過去の恋愛の話を聞いたが、本人に聞きなさいと流されてしまったのは残念だ。
「ねえねえ、明日から休みだけどさっちゃんは神矢と二人でどこかいくの」
「え-と、特には約束してませんよ、神矢さんも忙しいかもしれないですし……」
「ふーん、でも二人で出かけるの嫌じゃないのね、じゃあ、神矢から連絡したらオッケーすることかしら」
「そりゃあまあ、カップルですし、デートはしてみたいですけど……」
最後にこんな事を聞かれてしまった。そうか、カップルとは休みの日にはデートをするのよね、でもあくまで偽装カップルだし誘っていいものなのだろうか? 彼と改めて接してわかる。気をつかえる優しい人間なのだろう。私との偽装カップルもボロを出すわたしのためにやってくれたことだ。なのに学校にいる間はともかく、休日まで拘束してもいいものだろうか?
「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁ、お姉ちゃん、どうすればいいの!?」
恵理子ことえっちゃんとの女子会が終わり自宅へ帰宅して一息つこうとして、揺れたスマホを見ると神矢から連絡がきていた。どうすればいいかわからずリビングにいる姉にアドバイスをもらうために泣きついてしまった。
あいつからデートのラインが来るタイミングすごくない? さっきえっちゃんとデートとかしないの? と聞かれたばかりだったのでびっくりしてしまった。まるであいつは私がデートしてみたいって言ったの知ってるかのようなタイミングである。実は能力持ちとかじゃないわよね。さすがは黒竜の騎士ということか……それにしても何か文面がこなれてるのがむかつく。あいつ実は結構もてるのかしら?
「どうしたのー幸子。何かいいことでもあったの?」
「その……デートの誘いがきたんだけどどうすればいいのかしら」
「この前うちに来た子かな。とりあえずオッケーしてあげなさい。あとは男の子にリードしてもらえばいいんじゃないの?」
確かに返信はしないとまずい。とりあえずスタンプを押す。あれもっとしっかりした文面のほうがよかったかしら? それともいつものようなかんじのが良かった?
「あなたは綺麗なんだから楽しそうに一緒にデートすれば相手も満足するわよ。そうね、後はお洒落をしなさい。着替えたらもう一回こっちにきて、採点してあげる」
「うん、最強の装備で行くわ」
「装備って冒険でも行くつもりなの……」
私は自分の部屋に帰り勝負服を着ることにした。かなり高かったが最終決戦のときのために買ったかいがあるというものだ。私は服ともろもろのアクセサリーをつけリビングへと向かう。
「どうかしら?」
「え、本気? それでデートいくつもりなの? そんな装備で大丈夫なの?」
「え、大丈夫でしょ、問題ないとおもうのだけれど……何か変かしら?」
「問題しかないわよ……0点ね……ここまで重症だとは思わなかったわ……」
なぜか私をみた姉は頭をかかえため息をついた。どこがおかしいというのだろう。銀髪のウィッグに紅いカラーコンタクト、ゴスロリといわれる可愛らしいフリルのたくさんついた服に、私の名前の様に紅いレザーの首輪、そして決め手の漆黒の羽だ。名付けて黄泉の魔女:堕天モードである。黄泉の魔女たる私にふさわしい服装だし、あいつもぜったいこういうの好きだと思うんだけど。
「もういいわ……私の服貸すから着なさい、身長も同じくらいだし大丈夫でしょ」
「全然大丈夫じゃない……」
「あ……」
私はおねえちゃんの胸を見る。おねえちゃんも気づいたらしい。なんであんなにサイズが違うの? おかしくない? 同じようなもの食べて同じ遺伝子なのに……これまでは気にしていなかったが神矢がお姉ちゃんの胸をみてた事を思い出す。あいつも大きいほうがいいのかしら。なんかいらいらしてきたわね……
「デートは午後からにしなさい。私が見繕ってあげるから午前中に服を買いにお店にいくわよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
あいにく私はデートの経験がない。だから素直におねえちゃんの言うことに従う事にした。ついでに美容院でも行って髪の毛を整えるのもありかもしれないわね。別に神矢に少しでも良くみられたいというわけではない。デートだから身だしなみを気を付けるだけである。そう、深い意味などはないのだ……
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