第14話 食材は何がある

風呂から上がって冷蔵庫に近づく。

そういえば、電子レンジみたいのはないのか。ここまで電化製品あるのに、IHヒーターらしきものはあってもレンジがないのか。


冷蔵庫の上から開ける。

飲み物があるな。透明な入れ物だ。中身も透明だから、水かな。あれなんかメモが。

「経口補給液 4/30 マモルへ」


えーと、この簡潔さはラディさんか?俺宛に今日補充したってことかな。寝る前だからな、あんまり水分は取りたくない。明日の朝にでももらうとしよう。


しかし、考えてみれば、透明な生活用品が身近にあるのって、けっこう時代が進んでからの話な気がするな。読んでる小説、、読んでた小説にも、生活用品などの雑貨で発展具合がわかるって書いてあったけど、その通りなんだろうな。綺麗に写る鏡だってそうだし、各種器が均一なのだってそうだしな。まあ、あのパネルとかの通信とか、売買可能な身分証とかまであるんだから、現代日本人が思い出せる生活用品は一通り揃え終わってる可能性は高いかも。


しかし、一人じゃ絶対無理なレベルだ。俺一人じゃそもそもここのどれ一つとっても一からは実現できない気がする。いったいどんだけの転生者がいままでいたのやら。


特に野菜とか生ものはなさそうだ。つーか、飲みもの以外ない。朝食はここでとるものじゃないのか?

下のほうを開けてみる。氷があるな。冷凍庫こっちのタイプか。氷以外はなぜってものがある。これ味噌じゃね?なんでこれだけ。冷凍庫なのは俺もやってたからいいんだが。味噌凍らないんだよね。少なくとも家庭用の冷凍庫じゃ。

パックもなんだか見慣れた感じだな。水の容器もガラスっぽくなかったからプラスチックが普及してるのか。いやまあそうか。ポリエチレンとかかな。あのあたり特性で名前がどんだけあんのかわからないほどあるからな。似て非なる感じだから覚える気にもならない。しかし、他に冷凍食品はないのか。電子レンジがないから開発されてないとか。いやそれだと冷凍庫あるのも変な感じなんだが。


キッチンの各種棚も開けてみる。

包丁とかまな板は見当たらない。

フライパン、鍋とその蓋はある。

コップも皿も小鉢も、これ茶碗か。スプーンもフォークも、箸まであるな。


なんでこれで日本語が通じなかったんだろう。みんな言語チートもちでしかも意識して切り替えられないって感じだったのかな。でも日本て発音は聞き取れた。いや、固有名詞はうまく翻訳できないとか言っていたけどな。固有名詞だけで相当な情報量を引き出せる気がするんだが、それでは翻訳魔法は類推できなかったのかな。存在しないものは言葉もないはずだから、固有名詞だけじゃなくて、一般名詞だってそのまま聞こえるものもある気がするが。もしこれをそのまま箸と言ってたら、確実に日本人が伝えたことになるだろうな。あ、箸って中国にも昔からあるか。でもなんて発音するか知らないなぁ。この箸の形状は先が細いしな。


おお、缶詰あるぞ。乾パン?あ、果物も。トマトソース?こっちは鯖缶?鯖も同じ?消費期限はあるのか?あったな。7735/03/30か。今が32年って言ってたからあと三年?缶詰ってこんなもんだっけ。


保存食だけか。

気軽に食えるものとか主食になりえるものはないのか?

いやトマトソースがあるのだから、あったパスタだ。あ、あああああ。

お米様ではありませんか。

まさか初日から見られるとは。だけど、なぜに玄米。なぜ白米ではないのか。

まあ、味噌と玄米か。なんか俺、これだけで生きてはいける気がする。栄養面的に。鯖缶もあるし、たまにパスタ食ってれば味的にもそこそこ生きていける。


この場合、安上りな自分を喜ぶべきなのか悲しむべきなのか微妙だな。とは言え、物語の中の他の異世界転移者と比べると十分贅沢な気もする。まだ味が美味しいとは決まってないが、あのピザとコンソメスープが出てくる世界だからな。まあ美味しくなってるだろう。


んーとなると、まさか炊飯器がないなんてことはないよな。

鍋でも炊けるけど、やったことないしな。小学校だったかで飯盒炊飯した気もするけど遠い昔だな。

おっとあんな奥にそれらしきものが。

うん。完全に炊飯器だ。しゃもじついてるし。電子的だ。予約のボタンもあるね。コンセントあるし使えそうだ。まあ使えないものは置いとかないか。奥にしまってあったのが少し引っかかるが。

とはいってもここをどれくらいの頻度で利用者が入れ替わって、入ってないときのメンテナンスどうしてるのか考えると、生野菜とかがないのはそういう理由かな。うーん、セルジさんは案内役だったし、俺の名前書くのはラディさんしかいないと思うが、経口補給液以外もラディさんなのかな。生野菜とかだと、料理しない人間なら用意しても無駄になるけどな、もっと簡易的に食えるものはあって良いと思うのだが。


お、調味料はこっちだったか。白い粉だ。塩に砂糖か。普通に白いのな。しかし醤油はないのか。ソースも。うーん。味噌があるのにないのか。それともただ用意されてないだけか。ここまでの食材だけだと、塩も砂糖も使わない気がするのだが、まあ保存期間が長いものをひとまず用意したって感じか。生醤油じゃなきゃ米以上に持つ気がするんだけどな。それは保管の環境次第か。


味噌があるくらいだから、豆腐くらいありそうだし、納豆は受け入れられてればきっとある。となるとなんか向こうの食生活とさほど変わらないな。それらがあるならここにはなくても醤油も作ってるだろう。とりあえず大豆万歳と言っておこう。もやしや枝豆も食えるだろうし。もやしが大豆と同じ種のほうかはわからんが。


さて、朝飯は玄米と味噌でもいいくらいだしな。しかし、勝手に使っていいのかな。それも設備案内にあるかな。

テーブルのほうに移動する。

あ、施設案内か。まあいいや、キッチンは見てなかった。調理場を押す。


食材を調理する場。

水道 てこをあげると水がでます。元に戻すと止まります。利用しないときは止めてください。水道の水はそのまま飲んでも問題ありませんが体質によって合わない場合があります。大量摂取はお控えください。

電磁調理器 熱調理ができる器具です。鍋等に食材を入れて置き、「高」「中」「低」で熱量を調整できます。熱が出る場所に直接触れないようにしてください。利用が終わったら「切」を押してください。利用しないときは切ってあることを確認してください。調理器具以外、特に熱に弱いものは付近におかないようにしてください。一定の時間放置すると自動で切れますので長時間の調理をする場合は自動で切れる前に電磁調理器の前に立って様子を見るようにしてください。

調理器具 深鍋、平鍋、蓋などを用意しています。切る道具は標準では用意しておりません。米を炊く方向けに炊飯器があります。

食器 大皿、小皿、茶碗、匙、付き匙、箸、杯を用意しています。

食材 施設として保存の効く食材を置いており、おいている範囲のものは自由に利用可能です。ただし、補充は退出時のみのため、継続利用する場合は利用者が食材を調達する必要があります。


どうやら使っていいようだ。しかし、匙って。スプーンか。となると付き匙がフォークか。ん、そういえばナイフはないな。切る道具はないって、武器になるのを懸念してる?武器何て、フォークだって箸だって、人によっては武器になる気がするけどな。

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